自転車がソリッドタイヤで、なかにビッチリ詰まっていて硬かったころ、自転車には数多くのサスペンションがつくられました。
現代のすべてのサスペンションの基本形はこの頃現れているといってよい。
しかし、それが「空気入りタイヤ」(ニューマチック・タイヤ)の出現と同時に、いっせいに、恐竜が姿を消すように消滅したのです。

「いかなるサスペンションも、ニューマチック・タイヤの空気のざぶとんを越えることは出来なかった」

この空気入りタイヤには、もうひとつ、きわめてよいことがありました。
ロード・ホールディングの劇的な向上と、乗員の身長と体重に、だいたい直径と空気量が見合うということです。
身長175〜180cmで体重が68kg〜93kgなら28インチにたっぷりした空気量。
身長が150cm〜160cmで体重が37kg〜58kgぐらいなら24インチか26インチ。





そのように、タイヤを「一種の密閉した空気バネ」と考えると、現在の700Cのレーサータイヤというのは、
「28インチの、可能な限り細いもの」と考えることができるわけです。一方でタイヤには次のようなことが言えます、

「空気量が少なければ、高圧にせざるおえない」

ということです。

英国では大きい道路に行くと、サーキットと同様の舗装がしてあります。
大き目の角砂糖のような石がアスファルトに無数に埋まっている。
これの上を高圧で細い700Cで走ると、振動でものすごく疲れます。
博士の自転車が出てきた理由もそういう背景とは無縁ではないのです。