どうしてだろう。
どうして俺たち、誰も悪い事なんて何もしていないのにも関わらず、
なぜ皆悲しむような事になるんだろう。皆一生懸命なだけなのに。
俺達のようなちっぽけな存在は、どんなに頑張っても、
この悲しみの連鎖から逃れられないものなのだろうか。

「…そんな事はない」
ぽつりと呟いた。

そうだ。

「そんな事はない」
今度は力強く。自分に言い聞かせるように。

「リュカにはクマトラ…お前がいる。お前は無力なんかじゃない。
 PSIの使い手として、リュカの事をわかってあげられるやつが他にいるか?
 それに、お前は一人じゃない。俺がいる。
 俺だけじゃない、多くの人がリュカを見守っている。
 もしも俺達ひとりひとりがほとんど無力だとしても、俺達が力を合わせれば、
 きっとリュカを支える事ができる。そう思わないか。俺はそう思うよ。」

この連鎖を断ち切ろう。いつの日か笑顔になれるように。
当たり前の、幸せな日々を手に入れるために。

「…そうだな。へへ、ありがとうダスター」

姫が今日、はじめての笑顔を見せた。