あたしの素朴な疑問に、別府はちょっと後ろめたそうな感じの答え方をした。サッカー
に早々に見切りをつけたことを自分でも必ずしも気にしていなかった訳じゃないのだろう。
『今度さ。見に行ってみようかな?』
「へ?」
 別府が驚いてあたしを見つめた。
「じょ、冗談言うなよな。お、応援とかいらねーし…… 女子に見に来られると他の連中
にからかわれたりするから嫌なんだってば」
『誰が応援しに行くなんて言ったのよ? あたしは見に行こうかなとは言ったけど、別府
の応援をするなんて一言も言ってないけど?』
「は? いや、その…… じゃあ、何しに来るつもりなんだよ?」
 別府がややけんか腰にあたしをにらみ付ける。自分が早とちりしたことが恥ずかしくて、
それをごまかしたいというのもあるのだろう。
『決まってるじゃない。別府がミスとかしたら思いっきりヤジ飛ばしてあげる。面白プレ
イに大笑いとかしたりさ。友子とかも誘って、みんなでバカにしに行くから。あ。相手チー
ム応援しようかな』
 ホントは別府が楽しそうにしてる姿が見たいのだけど、そんなこと恥ずかしくてまとも
に言えないのでそうやってごまかすと、別府はムキになって拒絶した。
「ぜってーくんなよ。バカにされるだけとか、マジいらねーから。むしろ迷惑だし」
『迷惑なんだ。じゃ、絶対いこっと』
「ふざけんな。マジ勘弁だから。来ても知らない奴扱いするし」
 完全に緊張のほぐれたあたしたちは、最寄り駅に到着するまでずっと、話題は変えつつ
もくだらない言い合いに終始したのだった。


続く。