【LEC 体系別短答過去問題集】
1.× 債権者は、被保全債権が詐害行為の前の原因に基づいて生じたものである場合には、詐害行為取消請求をすることができる(424V)。
したがって、不動産の譲渡が債権者の債権成立前にされている場合であっても、それが債権の発生原因よりも後になされたものであれば、
その不動産の譲渡は詐害行為となり得る。

【条文】
424B債権者は、その債権が第一項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである限り、同項の規定による請求をすることができる。

【潮見 「新債権総論T」753-755
 被保全債権は、「詐害行為の前の原因」に基づいて生じたものでなければならない(民法424条3項)69。裏返せば、被保全債権の発生原因が
詐害行為の前にあるならば、たとえ被保全債権それ自体は詐害行為の後に発生したものであったとしても、取消権者は当該債権を被保全債権
として取消しを請求をすることができる。70

69 旧法下における通説・判例は「被保全債権」が詐害行為の前に生じたものであることを要求していた。その結果、たとえ「被保全債権の
発生原因」が詐害行為の前に生じていたとしても、被保全債権それ自体が詐害行為の後に発生した場合は、詐害行為の要件を充たさないもの
とされていた。

70 破産法は、破産債権の定義として、「破産手続き開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権」(破産法2条5項)という表現を用いて
いる。民事再生法における再生債権の定義(民事再生法84条1項)、会社更生法における更生債権の定義(会社更生法2条8項柱書)もほぼ同様
である。民法424条3項の規定も、これにならって設けられたものである。

 民法424条3項の基礎には、次のような考え方がある。
@「詐害行為の前の原因」に基づいて生じた債権の債権者は、詐害行為前の債務者の一般財産を引当てとして取引(債権発生原因である取引)等
をしているのであるから、たとえ詐害行為後に当該取引から債権が発生した場合であっても、債権者は「原因」の時点における責任財産による
引当てを期待していたものとかんがえられる。それゆえ、詐害行為を取り消すことによって責任財産を回復することについて保護に値する利益を
有している。