>>195
この本にしても潮見ブルーにしても、民法改正にいち早く対応した本というこ
とで貴重なんだけど、法制審議会の審議と平行して執筆されたせいか、細かい
ところで改正法に正確に準拠していないのではないかと思われる点があるんだ
よね。

たとえば相殺充当を定めた512条。どちらの本でも「相殺をする債権者の債権
の額が債務者に対して負担する債務の全部を消滅させるのに足りないとき」に、
(別段の充当合意がなければ)512条1項が適用されるという記述になっている。

これは中間試案の説明としては正しいのだが、改正法では512条1項の充当にお
いては上記かぎカッコ内の要件はなく、(債権者と債務者に優劣をつけること
なしに)相殺適状になった順に対等額で充当してゆき、法定充当が問題になっ
たときに初めてかぎカッコ内のルールが適用されるという規定ぶりになってい
る。

部会資料69Aの30ページ以下にある解説はそういう理解に立っているし、改正
法512条1項の元になった昭和56年最判の解釈としてもこちらが適切だと思う。