また、曽根威彦は、わが国の犯罪論状況を次の4通りに分析する(原論74頁)
@ 行為無価値論に立つ形式的犯罪論(団藤・大塚・大谷など)
A 行為無価値論に立つ実質的犯罪論(藤木・西原)
B 結果無価値論に立つ形式的犯罪論(中山・内田・内藤・浅田など)
C 結果無価値論に立つ実質的犯罪論(平野・町野・前田・山口など)

@は山中の(2)に、Bは(1)に、Cは(3)に相当する。曽根自身はBの立場に立つことを明言する。

さらに、中山研一は、総論はしがきで次のように述べる。
「とくに学界に対しては、古典的な結果無価値論的客観主義の一つの立場を体系的な形で
提示することを目ざしている。わたくしの立場は、滝川説から出発し、とくに佐伯・平野説の強
い影響の下に形成されたものであるといってよい」
また、中山は、概説8頁では次のように分析する。
「第1は、小野=団藤=福田=大塚説の系譜であるが、・・・基本的に大谷説によって継承され
その後も「行為無価値論」という共通項のなかで展開されている(川端、井田)。第2は、いわゆ
る「実質的犯罪論」の系譜である(藤木、前田)。そして、第3は、結果無価値論の系譜であるが
平野説の影響が次第に具体化されつつあるものの(町野、西田、山口)、佐伯=平野説という
系譜と比べると(内藤・曽根、浅田)、なお無視し得ない相違が存在するといえよう」
山中・曽根の分析と異なり、佐伯=平野説という形で、佐伯説と平野説の親近性を強調している。

佐伯=中山説に見られる拡張的共犯論、中山=内藤説にみられる結果無価値の徹底(主観的
違法要素全面否認説)が、曽根説と浅田説でどのように継受されているか、分析する価値は
あると思う(もちろん、試験には不要)