つい最近の話になるが、俺がペットショップに行ったときの話だ
そのペットショップの中にはダックスの子犬が一頭とチワワが数頭入っているサークルがあった
そこを俺が眺めていると、ダックスの子犬はチワワ達に尻尾や脚や耳を齧られて唸られていた
その子は傷だらけで、じゃれていると言うよりは明らかに虐められているようだった
それを眺めていたカップルの女が「やっぱ、チワワって可愛いよね〜あゆも飼ってるし〜でも身分証ないし〜」と男に話し掛けた
男は誇らしげに「大丈夫だよ。俺、市役所公務員証があるから!」と右手に自慢気に某市役所の身分証明書

その時だ、俺とそのダックスの子犬の目が合った
心の中で「家に来るか?」と問いかける俺
そしてそれが分かったように頷く子犬
俺は店員さんを呼んで、その子犬が欲しいことを告げる
「失礼ですが、身分証をお持ちでしょうか?」と聞かれ「これで」と答え、司法修習バッジをチラ見せする俺

店員さんは血相を変え、店長を呼びに行った
たまたま店に来ていたオーナーまでそろって出てきて、コーヒーと茶菓子が用意された
ほどなく、商店街の幹部や市長もタクシーで参上
俺の合格体験記を商店街会報や市報に載せて欲しいと懇願され引き受けることに…

市役所公務員カップルは何が起こったのかすら分からずポカーンと口を開けて俺を見つめる
「やれやれ、いつものことだ・・・」心の中でつぶやく俺
そして子犬の入っているサークルを振り返った俺は、サークルの中の光景を見て愕然とした
なんと、チワワ達がさっきまで虐めていた子犬に土下座してるじゃないか!
動物にすらそのステータスが知れ渡っている、司法修習生
いやあ、全くどえらい身分だよ

何が起こったのか分からずにいる子犬を抱き上げながら俺は子犬に話し掛けた
「これが司法修習生の宿命さ。お前もそのうちなれるよ」