この主張をさらに検討するために、ここでは第二次世界大戦におけるアメリカ陸軍の作戦を
研究した資料を参照してみたいと思います。
ダニガンは大隊規模の作戦行動を攻勢作戦と防勢作戦に大別した上で統計的に資料を整理し、
攻勢作戦をさらに遭遇戦、陣地への攻撃、要塞への攻撃、追撃、戦闘のない状態に分類して
攻撃側の損害と防御側の損害の比率を調べています。(図表が判読しずらく申し訳ありません)

作戦   攻撃者 防御者 比率
遭遇戦 7.5% 4.9% 1.5
陣地攻撃・初日 11.5% 6.1% 1.9
陣地攻撃・2日以後 6.1% 3.5% 1.7
要塞攻撃・初日 18.7% 9.8% 1.9
要塞攻撃・2日以後 9.8% 5.2% 1.9
追撃・伏撃 4.3% 3.2% 1.3
戦闘のない状態 2.6% 2.6% 1.0
(出典Dunnigan 1983: 495)

これを見ると攻撃者の損失(戦死者、負傷者)が陣地攻撃(初日)、
要塞攻撃の場合は防御者の2倍近くとなっています。

つまり、これは防御者1名を排除するために攻撃者2名が戦死、負傷することを意味しています。
興味深いのは一般に『極めて有利な攻撃方式であると論じられる追撃や伏撃の場合』ですら、
『攻撃者のほうが防御者よりも僅かながらより大きな損失を強いられている』点です。

このデータは防勢が攻勢に対して有利な戦闘形式であると主張したクラウゼヴィッツの主張を支持しています。
http://militarywardiplomacy.blogspot.jp/2014/02/blog-post_16.html