厚み派と実利派?(後編)

元丈がいわゆる「厚み」を背景に攻撃的な碁を打つのに対して、
知得は極端な実利・アマシの碁を打ちます。この知得、おそらく僕が最も影響を受けた棋士です。

さてこの知得ですが、単に実利派・シノギ派と言って済ませられる棋風ではなく、
「実利をしっかりと稼ぎ、相手に自分の石を攻めさせないでそのまま勝ちきる」打ち回しを得意としています。
「自分の石を攻めさせない」ことがなぜ可能かと言えば、知得は極端に「固い」打ち方をして、
弱い石をせいぜい一個しか作らないからなのです。極端に「固い」とは、例えば二間に開いた石からさらに二間、
場合によっては一間に開くようなことを序盤でするという意味です。これなら確かに弱い石はそうそうできません。

こうした知得の打ち回しを依田九段は「手厚い」と評しています。
元丈の外回り的な厚さとは違った、堅実さと言うか手厚さである、と。