まさに箱根駅伝!? WRCという文化と意義

 皆さんがドイツを訪れるといっても、空港のあるフランクフルトであり、ミュンヘンであったりで、
WRCが開催されるような“ドイツの田舎”を味わうことは少ないのではないだろうか。
 しかし、だからこそ、そうした田舎で開催されるWRCには、地域性が色濃くうつる。
 例えば、WRCドイツではブドウ畑の合間を縫って走る細い農道のような道、
そして軍事演習場を舞台とした難攻不落の「パンツァープラッテ」など、名物コースが多数存在している。
 なかには、路面の舗装コンディションも劣悪で、ときおり「ここがラリーのコース?」と驚く場所もあるが、
それがドライバーや車を鍛えている。
 そして、単にコースとしてだけでなく、その開催地ならではの風光明媚な景色は見る者を圧倒する。
 観客の楽しみ方も独特だ。
 SSに設けられた観戦エリアに行くと、ソーセージの美味しそうな匂いを漂わせた屋台が並び、
家族連れ、カップル、老人にいたるまで多くの人々が、ビール片手にラリー観戦を楽しむ。
 そして、場内実況のアナウンサーが「ベルギー人はいるか? イタリア人は? エストニア人は?」と、
順々に各国の観戦客を煽ると、どこからともなくそれらの国の人々が集まるゾーンから熱狂的な歓声が飛ぶ。

 WRCは日本で言えば箱根駅伝のようなものなのかもしれない。普段は、マラソンや駅伝に興味が薄いであろう地域の人も、
老若男女問わず沿道で声援を送る。筆者の地元・小田原で毎年見るそんな光景を、このWRCの熱狂を見て思い返した。
 WRCとは一種の「祭り」であり、毎年恒例の一大イベントなのだ。
 来年、2019年はいよいよWRCの日本開催が濃厚と言われる。日本でもこうした“文化”が根付き、WRCが地域の人々に愛され、全国の注目を集める「祭り」となることを期待したい。