だから何だかんだ言いつつお前は自分のためにボクを救った、自分が生きたいがためだけに、ボクに生を押し付けた……。
歪んだ、こじつけのむきもある捉え方だが、見過ごされたがゆえに後ろ指を指され、核鉄没収や戦士除籍すら日々恐れ
絶望していた犬飼ゆえに仕方ないとも言える。原因となった相手の善意を善意と解釈するコトなど、到底できる心境ではな
かった。

 敵の温情など、屈辱でしかない。

 復讐してやる。

 そんな想いさえなければ、ヴィクターVに差し伸べられた手という名の核鉄を、大量出血で死につつある犬飼が我が身に
押し当て延命するコトは、なかった。

 だが復讐すべき相手はもう地上にはいない。地球を守るため、災異(ヴィクター)を巻き込む形で月へと消えた。

 怪物が、地球を守った。

 怪物に守られてしまった地球の中で、犬飼はイオイソゴという難敵と戦わざるを、得なくなった。

 戦部のいったようなコト……、つまりヴィクターVからの助命の件でせせら笑ってきた連中を、ただ殺したいだけなら、伝令
たる円山を殺し、木星の幹部に命乞いをしつつ取り入り、栴檀を滅ぼしたあと悠然と人外になり暴れればそれで済む。手軽
にサッパリできるいい手段だ。