部屋でぽつりと独りになったオーブ中尉は外に目をやる。少しでも気晴らしになるよう窓があったが、地下に建設されたこの病棟では晴れやかな景色が見られる訳ではない。ごつごつとした岩に囲まれて作業に勤しむ人々が見えるだけだ。
「サイコミュか」
 オーブ中尉は何となく呟いた。ニュータイプ的な閃きなどとは無縁な彼女だったが、無いものを動かす感覚というのは今まさしく体感していた。この延長線なら想像ができる気がしている。
 きっと会議の中でこれからの事を話しているはずだ。何もかもを自分で決められる訳ではないとはいえ、このまま引き下がる気も彼女には毛頭無かった。
 オーブ中尉は確かにある右手と、無い筈の左手を強く握り締めた。

33話 無い筈の