宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど

1通常の名無しさんの3倍2019/07/24(水) 00:50:40.43ID:XfFrIQoe0
小説書いたこともなければスレッド建てるのも初めてなんだけど、もし誰か見てるなら投稿してみる

749◆tyrQWQQxgU 2020/02/05(水) 11:34:51.21ID:35+2VBiK0
「正直言って、俺は彼の信奉者でも何でもない」
 グレッチ艦長が腕を組んだまま口を開いた。
「エゥーゴにいるのも成り行きだ。思想的に共感したとか、大義があるとか、そういうのは無い。…言わなくてもわかってるか」
 そういって今度は髭を弄りながら艦長が続ける。
「だがな、筋の通し方ってもんがあるよな?言いたいことがあるならはっきり言や良いんだ。間違っても、自分の言い分が通らねぇからってトップを殺して…文字通り黙殺する様なやり方はよ…筋が、通らねぇんだ」
 珍しく艦長の言葉には熱がこもっていた。少尉を始めとして、皆の視線が艦長に集まっている。
「准将をやったのはティターンズだ。ジャミトフだろうがバスクだろうが知ったこっちゃない。俺は許せん。
 もうこれからは連邦の内紛なんかじゃ収まりきれない様な…全面戦争が始まると思う。だからな、ここではっきり皆に伝えておきたい」
 椅子を降りた艦長がブリッジの窓を背にして皆を振り返った。
「この艦は俺達の新しい家だ。俺が…その…父親みてぇなもんだ。大したことはしてやれなかったが、気づいたらそうなってた。お前達の為に、俺はこれからもっと…頑張る!だから、お前らも頑張れ!」
 言葉を選びながらも艦長は話し切った。静まり返ったままのブリッジで、艦長が固まっている。
「何言ってるんです今更…。こうなってしまった以上、あなたに皆付いていきますよ」
 腰に手を当てて、呆れ気味にフジ中尉が溜息をつく。
「私も艦長に拾われた身ですからね。より一層尽力いたします。なあ少尉?」
 ワーウィック大尉がにこやかに言った。
「えっと…。そうですね、頑張ります」
 苦笑いしながらスクワイヤ少尉も応えた。
「おお…お前ら…!」
 艦長が感動した様に咽び泣く。それをグレコ軍曹たちブリッジクルーも和やかに迎えていた。

750◆tyrQWQQxgU 2020/02/05(水) 11:35:31.82ID:35+2VBiK0
「ぐぬ…!よし!じゃあ今から鬼大佐にしっかり報告してくる!大尉も来い!」
「了解しました」
 鼻をすすりながらドカドカと退出していく艦長に、大尉も続いて出ていく。ざわつきながら持ち場に戻っていくクルー達の中、少尉は自らが生き延びた意味を思案した。
 エゥーゴの指導者が倒れ、一兵卒の彼女は生き延びた。そこに明確な差や理由などない。だが、そこに意味を見出すことが彼女にとっては必要だった。

24話 意味

751◆tyrQWQQxgU 2020/02/05(水) 11:36:02.56ID:35+2VBiK0
「それで…。連中を取り逃がしたのか?」
 ロングホーン大佐が腕組みしながら椅子に座る机越しに、ワーウィック大尉を伴いグレッチ艦長は直立していた。嫌な汗が背中に流れるのを感じる。
「も…申し訳ありません…!力及ばず…」
 頭を下げる艦長に続いて、傍で大尉も頭を下げた。
「例の試作機は自爆しましたが、恐らくデータは回収されたものかと…」
「まあいい。諸君の働きには感謝しているとも。不十分な補給にしてはよくやった」
 椅子を回し、背を向けながら大佐が静かに言った。
「ブレックス准将亡き今こそ、我々は試されている。指揮系統の再編が必要なこのタイミングを連中が見過ごすとも思えん…。次の指示を待つんだな」
「はっ」
「報告はもういい。持ち場に戻れ」
 敬礼の後、踵を返して司令部から退出した。

752◆tyrQWQQxgU 2020/02/05(水) 11:36:34.56ID:35+2VBiK0
「…ふいー。やっぱおっかねぇぜ」
 ドアを閉めるなり艦長は呟いた。クルー達には見栄を切ったものの、やはり性分はそう容易く変わるものではない。
「しかし、大佐の言うとおり敵の動きは気になりますね」
 大尉は肝が座っている。彼を伴うと幾らか自分も落ち着いていられる気がした。2人はアイリッシュ級の待つドックへと足を向けた。
「そうさなぁ。例のテスト部隊のデータで何をしでかすつもりなのか知らんが…」
「月面で再び戦闘があるとすれば、間違いなく我々は狙われるでしょうね」
「フォンブラウンが本命にしても、アンマンやグラナダは目の上のたんこぶだからな」
 2人は話しながら歩いた。すると、向かいから1人の士官らしき男が歩いてきているのが視界に入った。ワーウィック大尉の足が止まる。
「あ…?アトリエ中尉…?」

「お!?まじか…元気かよ…!?」
 金髪を短く刈ったその男は、砕けた制服の着こなしに耳のピアス、見るからに柄の悪い男だった。
「すみません、彼はベイト・アトリエ中尉。例のガンダムパイロットです」
「今は大尉っつってんだろ!…いや、申し訳ない。ベイト・アトリエ大尉であります」
 ワーウィック大尉に促された彼はびしっと敬礼してみせたが、それを解く仕草といい不遜な雰囲気は隠しきれていない。
「私はグレッチ少佐だ。アイリッシュ級で艦長をやっている。噂には聞いていたが…」
「少佐殿、以後お見知りおきを。今はネモのしがないパイロットですがね」
 頭を掻きながら彼は笑った。
「こんなとこで何をしてるんだ?」
 ワーウィック大尉が聞く。初めて見る親しげなニュアンスだった。
「ああ、補給に立ち寄ったところでな…まさか大尉に会うとは。そっちは順調か?」
「まずまずかな。敵もよくやる」
「全くだ。うちの部隊もジリ貧でよ…また一緒に戦いたいもんだぜ。来いよ?」
「馬鹿言うな、うちだってギリギリだ」
 談笑する2人に独特の距離感を感じ、なるほど彼らが組めば強かろうと艦長は感心していた。

753◆tyrQWQQxgU 2020/02/05(水) 11:37:32.17ID:35+2VBiK0
「噂のニュータイプにお会いできて光栄だ」
「そんな大層なもんじゃありません」
 グレッチ艦長はそういうアトリエ大尉と握手を交わす。
「しかしネモとは勿体ない。うちはガンダムがあるが、君の様なパイロットにも支給すべきだと思うがな」
「お、ガンダムがあるんですか。そいつはいいね…。今は誰が乗ってるんです?ワーウィック大尉?」
「まさか。私はガンダムには乗らん。スクワイヤ少尉という女性だ。彼女もなかなかの腕だよ」
「ほう…?」
 アトリエ大尉が不敵な笑みを浮かべた。
「今回の補給で新しい機体も受領予定なんですが…そういう事ならちょっとした遊びでもどうです?」
「遊び?そんな暇は無いぞ。色々と聞いてないのか?」
「相変わらずだな大尉は。糞真面目だぜ」
「ふん、構うな」
「そう言うなって。…グレッチ少佐、どうです?その女パイロットと1戦交えてみたいんですが。勿論模擬戦で構いません。…俺が勝ったらそのガンダムをうちにくださいよ」
 アトリエ大尉が目をギラつかせながら言った。好戦的だがそれに見合う能力も持ち合わせているのだろう。艦長も少し興味が湧いてきた。

「馬鹿な事を言うな。全く、久々に会ったと思ったら…」
「俺がガンダムを上手く使えるのは知ってるだろ?適材適所って知ってる?」
「スクワイヤ少尉も負けてないがな」
「だったら心配要らねぇって!俺のことも打ち負かしてくれるさ」
「艦長、この男はどうもこういうところがありまして…。真に受けなくて良いですよ」
「ふーむ…」
 グレッチ艦長は腕組みした。好奇心で彼の腕前を見たいという気持ちもある。
「少尉はなんていうかな」
「…!本気ですか…?」
 ワーウィック大尉が案の定慌てる。
「よし!その女パイロットがオーケーならすぐにでもやりましょうよ!どうせ補給はまだ少しかかるし、丁度いいでしょ」
「聞いてみようか」
「はあ…。まあ聞くだけなら私も止めませんが…」
 成り行きで3人一緒にアイリッシュ級へ向かった。

754◆tyrQWQQxgU 2020/02/05(水) 11:37:56.47ID:35+2VBiK0
「ん…?なんです?」
 丁度メカニックと格納庫で打ち合わせ中のスクワイヤ少尉を見つけた。帰還時には取り乱していたものの、今はすっかり落ち着いた様子である。
「こういう申し出があってな…。彼はベイト・アトリエ大尉」
 グレッチ艦長は事の顛末を彼女に伝える。
「へぇ…!彼が隊長の言ってたニュータイプ」
「このガキンチョがガンダムの?ZもMk-Uのガキが乗るって聞いたが、ガンダムってのはそういうもんなのか?」
 アトリエ大尉が茶化すと、少尉はムッとした表情を見せた。
「…マンドラゴラは私の機体です。誰にも渡せません。それに私、大人です」
「言っただろ。そんなポンポン回せるもんじゃない」
 ワーウィック大尉がやれやれとアトリエ大尉の肩を叩く。
「折角の玩具を取り上げる訳にはいかねえか!悪い悪い。代わりにワーウィック大尉でも貰っていくかな」
「誰が貰われてやるか」
「へいへい」
 両手を挙げたアトリエ大尉が彼女に背を向ける。

755◆tyrQWQQxgU 2020/02/05(水) 11:38:24.63ID:35+2VBiK0
「誰も勝負しないとは言ってませんよ」
 彼の背を睨みながら少尉が言った。ワーウィック大尉が驚いた。
「おい少尉!」
「ほんとにこの子が私に相応しいのか…試すには良い機会です」
 スクワイヤ少尉は機体を見上げた。残っている先の戦闘での目立つダメージは外装くらいのものだ。
「度胸はあるみたいだな…気に入ったぜ。お前はガンダムでいい。俺は…あれを借りる」
 背を向けたままのアトリエ大尉は、百式改を指差した。
「どうせあれが大尉の機体だろ?チューンナップしてあるなら丁度いい」
「待て待て、ほんとにやる気か?艦長もなにか言ってやってくださいよ」
「うーん、俺はアトリエ大尉の腕前を見てみてぇな」
「艦長!」
 ワーウィック大尉の心配っぷりを見るに、アトリエ大尉は相当に腕が立つと見える。スクワイヤ少尉のガンダムでもサシで歯が立たないとなればかなりのものだ。
「ガンダムをどうするかは俺達の一存で決められんかもしれんが、まあやるぶんにはいいんじゃないか?」
「少佐殿、流石の御判断であります!」
 あからさまにアトリエ大尉が姿勢を正す。どうせ時間も余っていたところだ。
「ロングホーン大佐に知れたら何て言われるか…」
「ははっ、意外と大尉も心配性なんだな」
 思っていたほどワーウィック大尉も完成した人物ではないようで、どこか親近感が湧いた。
「そうと決まれば早速やろうぜお嬢さん」
「ガンダムは渡しません。勿論隊長も」
「ほーう?」
 アトリエ大尉がニヤニヤしながらワーウィック大尉を細目で見る。
「しょ…少尉!無理は禁物だぞ!」
「わかってます。…ありがとう」
 そういって少尉が笑った。ワーウィック大尉はいささか顔を赤くしている。

756◆tyrQWQQxgU 2020/02/05(水) 11:39:27.28ID:35+2VBiK0
「よし、俺はブリッジから観戦しよう。久々に酒でも飲むか!大尉、何かつまみは持ってますかな?」
「そういうことならちょっとしたやつがありますよ!持ってきましょうか」
「お、いいねぇ」
 アトリエ大尉とは気が合いそうだ。彼こそ引き入れたいくらいである。想像していた様な浮世離れしたニュータイプ像とはだいぶ違う。
「ニュータイプって一口にいっても、こんなチンピラみたいな人もいるのね」
「仮にも上官だぞ?これだからガキは」
「なんです?止めときます?」
「いやー、ガンダム楽しみだなー」
 スクワイヤ少尉がアトリエ大尉と火花を散らしているのが目に見える様だ。
「こんなことにはなるとは…。アトリエ大尉、やり過ぎるなよ」
「わかってる。俺も馬鹿じゃねぇさ」
「いやいや、馬鹿なのは違いない」
「一理あるな…っておい。言うようになったなおい。おい」
 旧知の2人のやり取りを背で聞きながら、グレッチ少佐は酒を取りに自室へ向かった。

25話 性分

757◆tyrQWQQxgU 2020/02/05(水) 11:40:41.55ID:35+2VBiK0
今回はここまで。
引き続き投下しますんで、よろしくお願いします!

758通常の名無しさんの3倍2020/02/05(水) 22:49:32.40ID:mlzz7NBW0
乙!

759通常の名無しさんの3倍2020/02/07(金) 18:37:51.34ID:AfaOzt6o0
お疲れ様です!

ウィード隊、ついにパプテマス・シロッコと接触ですか。
ドゴス・ギアでもジュピトリスでも、規模のわりにクローズアップされにくい舞台に思えるので、楽しみです。
木星帰りよ、こんな善いお嬢さん達をお持ち帰りするんじゃないぞw(いざという時はラムなり爺なりが動くでしょうけど)

ワーウィックの取り合いw
なんでしょ、アトリエは何だかんだで「歴史書には書きにくいけど結構ガンダムに乗ってた人」になりそうですね(笑)
それはそれとして、最初はぼんやりしていたスクワイヤがすっかり戦う気になってるのは好印象です。
なかなかいい切欠になるんじゃないでしょうか、頑張れ新主人公!

760通常の名無しさんの3倍2020/02/07(金) 21:12:01.21ID:7x6KpfI00
お疲れ様です
小説書いた事ないらしいけどめっちゃ読みやすい

761◆tyrQWQQxgU 2020/02/10(月) 22:24:11.44ID:aXIempxZ0
>>758

>>759

皆さんこんばんは!

シロッコ好きなんですよねー!笑
傍観者だの何だの言って大物感出してる割にシャアとハマーンの痴話喧嘩劇場に付いてきて結果艦隊壊滅させちゃったり…これでは勝てん!じゃないよ…笑
他のZ本編キャラよりは描写多めにしたいと思ってるのでご期待ください!

>>760
ありがとうございます!
読んでたのは村上春樹とか北方謙三とか、親の持ってた小説を読んでた感じですね!雑食です!笑

762◆tyrQWQQxgU 2020/02/10(月) 23:42:42.45ID:aXIempxZ0
アトリエ大尉を登場させるべきかは悩みましたが、彼がいると話が動かしやすいもので…つい頼っちゃいますね。笑
スクワイヤ少尉もようやく主人公らしくなってきたので、他の面子共々引き続きよろしくお願いします!

さて、更新ペースが落ちてきているのでやっぱり小出しにしていこうと思います!笑
こっちが連載でpixivが単行本みたいな感覚で読んでいただければ良いかなと。
2話ほど投下しますので、よろしくお願いします。

763◆tyrQWQQxgU 2020/02/10(月) 23:43:11.01ID:aXIempxZ0
「ったく…。大丈夫なのか?」
 ワーウィック大尉が覗き込むコックピットの中、スクワイヤ少尉は模擬戦の準備に取り掛かっていた。
「急でしたけど、私がこの機体に見合うパイロットなのかはずっと疑問でしたし」
 まともに戦績もないままに託されたガンダム。表沙汰に出来ないデータが使用されているとは言うが、それにしても優先順位がある筈だった。アトリエ大尉の様な人物が居るならば、本来そちらに回されるものではないのか。
「私を評価してくださるのは有り難いんです。でも、自分で納得できてない部分があって。この模擬戦で何かしら答えが欲しいんですよ」
「わからんではないが…」
 困った様に大尉が頭を掻く。
「それに…隊長は私の事信頼してくださいよ。彼は戦友なんでしょうけど」
「!…そうだな。折角の機会だし…あんなやつ、打ちのめしていいぞ」
 ハッとした様に大尉が笑った。ワーウィック大尉が任せてくれるならば、出ない力も出せる気がした。

764◆tyrQWQQxgU 2020/02/10(月) 23:43:32.66ID:aXIempxZ0
 大尉が離れて独りになったコックピットで、スクワイヤ少尉は準備を終えた。通信が入る。
『聞こえるか少尉』
 フジ中尉からだった。
「聞こえてます」
『模擬戦だそうだな。例のガンダムパイロットと手合わせなんて、なかなか無い機会だ。しっかり勉強させてもらえ』
「あっちにこそ勉強させてやりますよ」
『ほう…また強気だな』
 ひと通り支度してヘルメットのバイザーを下ろす。映し出されたモニターには模擬戦の作戦範囲が表示されている。
『表示の通り、基地周辺の月面試験場が指定場所だ。適度な量のコロニー残骸、凹凸のある地形…低重力とも相まってMSの操縦技量を確かめるには良いフィールドといえる』
 いつもの様に中尉が解説する。確かに色んなことが出来そうだ。
『今回使用する装備は模擬戦用のライフル1丁とジムシールドのみだ。ペイント弾で被弾位置を確認出来る。サーベルは使用出来る状態だが、間違っても抜くなよ』
『俺は抜いても構わんぜ』
 中尉との通信にアトリエ大尉が割り込む。彼も準備が済んだようだ。
「私、接近戦が得意なんですよね」
『奇遇だなぁ!俺もだぜ』
『2人とも、サーベルは禁止です。いいですね?』
『ワーウィック大尉より堅いやつがいるな、この艦は』
『当然の事をお伝えしたまでです』
『あいよー』
 火を見るより明らかだが、この2人は相性が悪そうだ。

765◆tyrQWQQxgU 2020/02/10(月) 23:43:59.68ID:aXIempxZ0
『さーて!やろうか!アトリエ大尉、百式改…出るぞ』
 先にアトリエ大尉の百式が出る。少尉は、ワーウィック大尉の機体に彼が乗っているのも癪に触った。
「スクワイヤ少尉、マンドラゴラ出ます」
 続くようにして少尉も出る。すっかり見慣れた月面だが、気付くとアトリエ大尉の姿が見えない。スクワイヤ少尉も近くにあった岩場に身を潜める。
『それでは模擬戦を開始します。致命傷の被弾を確認するかどちらかのリタイア、或いはタイムアウトまで続けます。いいですね?』
「了解」
『では…これより開始します』

 静寂。照明の類、それとデブリが漂う以外は動くものもなく、まるで時が止まったかのようだ。
 しばし時間を置いてスクワイヤ少尉が機体を動かしたその時、早くも被弾した。背後から右肩を撃たれた様である。
「うそっ!?何処から!?」
『ちんたらやってんじゃねえよ!』
 振り返るとアトリエ大尉の機体が見えた。彼の機体は、先程出撃に使ったカタパルトのすぐ傍に立っていた。出撃してすぐ身を翻していたのか。
『お前がケツ丸出しで隠れてんのは初めから見てた』
「卑怯な…!」
『卑怯もへったくれもあるかよ!』
 すぐに百式へ標準を合わせるも、バーニアを吹かした百式の動きは流石に早い。飛び回る大尉に追いすがる様にして少尉も食い下がった。
『流石ガンダム!これについてこれるんだな!』
「馬鹿にして…!」
『!』
 少尉は更に出力を上げ、百式を追う。慌ただしく姿勢制御をこなし、完全に百式を追い抜く。抜きざまに一瞬だけ速度を合わせると、ライフルを放った。ペイント弾が左肩を掠める。

766◆tyrQWQQxgU 2020/02/10(月) 23:44:27.51ID:aXIempxZ0
『やるじゃねぇか。だが…』
 追い抜いたのも束の間、視界から百式が消えた。位置に気づくよりも早く、下からの弾丸。咄嗟に後退すると、機体の目の前を弾が通り過ぎた。
『まだまだぁ!』
 そのまま急上昇してきた百式に背後を取られた。
「く…!」
『これに頼り過ぎなんだよ』
 ライフルを交わし損ねポットにペイント弾を浴びる。どうにか振り払おうともがくと、あっさり百式は距離を離した。
『寝ぼけてんのか?』
 正面で向き合う形になり、百式は腹部目掛けて強烈な蹴りを見舞った。弾き飛ばされたマンドラゴラはそのまま地面に叩きつけられる。
『終わりかな』
「げほっ…誰が…!」
 向けられた銃口に気づいた少尉はすぐさま機体を立て直し、隆起した地形に隠れた。百式は追ってこない。

「はぁ…はぁ…」
『このまま続けても埒が明かねえ。実戦だったら今頃ガンダムはオシャカだぜ』
 身を隠したまま百式の出方を窺いつつ呼吸を整える。マンドラゴラのショックアブソーバーでなければ無傷では済まなかっただろう。
 やはりニュータイプどうこう以前にそもそも操縦技術が高過ぎる。それに加えて何をやろうにも後の先を取られている様な感覚だ。
「(くそ…考えろゲイル…!)」
 手の内にあるものをとにかく確認した。ガンダム…コロニー残骸…ペイント弾…模擬戦…。開幕早々の被弾といい、アトリエ大尉もあるものは何でも使うだろう。
「…!」
 スクワイヤ少尉は策を閃いた。
『そろそろこっちから仕掛けさせてもらうぜ』
 ほぼ同時に百式も動き始める。策を試せるのは1度きり…スクワイヤ少尉は腹を括って息を吐いた。
『…ケツを隠せと言ってるんだがな』
 こちらの動きに気づいた様だ。
『もらった!』
 百式がコロニー残骸から姿を現しライフルを撃った。ガンダムの背にそれが直撃する。

767◆tyrQWQQxgU 2020/02/10(月) 23:44:56.35ID:aXIempxZ0
 しかし、そこにあったのは自立して飛ぶバーニアポットだけだった。
『なっ…!』
 恐らくアトリエ大尉にはバーニアの残光が見えていたのだろう。いや、見逃すはずがないと少尉は確信していた。
「喰らえッッッ!!!」
 振り返った百式の正面からライフルを放つ。
『んなもん喰らうかよ!』
 百式はシールドでそれを防ぐ。ここまで少尉の読みどおりだった。
「防ぐのはわかってた。でも気にするべきなのはそっちじゃないわ」
『あぁ?』
 百式の足元に背後から大きな影が落ちる。彼が背後を振り返った時、そこには倒れてくるコロニーの外壁があった。
『さっきのポットか!?』
 通過したポットはそのまま直進を続け、そのままぶつかったコロニー外壁の根本をひたすら押していたのだ。中途半端に刺さっているだけの残骸も多い事は知っていた。
『うおっ!』
 倒れてくる外壁を両手で支える百式。ライフルもシールドも手放さざるを得ない。
「今度こそッッッ!!!」
 少尉は必要なアポジモーターとサブスラスターを全開にして突っ込んだ。
『甘いぜッッッ!!!』
 突っ込みながら放ったペイント弾を数発浴びながらもアトリエ大尉は吠えた。百式は片手を外壁から離すと、瞬時にビームサーベルを抜き外壁を切り刻んだ。崩れた残骸によって巻き上げられた砂埃が辺りを包む。

768◆tyrQWQQxgU 2020/02/10(月) 23:45:21.15ID:aXIempxZ0
『ちぃ…何も見えねぇ』
 一旦場所を変えようと百式がバーニアを吹かしたその瞬間を彼女は逃さなかった。咄嗟に位置を把握した少尉は、百式の足を掴みそのまま砂塵に引き摺り戻す。
『ぐおっ!』
「そっちこそ…甘かったわね…」
 辺りの視界が開けてきた時、マンドラゴラは叩きつけた百式の両肩を抑え、上から跨っていた。ブリッジからの通信で歓声が聞こえる。勝った。
『やるじゃねぇか…スクワイヤ少尉』
「模擬戦だったからですよ…じゃなきゃやられてた」
『それは違うな』
「え?」
 聞き返したその時、マンドラゴラのコックピットがペイント弾に塗れた。完全に砂埃が落ち着くと、いつの間にか百式が懐にライフルを手にしているのが見えた。
『模擬戦も俺の勝ちだぜ、嬢ちゃん』
「馬鹿な…!一体いつ…」
『組み敷かれた時にお前から奪ったんだ』
 ハッとして確認すると、確かにそのライフルはマンドラゴラのものだった。百式を抑え込むので必死になってそんなことにも気付いていなかったのか。
『ま、筋が良いのは認めるけどな』
「う…」
 少尉は肩を落とした。最後まで出し抜けなかった。
『…マンドラゴラ撃墜を確認しました』
 フジ中尉の声が聞こえる。少尉はただうなだれるしかなかった。

769◆tyrQWQQxgU 2020/02/10(月) 23:46:46.26ID:aXIempxZ0
 その後帰還した両機はメンテナンスを開始した。機体を降りた少尉はトボトボと格納庫を歩く。
「嬢ちゃん!良かったぜ」
 後ろから乱暴に背を叩いたのはアトリエ大尉だった。
「あそこまでやって駄目なんて…」
「相手が俺じゃなきゃ上手くいったかもな」
 笑うアトリエ大尉にはまだまだ余裕が感じられた。仮に作戦が上手くいったとしても、何かしら対策を打たれていた様に思える。完敗だった。
「執念を感じる戦いぶり…。まるでいつかの俺達の様な。そうだろ?アトリエ大尉」
 そう言ったのは、出迎えたワーウィック大尉だった。傍にはフジ中尉も居る。
「敵の力量を測り、尚且つ機体特性や地形条件も活かした作戦。そして何より、失敗の許されない作戦を咄嗟に実行する胆力…。模擬戦である事を開き直って、使えるものを使った大胆さもありました」
 フジ中尉が眼鏡を掛け直しながら言う。
「えらい少尉を褒めるじゃねぇかよお前ら」
「素晴らしい内容だった。アトリエ大尉が1番それを実感しただろうに」
 ワーウィック大尉が苦笑いしている。
「結果が全てだぜ?」
「アトリエ大尉、最初に私が説明した事…覚えてらっしゃいますか」
「ん?」
 フジ中尉が不敵な笑みを浮かべていた。固まるアトリエ大尉。
「サーベルの使用は禁止と言った筈です。よってこの模擬戦、勝者は少尉です」

770◆tyrQWQQxgU 2020/02/10(月) 23:47:08.52ID:aXIempxZ0
「ちょっと待てよ!別にガンダムにサーベル向けた訳じゃないぜ!?」
「ルールはルールだ。それに、あの状況でサーベルを使わざるを得ない形に追い込んだのは流石と言う他あるまい?他に手が無かったんだろ?」
 ワーウィック大尉がニヤニヤと意地悪く笑っている。
「ちぇ、アウェーでやるもんじゃねぇな」
 アトリエ大尉がやれやれと両手でジェスチャーした。
「それじゃ…」
 恐る恐る少尉は切り出した。
「おう。ガンダムは置いていってやるよ。お前の勝ちでいいぜ…変に粘っても格好がつかねえ」
 腕組みしたアトリエ大尉がフンと鼻を鳴らした。
「やった!」
 スクワイヤ少尉は思わずその場で小さく跳ねた。
「まあ、確かにあれだけ技量があればガンダムも本望だろうよ。俺ほどじゃねえけど」
「素直じゃないな。あんな楽しそうなところは久しぶりに見た」
「会ったの自体久々じゃねぇか!」
「一理あるな」
 2人が笑うのにつられて少尉も笑った。

771◆tyrQWQQxgU 2020/02/10(月) 23:47:51.21ID:aXIempxZ0
「楽しそうなところ申し訳ないが」
 格納庫の入り口からの声に場が凍りついた。ロングホーン大佐である。
「お前達…何をやっている?」
「その、模擬戦を…」
「見ていたよ。私は各部隊に待機を命じていた筈だが、何やらドンパチ騒ぎを起こす連中が目に入ったものでな」
 アトリエ大尉の声を遮りながらロングホーン大佐が言った。カツカツと靴を鳴らしながら少尉達の前までやってくる。
「アトリエ大尉!歯を食いしばれ」
「へっ…?はっ!」
 言うなりロングホーン大佐はアトリエ大尉を殴り飛ばした。大尉は派手に尻餅をついた。
「これで不問とする。全く…よその部隊にけしかけて模擬戦などと。只でさえ問題が多いのだぞ貴様は」
「何で…俺ばっかり…」
「なんだ?まだ修正が足りんか」
「いや…結構です…」
 呆気に取られている少尉達をよそに、ロングホーン大佐は来た道を戻っていく。格納庫を出ていく時、またこちらを振り返った。
「2人共、いい勝負だった。戦果を期待しているぞ」
 大佐はニカッと笑うと、踵を返して去っていく。その場には、立ち尽くす少尉達と頬を擦るアトリエ大尉が残されていた。

26話 ドンパチ騒ぎ

772◆tyrQWQQxgU 2020/02/10(月) 23:48:30.34ID:aXIempxZ0
 アレキサンドリアの面々は、ジュピトリスに到着していた。ジュピトリスはパプテマス・シロッコ大佐が木星より伴った超大型艦である。MSの整備のみならず、開発設計までも行える工蔽を備えている。
 艦同士の船体を接続し、司令部へと足を運んだ。
「ウィード少佐以下、只今帰還致しました」
 ウィード少佐を筆頭に、ドレイク大尉とソニック大尉、オーブ中尉やレインメーカー少佐も伴っていた。

「戻ったか」
 紫の髪を束ねた秀麗な面持ちの男、パプテマス・シロッコ大佐が振り返る。傍には若い女性士官を連れている。
「事前の報告の通り、機体を失いました。申し訳ありません」
 ウィード少佐に続き面々は頭を下げた。
「仕方あるまい。データを持ち帰ったならそれで良い…その為の試験だ。それに…」
 彼はウィード少佐の前に立つと、彼女の顎に軽く指を添え顔を上げさせ眼差しを合わせた。
「君のような優秀な女性を、この程度の戦局で失う訳にはいかん。君に続く多くの人間は、この先の…まだ見ぬ世界を待っているのだからな」
 ウィード少佐は、淡い色をした彼の瞳に吸い込まれる様な心地がした。控える女性士官の眼差しに気付き、ハッとした様に目線を逸らす。
「…新たな世界を築くのは君たちだ。私はあくまでも導くだけ…。その事を忘れないでくれ。私にも、輝かしい未来を見せてくれると嬉しい」
「はっ」
 ウィード少佐は再び姿勢を正し敬礼した。彼はいつも自らは一歩下がったところに居てくれる。自信が湧いてくるのは、そうした彼の指導の仕方による部分が大きい。

773◆tyrQWQQxgU 2020/02/10(月) 23:48:54.97ID:aXIempxZ0
「既に機体のハードはあらかた完成しつつある。ソフト面で諸君のデータを活かす事になる予定だ」
「ありがとうございます…!しかし、相変わらず製作がお早いですね」
「時代は常に動いている。手を止めている暇は無いのだよ。新たな機体は再びエース用の機体として組み上げている…パラス・アテネとでも名付けようか」
 そう言いながら彼はモニターに機体のデータを映し出した。シルエットこそニュンペーと酷似しているが、緑主体のカラーリングと様々な武装オプションによりまた違った印象を受けた。
「アテネ…女神ですか。大佐らしい御命名です。量産型はまだ先送りになるのでしょうか?」
「いや、同時進行で開発を続けたい。その為の豊富なオプション群でもあるからな。エース機と量産機で規格を共通化することで、現場の整備性も向上する。アテネの元に集うニュンペー…実に美しい隊列になるだろう」
「早くお目にかかりたいものです」
「君達の働き如何だ。引き続き頼まれてほしい」
 そういってシロッコ大佐はウィード少佐達面々を振り返った。実際に量産へ漕ぎつければエゥーゴなど敵ではない。ジオン残党の駆逐も容易い筈だ。
「「はっ」」
 姿勢を正し再び敬礼する。これからの事を打ち合わせ、ウィード少佐達はジュピトリスを後にした。

774◆tyrQWQQxgU 2020/02/10(月) 23:49:17.28ID:aXIempxZ0
「ドラフラって、ああいう男がいいのね…?意外だわ」
 ドレイク大尉が天井を仰ぎながら言った。一行は補給物資が積み終わるまでアレキサンドリアのブリッジで小休止といったところである。
「別にそういうんじゃ…」
「うっとりしてたじゃない?」
 からかうドレイク大尉。顔が熱くなるのを感じた。
「ああ見えて野生的な強さを持っているのがわかる…俺と同じだな」
「どこがあんたと一緒なのよ。目まで筋肉になったんじゃないの?」
 ソニック大尉とオーブ中尉が一緒に絡んでくる。
「あの若さで先見の明を見抜いているあたり、やはり木星というのは未知の環境なのでしょうなぁ」
 うんうんと頷きながらレインメーカー少佐が感心している。
「確かに素晴らしいお方だけど、私一人を目に掛けてくださっている訳じゃないわ。私はただの部下よ」
 ウィード少佐がため息をつく。
「叶わぬ恋ってやつかぁ…」
 オーブ中尉がわざとらしく悲しそうな顔をしてみせる。確かに彼には魅力を感じるが、親しみを覚えるにはいささか超然とし過ぎていた。胸に渦巻いているのは憧憬に近い感情なのかもしれない。
「でも彼、女たらしな感じはあるわね」
「もう!その話は終わり!」
 悪ノリを続けるドレイク大尉達を制した。

775◆tyrQWQQxgU 2020/02/10(月) 23:50:35.20ID:aXIempxZ0
 しばらくしてアレキサンドリアは再びジュピトリスから離れた。パイロット達に機体のチェックをさせている間、ブリッジにはウィード少佐とレインメーカー少佐が残った。
「行き先は再び月ですな。作戦指示があるまでは宙域で待機とのことですが、本隊は何やら企んでおるのでしょう」
 レインメーカー少佐が腕組みしながら艦橋からの景色を眺めている。遠くに映る月は変わらず静かな光をたたえている。
「今度こそ連中を叩く…。それに変わりは無いわ」
「いかにも」
 ジュピトリスでは失った機体の補給も済ませてきた。試験用に用意していた予備パーツから組み上げたニュンペー2号機を始め、ガルバルディ隊も新たな武装を受領した。
「まだ月までは掛かりそうね…。…!!」
 シートにもたれたその時、ウィード少佐はモニターに映った物に気付き身を乗り出した。
「これは…!?」
「…やはり考えるスケールが違いますな、上層部は」

776◆tyrQWQQxgU 2020/02/10(月) 23:51:11.96ID:aXIempxZ0
 そこには、本来そこにある筈のないコロニーが写っていた。アレキサンドリアからは随分遠い場所にいる様だが、それでもどうにか視認出来る距離だった。
「ただの移送…ではないわね。…まさか」
「落とすんでしょうな、月へ」
 事も無げに言うレインメーカー少佐を見た。彼の表情は変わらない。
「いくらなんでも…それに我々は何も聞いていないわ」
「あくまでもティターンズは特殊部隊から始まった軍隊ですからな。必要以上に情報は漏らさんでしょう」
 飄々としたレインメーカー少佐に、彼女は一抹の不安を覚えた。
「しかし…」
「知ったところでどうなさるんです。ニュンペーで敵を撃つのか、コロニー落としで殲滅するのか…そこにどれだけの違いが?」
「違い過ぎます…」
「まだまだウィード少佐はお若い。大局はこうやって動く事もあるのだと知っておくいい機会です。先の大戦でも、ソロモンを焼いたのはソーラ・システムという戦略兵器ですからな。決してこれが特例という訳でもありますまい」
「そんな…」
 思わず拳を握り締めた。確かに戦局は動くだろう。しかし、義のある戦いにおいて本当に許される手段なのか。コロニーの住民は何処へ行ったのか。月の一般市民達はどうなるのか。
「知れば悲しみ、知らねば顧みず…。その程度の感傷で世界は動いておらんのです。どうか、ここは耐えてください」
 察した様にレインメーカー少佐が言った。目を細める彼には一体何が見えているのだろうか。ウィード少佐には考えが及ばなかった。
 少しずつ大きくなっていくコロニーの姿に、自らの業を見た気がした。

27話 静かな光

777通常の名無しさんの3倍2020/02/11(火) 03:01:31.59ID:GcXeF8+D0

778通常の名無しさんの3倍2020/02/14(金) 19:26:29.05ID:lJZVDjL30
お疲れ様です!

マンドラゴラ、ブースターポッド飛ばせるんですか!
そして(爆発四散してるにせよ)コロニー外壁を押し退ける推力と剛性、どっちかと言えば『拳』、キャラが立ってるw
百式のバックパックが羽と推進器の二段階で分離させたり、ディアスやZZのバインダーを外して使えるAEらしい設計で
Vガンダムの半分はアナハイムで作ったと言われても、分かる話ですね
(この物語には出てこないでしょうけど、サナリィに部品を切り離して使い捨てにするセンスは感じません)。
実戦と模擬戦を使い分けるアトリエはまだまだですね、スクワイヤもアツくなってて気づかなかったけどw

ウィード少佐はシロッコに惹かれてるんですね、少し意外でした(>>687の段階ではもうちょっと警戒してるかなー、と)。
ソニックが自分に近い波長を感じてるのは、(木星帰りが)何故かヤザンと意気投合したあの感じですかね、これも意外。
ドレイクは距離を取って考える......ミサイル付シールドを上手く使う(>>661参照)といい、実戦的な知性派なんですね。
レインメーカー爺さんは前者2人のようなベタ誉めではなく
よく分からないけど成果は挙げてる輩に感心しつつ、内心しっかり警戒してると見ましたw
或いはふと自分もかつては見果てぬフロンティアを夢見ていたと思ったのか、でしゃばらず良い感じです

これからはアイリッシュ隊の内幕が描かれ、アレキサンドリア隊もリニューアルして新たな戦いに臨むと。
いよいよ本番・決戦という感じですね、ご健闘を!

779◆tyrQWQQxgU 2020/02/15(土) 15:19:28.16ID:ESK3Cyhb0
>>778
いつもありがとうございます!

おー!その辺まで考察していただけるとは!頑張って考えた甲斐があります!笑
分離機構はアナハイムガンダムにはあって然るべきだと思うんですよね、劇場版ZのラストでもZのバインダー外してましたし。

何かと毎度ぶん殴られるのはアトリエ大尉の仕事…笑
模擬戦でしか通用しない戦術は、技術が向上した故の彼なりの手加減だったんですが、サーベルに関してはほんとに追い込まれて素が出ちゃった感じですね。フジ中尉の説明もまともに聞いてなかったし…笑
彼も言っていた通り実戦だったらポットも破壊されてその時点で決着は着いてますが、アトリエ大尉の戦い方からそこを割り切って考えたスクワイヤ少尉が勝った感じです。ただ、やっぱ腕は完全にアトリエ>スクワイヤですね!

アレキサンドリア隊はシロッコの元で動いているので何かしら共感している部分があります。
ドレイク大尉はマウアー的なとこもありますね…シロッコみたいなデキる男よりダメ男が好きそう…笑
彼らのこともまだまだ掘り下げたいので、それも追々。

1つの山場を迎えますんで、引き続きよろしくお願いします!!

780◆tyrQWQQxgU 2020/02/28(金) 15:46:19.21ID:98Jcq17H0
お待たせしてます!
最近あまりにも忙しいもので…
多少書き溜めてるのでちょこちょこ出しときます!!

781◆tyrQWQQxgU 2020/02/28(金) 15:52:24.16ID:98Jcq17H0
「そんじゃま、元気にやれよ」
 頬に湿布を貼ったアトリエ大尉。補給が終わり、再び月を立つとの事だった。しばらく月に滞在する事になるスクワイヤ少尉とワーウィック大尉は、2人で彼を見送っていた。
「ニュータイプって、信じます?」
「あぁ?MSの操縦がうまけりゃそう呼ばれるのさ。お前も、ワーウィック大尉もニュータイプなんじゃないか?」
「また適当な事を言って」
 ワーウィック大尉が呆れる。しかし案外アトリエ大尉の言うことも的外れではない気がした。
「人と深く解り合えるんでしょ?最初のガンダムに乗ってたアムロ・レイが随分前に前テレビで言ってました」
「ああ、あいつか…訳のわからん事を言うから軟禁されてたんだろ。俺を見てみろ、解り合えそうか?」
「うーん確かに」
 首をひねった少尉の頭に、ムッとしたアトリエ大尉が拳骨した。
「お前も生意気だが、まあそういうこった。俺がニュータイプでないか、ニュータイプ自体が幻想か…。どっちにしろ関係のない話だぜ」
「メアリーとお前は解り合えなかったのか?」
 そういってワーウィック大尉は、アトリエ大尉の胸元に光る石を指差した。翠の美しい光を放っている。
「ふん、あいつは特別だ。…そろそろ行くぜ」
 バツが悪そうにアトリエ大尉が歩きだした。
「え、なに?彼女かなんかですか?」
「まあ、だとしたら犯罪だな」
 ワーウィック大尉が笑う。
「だーれがロリコンだ!」
「いや、そこまでは言ってない」
 振り返ったアトリエ大尉にワーウィック大尉が胸の前で手を振ってジェスチャーする。
「けっ、その調子なら大丈夫そうだな!あばよ」
「…ほんとに、ありがとうございました」
 スクワイヤ少尉は頭を下げた。
「…マンドラゴラだっけ?あれはいい機体だ。お前なら乗りこなせるだろうよ」
 背を向けて歩きつつ、アトリエ大尉が軽く手を挙げる。姿が見えなくなるまで、少尉達はその背中を見つめていた。

782◆tyrQWQQxgU 2020/02/28(金) 15:52:54.21ID:98Jcq17H0
「…戻るか」
「そうですね」
 少尉達もその場を後にする。彼女達の機体も補給が終わり、次の作戦を待つだけだった。とりあえずアイリッシュ級の元へと帰る。
「アトリエ大尉…彼って本当にガンダム貰う気だったんでしょうか」
「どうだか。私が思うに、少尉の事が気になったんだろう」
「私?」
「ああ。ガンダムに思う所はあるだろうからな。どんなパイロットなのか自分で確かめたかったんだと思う。恐らく、お眼鏡にかなったんじゃないか?」
「それなら良いですけど。でも正直、私なんかより彼の方がガンダムに似合う気はしてます」
「あいつは何に乗っても戦果を挙げるさ。それに…」
 言葉を切った大尉が足を止めた。気付いた少尉も振り返る。
「私は、少尉を信頼している」
 柔らかな表情で言う大尉と目が合った。少尉もニュータイプだったら、彼の気持ちが見えるのだろうか。
「ふふ」
 恥ずかしくなった少尉はまた足早に歩きだした。

「見送りは済んだのか」
 艦に戻るとグレッチ艦長がブリッジで出迎えた。
「はい。今頃艦も出港する頃でしょうね」
 大尉が応える。彼に並ぶ様にして少尉も顔を出した。
「いやー、惜しい男だった。ああいうやつが一人いると俺も楽しいんだがなぁ」
「ずっと居られるとそれはそれで苦労も絶えませんよ」
 苦笑いするワーウィック大尉だが、どこか寂しそうでもある。
「それはそうとゲイルちゃん!腕を上げたな。俺も艦長として鼻が高い」
 艦長が少尉を覗き込む。観戦しながら呑んでいたところをロングホーン大佐からどやされたと聞いたが、あまり悪びれている様には見えない。
「艦長のおかげでガンダムを持っていかれるところでしたよ」
「いやいや!俺はゲイルちゃんならお茶の子さいさいだろうと思ってな!」
「都合いいなぁ…」
 呆れつつも、模擬戦の機会をくれた艦長には感謝していた。アトリエ大尉との戦いで、足りなかった何かを得た気がする。
「何か指示があったら伝達してやるから、お前達も休むといい。また働いてもらうことになるからな」
 そういって艦長が帽子をかぶり直した。少尉はその言葉に甘えて自室へと戻った。

783◆tyrQWQQxgU 2020/02/28(金) 15:53:32.54ID:98Jcq17H0
 スクワイヤ少尉は味気ない部屋へと帰ってきた。サラミスの時より広い自室になったものの、相変わらず置くものがないせいで余計にその広さが味気なさを強調していた。いつもの様に支度を済ませると、ベッドへ寝転がる。
 模擬戦だったとはいえ、アトリエ大尉との戦いは鬼気迫るものがあった。あれこれ余計な事を考える暇もないほど追い立てられたし、彼を倒すこと以外は考えられなかった様に思う。
 少尉は天井を見つめながら思考を巡らせた。死への恐怖も、そして好奇心も変わらずある。しかし、それを傍らに置くことが出来ればいいのではないかと思えてきた。
 無理に克服したり、押さえつけたりしなくてもいい。目の前の事に必死になれる自分をようやく見つけられたのかもしれない。
『…ゲイルちゃん!寝てんのかー?』
 しばらくうつらうつらしていたところに通信が入った。身を起こすと、目を擦りながらモニターを触る。
「む…。どうしました?」
『大変なことになった。すぐブリッジに来い』
 そういって艦長は通信を一方的に切った。何事かわからないまま、バタバタと部屋を出る。

 程なくしてブリッジに到着すると、皆集まっている様だった。一様に表情は硬い。
「なんなんです?」
 少尉が声を掛けると数人が振り返った。
「まずい事になってる」
 組んでいた腕を解いたフジ中尉がモニターを指す。そこには見慣れた形のスペースコロニーが写っていた。
「コロニーがどうしたんです」
「これがグラナダに向かってきてる」
「へ?」
 つい間抜けな声が出た。別のモニターを見ると、月との距離を観測している様な図面が映っている。
「信じられんのは無理もないが、奴らはもう手段を選ばん様だ」
 艦長がシートに沈み込みながら言った。深く被った帽子で表情は読み取れないが、声色から怒りが滲んでいた。
「ジオンの時にあれほど被害を受けておきながら、今度は同じ事をやる」
 ワーウィック大尉もモニターを見つめている。
「…前から気になっていた事があります。今言うべき事かは私にもわかりません」
 フジ中尉が改まってワーウィック大尉を見た。大尉もモニターから中尉へと視線を移した。

784◆tyrQWQQxgU 2020/02/28(金) 15:54:06.59ID:98Jcq17H0
「大尉は…ジオン公国軍に所属されていたのではないですか」
「…ああ。元々私は君達の敵だった」
「…そうですか」
 ワーウィック大尉が静かに応え、中尉もまた静かだった。スクワイヤ少尉は知らなかった事だ。驚きを隠せず、大尉を見つめた。
「大尉もコロニー落としを?」
「…良い機会かもしれないな、少し話そう。私は地球降下作戦から従軍して、そのまま地上で終戦を迎えた。ルウムまでの事はサイド3で伝え聞いていただけだ…。戦後、デラーズ紛争にも加わらないままだったよ」
「私は…宇宙生まれです。ジオンに占領された連邦寄りのコロニーで父を失いました。母が言うには真面目な男だったようで、最期まで職務を全うしたのだと。私と母や兄弟は父の伝で地球にいて難を逃れましたが」
 2人の話に気付き、周りも少しずつ静かになっていた。
「…ジオン公国のやり方は間違っていた。私もそう思っている」
 ワーウィック大尉はフジ中尉を見つめた。しかし、中尉は彼から目を逸らした。
「何故そう言い切れるんです…?あなたはそれでも終戦まで戦っていた筈です」
 中尉が拳を強く握り締めるのが見えた。
「…ジオンにいた私を許せないのなら、それも仕方ない」
「大尉に何か伝えて事態が変わる訳じゃないこともわかっていますよ…!しかし…」
 中尉は再び大尉に詰め寄った。
「コロニー落としなんてものをやるティターンズは当然許せません…。しかし…そのティターンズが生まれたのはジオンのせいでしょう!?何故ジオン軍人だったあなたが此処にいるんです!?…やはり…私には割り切れない…」
 そういって中尉はブリッジを飛び出した。
「フジ中尉!」
 慌てて追いかけるワーウィック大尉をスクワイヤ少尉も追った。コロニー落としが行われると言われても正直実感は沸かない。大尉がジオン出身だったことも知らなかった。気持ちの整理がつかないまま、とにかく彼らの後を追った。

28話 解り合える

785◆tyrQWQQxgU 2020/02/28(金) 15:55:54.36ID:98Jcq17H0
「ここにいたのか」
 ワーウィック大尉がフジ中尉に声をかける。格納庫に立つEWACネモの前に彼はいた。
「…申し訳ありません」
「いや、気にするな」
 スクワイヤ少尉は、彼らと一緒にしばらく黙っていた。

「…この機体、本当にに良く出来ています」
 中尉がネモを見上げる。完全に修復作業を終えた機体は、傷が癒えたフジ中尉が再び乗り込むのを待っている。
「私もこの機体と一緒で、情報収集が得意ですから。…大尉のことも色々と拝見しています。そもそも最初に見たエゥーゴの資料に違和感がありましたしね」
 大尉が着任してくる時に見ていたあの資料のことか。少尉は結局見ないままだった。大尉はただじっと話を聴いている。
「いくつかの資料に目を通して、あなたがジオン出身だと気付きました。嘘と正直が混ざった様な経歴でしたが、エゥーゴにそういう人間が居るのはごく自然です。それでも、実際にそれが判ると…私個人には引っ掛かるものがあるのも事実で」
「流石は中尉だ。私も隠すつもりは無かったが…」
 ワーウィック大尉が腕を組んで壁に寄りかかった。中尉はMSの前の柵を両手で掴んでいる。少尉はただその間で立ち尽くしていた。
「今は共に戦います。しかし、全てに納得出来ている訳ではありません」
「ああ。中尉の言うことはもっともだと思う…。今は私を…信じてくれ。何としてもティターンズを止めなければならない」
 ワーウィック大尉とフジ中尉が向き合った。
「…その気持ちは私も一緒です」
 2人の目には、確かな意思が感じられた。

786◆tyrQWQQxgU 2020/02/28(金) 15:56:23.75ID:98Jcq17H0
「…中尉は私の事も調べたんですか?」
 思わずスクワイヤ少尉は聞いた。
「まあ調べはしたが…少尉は志願兵だろう?後地球出身ってことくらいは」
「よくご存知で」
 そう聞いて内心少しホッとした。それ以上の事は踏み込まれていないらしい。
「中尉の気持ちも勿論わかります。けど…今は喧嘩してる場合じゃないです。ティターンズ、止めに行きましょ」
「ふふ…少尉に諭される日が来るとはな」
 フジ中尉が自嘲気味に笑った。
「そりゃまあ、チームプレーが大事ですから」
 そういって彼女も力なく笑う。いずれ、少尉も自身の事を話さねばならない時が来るだろう。

 その時、格納庫へと通信が入る。
『ワーウィック大尉達、そこに居るんだろ?』
 近い通信機器のモニターいっぱいに映っていたのはグレッチ艦長の顔だった。
「申し訳ありません。ご心配をおかけしました」
 大尉が応答する。
『全くお前らは…誰かに何かあったと思えば今度はまた違う誰か…いい加減落ち着け!』
「いやはや、仰る通りで…」
 珍しくワーウィック大尉が辟易していた。
『まあいい。今はそれどころじゃねぇからよ…。コロニー迎撃に出る必要があるのは判ってるな?』
「はい。司令部はなんと?」
『とにかく出港しろとさ。既にアーガマやラーディッシュは出ているそうだ』
「やけに動きが早いですね…」
『何でも密告者がいたらしい。やはりティターンズも一枚岩ではないな』
「なるほど。我々もこうしてはいられませんね」
『おうよ!さっさと支度しろ!』
「はっ」
 手早く通信が切られた。最近のグレッチ艦長は貫禄が出てきたというか、艦長らしくなってきた。たった1ヶ月やそこらで人は変わるものなのか。いや、本来の一面が隠れていただけかもしれない。
「よし。早速準備だ」
 ワーウィック大尉が2人を振り返る。
「今回から私も復帰しますので、演算の類はお任せを」
 そういってフジ中尉はヘルメットを脇に抱えてリフトへと急いだ。
「…中尉、大丈夫ですかね」
「彼ならきっちりやってくれる」
 ワーウィック大尉の心境は複雑だろう。彼も自身の過去にはきっと苦しんだ筈だ。
「大尉も無理はしないでくださいね」
「ああ…ありがとう。背中は任せた」
 大尉も百式の元へと駆けていった。

787◆tyrQWQQxgU 2020/02/28(金) 15:56:47.46ID:98Jcq17H0
 程なくしてアイリッシュ級は出港した。パイロットである少尉達は機体のコックピットで待機している。
『お前達、コロニーは目視できているか?』
 再び艦長からの通信が入る。
「でっかいですね。このコロニー…無人でしょうか」
『みたいだな…恐らくは一年戦争で廃棄されたものの一つだろう。多少弾が当たっても大丈夫だろうが、破片は飛ばすなよ』
 モニターに映るコロニーは核パルスエンジンを除いて光も灯っておらず、見慣れていた姿からすると幾らかおぞましさすら感じる。
『こっからはグレコ軍曹に指示を出させる。俺も忙しいからな…よく聞いとけよ』
 そういうと、艦長と入れ替わりでグレコ軍曹が節目勝ちに現れた。おかっぱの前髪で目元が見えないが、相変わらずもじもじしているのはわかる。
『フジ中尉がパイロットに復帰されましたのでこれからは私が…。先遣隊が軌道を変える為にコロニーへ接近、核パルスエンジンを破壊します。皆さんはその援護をお願いします』
『わかった。因みに敵はどの位出てきている?』
『えっと…』
 ワーウィック大尉が訊ねると、グレコ軍曹が慌てる。
『…すみません、4隻ほど護衛に就いている艦があります。アレキサンドリア級2隻とサラミス改が2隻。既にアーガマとラーディッシュがコロニーへ砲撃を開始していますので、皆さんは反対側から敵を引きつけてください』
『よし。しかし、まさかの旗艦と共同戦線か…』
 ワーウィック大尉の声には期待と焦りがみえた。少尉もアーガマの姿を実際に見るのは初めてである。
「例のニュータイプの少年もいるんでしょうか?」
『少尉、我々は何も気にせずいつもどおりやればいい。…行きましょう』
 少尉の問いにフジ中尉は淡々と応えた。彼に従って出撃準備にかかる。

788◆tyrQWQQxgU 2020/02/28(金) 15:57:35.94ID:98Jcq17H0
 既に交戦が始まっている真っ只中へMS隊は飛び込む。やや離れた場所にアーガマとラーディッシュが見える。
 ラーディッシュは同じアイリッシュ級ということもあってスクワイヤ少尉達の母艦とそっくりだが、アーガマはもう少しこざっぱりとしていて、資料で見たペガサス級と何処か似ていた。
『あっちはあっちでやってる様だ。我々は横槍が入らないよう敵を抑える』
「了解」
 ワーウィック大尉指揮の元、百式改とマンドラゴラが両翼に展開し、その後方中央をネモが陣取る。
『前方に敵。サラミス改1隻と、マラサイが2機、ハイザック2機…。更に後方にアレキサンドリア級』
 フジ中尉が的確に状況を伝える。
『まずは手始めにサラミスの取り巻きを落とす。離れすぎるなよ』
「どう出ます?」
『そうだな、少尉から仕掛けろ。私も合わせる』
「わかりました…!」
 返事とほぼ同時にバーニアを吹かし速度を上げた。百式も横に付いてきている。
『私のことは気にせず突っ込んでください。2人の機動力を活かして道を拓く。そこからネモで情報を集めながら敵陣に入り込んでいきましょう』
 やや遅れながら中尉が言う。言葉通り、お構いなしにマンドラゴラは敵との距離を詰める。同じくこちらを捉えた敵部隊も布陣を完了している様だ。上下にマラサイ、両翼にハイザックといった具合に十字の陣形を組んでいる。
『行くぞ!』
 大尉の声がこだまする。十字の陣形の中央から敵艦の砲撃が届く。それを躱しつつ、迎え撃つ敵陣へと身を投じた。

29話 道を拓く

789◆tyrQWQQxgU 2020/02/28(金) 15:59:39.20ID:98Jcq17H0
「ちぃ…!すぐそこにアーガマが居るのに!!」
 オーブ中尉はコックピットの中で拳を握り締めた。アレキサンドリアの面々はコロニーの護衛にあたりながら迎撃したエゥーゴと交戦に入っていた。先鋒のサラミス隊が例のバッタ達と戦闘に入った様だ。
『焦らないの。あっちはヤザン大尉達がやってるから』
「あの柄悪いおっさんでしょ?いけすかないわ」
 なだめるドレイク大尉に毒を吐く。ヤザン・ゲーブル大尉とはそんなに面識はないが、禄な話を聞かない為あまり良い印象は持っていない。
「ドラフラ、アーガマを落とせればシロッコ大佐も喜ぶよ〜?」
『そんな単純な話じゃないんだから』
「ふん、まあ良いわ。バッタどもには借りもあるしね」
 ブリッジから指揮を取るウィード少佐をからかいつつ、出撃準備にかかる。ジュピトリスでの改修作業でそれぞれの乗機には新たな試験装備を施した。
 オーブ中尉のガルバルディαには、メッサーラに搭載したブースターと同等のものを外付けしてある。TMAで使用した技術をMSへ落とし込む運用試験である。
 最早ガルバルディである必要性はかなり薄いが、パイロットである彼女らに転換訓練を受けさせる手間を省く為と言っていい。

790◆tyrQWQQxgU 2020/02/28(金) 16:00:20.45ID:98Jcq17H0
『ここらで腐れ縁とおさらばしたいのは俺も同じだ。トレーニングに集中したいしな』
「あんたの本業はどっちなのよ」
 相変わらずのソニック大尉には呆れる。とはいえ一度囚われた彼にとってみればまさしく腐れ縁だろう。彼のガルバルディγは完全に装甲材そのものを取り替えた。
 その影響で機体がドム系列の様に大型化したが、各所にアポジモーターを併設することで重量級でありながらも機動性・運動性を確保している。これには、重量バランスに対する推力の必要量を検証する意味合いがある。
『あの調子だと、どうせ先鋒は持ちこたえられないでしょうね…。そろそろいきましょうか』
 ドレイク大尉のガルバルディβは、外観に大きな変化がない代わりにシールドを持ち替えていた。パラス・アテネのオプションの一つで、多数のミサイルを装填してある。
 シールドラックのグレネードを多用していた彼女にはうってつけだ。これに限らず様々なオプションを換装出来る様、各部にラッチを増設している。

 アレキサンドリアから出撃したMS隊は、母艦を離れ過ぎない位置で展開する。先鋒の隊列は乱れ、既に数機撃墜されている様だ。
「どうする?援護に入る?」
『そうね…引きつけるのがお互いに仕事みたいだけど、こっちは連中さえ片付けばアーガマを叩けるからね。早く叩くに越したことはないわ』
 何だかんだと言っても、ウィード少佐もアーガマが気に掛かるらしい。
『準備運動は済んでる。後は負荷をかけるだけだ!』
『はいはい。それじゃ、何かあれば呼び戻すから。行ってきな』
『「了解」』
 ソニック大尉とのいつもの問答を流しつつ、オーブ中尉が先頭になって友軍の元へと急いだ。ここから見えるだけでも、敵の動きが当初とはまるで違うのがわかる。連中にしても、初めての遭遇戦から今日に至るまで伊達に戦ってきた訳ではあるまい。

791◆tyrQWQQxgU 2020/02/28(金) 16:00:57.59ID:98Jcq17H0
 お互いが射程距離に入るまでそう時間はかからなかった。こちらの接近を掴んでいたと思われる敵部隊だが、先手は打ってこない。
 友軍のマラサイが放つライフルを躱しつつ、バッタを筆頭に小さく纏った隊列を3機で組んでいる。
「いつもより大人しいじゃん…?それなら!」
 オーブ中尉は背中のバーニアを前傾にすると、2門のメガ粒子砲を放った。固定兵装なだけあって非常に高い威力を有している。それを受けた敵は一転、大きく散る様にしてビームを避けた。両側に跳んだガンダムとバッタがそれぞれオーブ中尉に迫る。
「あたしが1番叩きやすいとでも!?」
 ガンダムのライフルを躱し、更に振りかぶったバッタのナギナタを両腕のサーベルで受ける。
『こっちは俺が抑える!』
 間に割って入ったソニック大尉がガンダムを牽制する。その隙に中尉はバッタを押し返すと、再度メガ粒子砲を放った。しかしこれもまた当たらない。

「発射角が不自由ね…!」
 唸るオーブ中尉だったが、敵は待ってくれなかった。再度斬りかかるべく一気に距離を詰めてくる。
『独りでやろうとしなくていいの!』
 ナギナタの斬撃を遮る様にして、ドレイク大尉が放ったミサイル群が敵を襲う。バッタはそれを器用に切り払いながら尚も進撃を止めない。爆炎の中から敵のバイザーの光が赤く漏れる。
「何なのこいつ…ッッッ!!!」
 狼狽えながらもオーブ中尉はサーベルを構えた。1度、2度と切り結ぶうちに段々押されていく。敵の得物は長物の筈だが、こちらのサーベル二刀流の手数にも難なく付いてきた。
「腕をひけらかしてさ!そういうの嫌いなんだよね!」
 斬り合いの間を読みサーベルを収めると問答無用で敵の両肩を掴み、敵の胸元へ片方のメガ粒子砲を押し付ける。
「そらぁ!!」
 巻き添え覚悟の零距離でビームを放つ。こうでもしなければ命中させられないと踏んだ苦肉の策だった。
 しかし、放ったビームは敵を捉えられなかった。砲を押し付けた直後に互いの身体の間へ脚を挟み込まれ、ビームを放つよりも先に強力なバーニア噴射で機体を引き剥がされた。
 ビームは敵を掠めるだけに留まり、蹴り飛ばされる形になったオーブ中尉の全身に強い衝撃が走る。
「きゃあああ!!」
『言わんこっちゃないわね…』
 間髪入れず庇うようにしてドレイク大尉がバッタの前に立ち塞がるのが見えた。

792◆tyrQWQQxgU 2020/02/28(金) 16:01:28.29ID:98Jcq17H0
「フリード!」
『連携しろっていってるでしょ!』
 再び距離の開いたバッタに、ドレイク大尉がライフルで牽制をかける。しかし、その合間を縫う様に援護に入ってきた友軍のマラサイが脈絡もなくバッタに接近しようとしていた。
「あっ…馬鹿っ!」
 敵がこれを見逃す筈もなく、サーベルを振りかぶるマラサイの後の先を取ったバッタは、容赦なくこれを袈裟に斬り捨てた。
『下手に飛び出すから…!ああなりたくなかったら言うこと聞きなさい!』
「ちぇ…了解」
『いい子ね…。…ラム?』
『おう!呼んだか!』
 呼び掛けに応じ、2人はドレイク大尉の元へ集う。ソニック大尉を追っていたガンダムも流石にこちらへ突っ込むことはせず、バッタの傍へピタリと付いた。
「…あれ?おかしい…」
 オーブ中尉は今になって気付いた。敵は3機居なかったか。これでは1機足りない。
『何だ?』
「後1機いた筈よ。こないだは居なかったけど、さっきは確かにもう1機…」
 辺りを探すが見当たらない。間違いなく3機いた筈だ。
 すると、急にバッタとガンダムが動いた。ドレイク大尉達には目もくれず彼女らの背後にいるアレキサンドリアへ向かい始める。
「何なの!?」
『いいから追うわよ…うわ!?』
 敵の背後を取ろうとしたドレイク大尉が狼狽える。先程まで無かった筈の大量のデブリが一帯に流れ込んできたのである。行く手を遮られたMS隊は大きく出遅れてしまう。
『一体何処から!?』
「…!」
 バッタ達の進む背後にネモ隊が合流するのが見えた。
「あいつらが運んできたの!?」
 よく見ると幾つかのデブリにノズルが取り付けられている。簡易的な衛生ミサイルの様な代物らしかった。大きなデブリに小さなデブリがワイヤーで連結されており、牽引出来る様になっている。
『私達を分断する為にわざわざ仕掛けを…』
「何でこんなちゃちい仕掛けでピンポイントに狙えるのよ!これじゃ軌道修正なんて出来ない筈なのに!」
『…あいつか』
 ネモ隊の最後尾にレドームを搭載した機体が付いていく。見るからにデータ収集や通信機能を強化されているのがわかる。
「あれよ!最後の1機!」
 気付いたものの後の祭りだった。今からデブリを掻い潜ったのではもう追いつけない。

793◆tyrQWQQxgU 2020/02/28(金) 16:01:57.68ID:98Jcq17H0
「くそ!くそ!」
 手当たり次第にデブリを砕く。
『不味いわね…。いくらニュンペーでもあの敵全てを捌くのは無理よ。私達がこうも足止めされたんじゃ…』
『いや、まだ方法はある』
 そう言ってソニック大尉が指し示したのは、護衛していたコロニーだった。
「あれが何なのよ!このままじゃ核パルスも破壊されちゃう!」
『落ち着け。焦っても筋肉は育たん』
「何なのよほんとに…」
『まあ聞け。大した事ではない』
 オーブ中尉は肩を落とし次の言葉を待つ。今は彼の作戦を聞くより他に選択肢は無かった。

30話 苦肉の策

794通常の名無しさんの3倍2020/02/29(土) 11:23:38.42ID:hwNtXCly0
乙!

795◆tyrQWQQxgU 2020/03/03(火) 00:01:31.35ID:v0Qdf/Si0
>>794
いつもありがとうございます!
また投下しますんでお楽しみに!

796通常の名無しさんの3倍2020/03/07(土) 13:58:56.48ID:UCYNFzkY0
お疲れ様です!

アトリエのNT観はF91の時代に通用するやつですね。
これで新生ネオジオンにでも入ったら「何があった?!」ですよw
しかしロリコンは自己申告なのか......スクワイヤ少尉、こんな男と解り合うことはありませんぜ(爆)

互いの出自で小さくヒビの入りそうなフジとワーウィック(フジファブリックではないw)。
今はコロニーという大きな敵に一緒に戦ってますが、果たして彼らは和解できるのか......まぁ双方ティターンズ堕ちはしないでしょうけど。
ティターンズ側の内通者の話が出て、(当然ながら)スクワイヤも止めるという点で合意。なんかこの感じ、いいですね!

さてウィード旗下アレキサンドリアはPMX系装備を受領、と。
実質旧ジオン機のガルバルα(オーブ機)にメッサーラのブースターとは、攻めましたね。
ここでマッチングすれば以降のティターンズ系にも合わせていけそうなわけで...
特性としてはシュツルム・ディアスやVダッシュに近そうですが、現時点ではまだまだジャジャ馬の模様。
そういえばオーブ機はボックス・ビームサーベルとのことですが、両方ともそれで二刀流にしているのでしょうか?
ソニックのγ(ガンマ)は......動けるデブに乗る筋肉もりもりマッチョマン、濃いですねw
ドレイクのβラッチ多用モデルが最も生き残りそうですね、バーザムの変なライフルなんかもいざって時に使えるかと(笑)
しかし友軍のマラサイ、仮にも旧主役機なのに...パイロットってやっぱり大事ですね。

しかし、コロニー落としを批判する一方で似非衛星ミサイルを使うフジ中尉、地味に腹黒では?
ガンダムで言っても仕方ない気がしますが、「破片を飛ばすなよ」と言われている戦場に大量のケスラーシンドロームの種を投入するわけで
仮に他のコロニーにでも跳んだら迎撃で落とし切れるかどうか...ある意味エゥーゴらしいかも(苦笑)

では手洗いうがいなど気をつけて、続きを楽しみにしてます!

797◆tyrQWQQxgU 2020/03/18(水) 10:46:09.16ID:nuO8ydDJ0
>>796
いつもありがとうございます!

一般的にはNT論なんてそんなものだと思うんですよね、一部の人間にしか認知されてないと思いますし。

エゥーゴの面白いところは、地球連邦であり反地球連邦であり、その上ジオンの人間も居るってとこなんですよね。
そのエゥーゴが同じ連邦内のティターンズと内ゲバやってて、アステロイドベルトからアクシズまでやってくるという混迷ぶり…。
それで裏切るやつまで出てくる訳ですから、その中で信じられるものって何かあるの?というのもテーマの1つです。

ティターンズって機体の繋がりが滅茶苦茶なので、ミッシングリンクを考えるのは楽しいです。AOZみたいな企画が立ち上がるのも納得です。
ジュピトリス系列はあまり触れられていない印象なので、そこに切り込んでみた次第。

いよいよって時の為にこの手の兵器はあるだろうと思いました。
大気圏が無い月だとそのまま破片が降ってくるかと思いますが、フジ中尉ならある程度計算した上で運用してると思います!笑

798◆tyrQWQQxgU 2020/03/18(水) 10:47:57.12ID:nuO8ydDJ0
>>797
あとオーブ機は両手ともボックスタイプのビームサーベルです。
篭手みたいな形をイメージしてます!

799通常の名無しさんの3倍2020/05/02(土) 07:07:56.88ID:NWG27T9L0
ご無沙汰してます!
ふとエゥーゴ側の制服が気になったのですが...

ワーウィック→サエグサやシーサーが着ていたようなチョッキ+シャツ
フジ→カツが着ていた緑系
スクワイヤ→レコアが着ていた露出の少ない方
グレッチ→グレーの正規軍服、前を止めずに着崩してる感じ(ヘンケン用だと襟から下が開かないんですよねw)

おおよそこんなところでしょうか?
ワーウィックはカミーユみたいにするほど青くないし、かといって連邦グレーを着こなすのも変かとこうしましたw

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