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宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど
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0001通常の名無しさんの3倍
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2019/07/24(水) 00:50:40.43ID:XfFrIQoe0
小説書いたこともなければスレッド建てるのも初めてなんだけど、もし誰か見てるなら投稿してみる
0400◆tyrQWQQxgU
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2019/09/18(水) 14:55:36.16ID:HyF4PF3W0
 次の戦地は恐らくニューギニア基地だ。この地域において我々の確固たる地盤を築くには避けては通れない攻略戦。その為に出来る事を再び考える必要がある。
 この面前に広がる空と海の境界線は、どれだけの命を吸えば穏やかになるのだろうか。私はその狭間で混じり合う様々な思惑に目を細めていた。

45話 空と海の境界線
0401◆tyrQWQQxgU
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2019/09/18(水) 14:57:35.24ID:HyF4PF3W0
しばらく更新してませんでしたが、文自体は書いていたので一気に投下してます!読みづらいかもです…

pixivも追って更新するでよろしくお願いします!
0402◆tyrQWQQxgU
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2019/09/18(水) 19:18:01.03ID:HyF4PF3W0
pixiv更新しました!
https://www.pixiv.net/novel/series/1155468

一気に放出したので書き溜めている量がだいぶ減りましたが、引き続き更新していくのでよろしくお願いします
0403◆tyrQWQQxgU
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2019/09/19(木) 21:00:51.74ID:5nWjv+Bq0
 バッカス少佐が戻ったのは、皆が作業を再開して程なくだった。
 少佐の想像以上に手酷くやられており、損傷著しいペイロードでは通常の着艦すらままならなかったがどうにか格納庫まで機体をつけた。サドウスキー大尉が出迎える。
「少佐!ご無事で何より」
「大尉もな。皆に任せてしまって済まなかったね」
「いやいや、それぞれ任された務めを全うしただけですよ。して、敵の動きはどうでしたか」
 格納庫を2人並んで歩く。少佐は先程の戦いを簡単に伝えた。
「ガルダ級を強襲した部隊が敗走してきた時、私とエゥーゴの部隊で迎え撃ったのだが…。いや、奴らの方が上手だったと言う他ないな。
 敵はとても戦える状態とは思えなかったが、我々も油断があったのだろう。いい様に掻き回された挙げ句取り逃がしたよ」
「そうでしたか…。致し方ないですな」
 サドウスキー大尉が腰に手をあててうつむいた。
「済まない」
「我々もあわやというところをワーウィック大尉に助けられましたから。その場で仕留められなかったのはおあいこです。それと…」
0404◆tyrQWQQxgU
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2019/09/19(木) 21:01:22.80ID:5nWjv+Bq0
 格納庫から通路に続く道の入り口で大尉が足を止める。
「…スギ艦長が亡くなられました」
「…!」
 言葉が出てこなかった。如何に壮絶な攻防があったかはこの艦内の惨状が全て物語っていた。
「敵が一時的にブリッジを占拠しまして。こちらの突入時、狼狽した敵の銃弾で…」
「…そうだったか。よくその状況でここまで持ちこたえてくれた」
「我々MS隊が帰投した時には既に…。今は皆復旧作業に従事してくれています。全体の指揮はワーウィック大尉が代行していますが、ブリッジまで行かれますか」
「そうする。サドウスキー大尉も無理はするなよ」
「ご心配なく!伊達に修羅場は潜っちゃおらんですよ。…では、私も格納庫の復旧指揮を取っておりますので、これにて」
 サドウスキー大尉は踵を返すと、大声で何やら指示を出しながら格納庫へ戻っていった。少佐はブリッジへと向かった。
0405◆tyrQWQQxgU
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2019/09/19(木) 21:02:01.77ID:5nWjv+Bq0
 ブリッジに到着するとワーウィック大尉がオペレーターと何やら話している様子だった。
「大尉、今戻った。世話をかけたな」
 気付いたワーウィック大尉と握手を交わす。
「お待ちしておりました少佐。…事情は聞かれましたか」
「ああ。皆よく戦った。だからこそスギ艦長も安心して逝けたはずだよ」
「そう思いたいですね」
 ワーウィック大尉は遠い目で空を眺めた。再び少佐の方に向き直り、続けた。
「これより本艦は補給線の維持を後続に任せて基地まで後退します。よろしいですか」
「了解した。大尉をこちらに寄越して正解だったね、助かったよ。ジオンの連中ともうまくやれた様だな」
「ありがとうございます。おかげさまでどうにか…。先程ジオン残党からこの戦域における宣戦布告がなされたのも確認しています。
 前線で今頃ティターンズとやりあっているところでしょうね」
「後から色々言われるかもしれんが、まあ大丈夫だ。間違ったことはしちゃいない」
「上層部にもお口添え頂ければと思います…。ジオンの旧友達も、彼らの意志を突き通してくれました」
「勿論上の奴らにはつべこべ言わさんつもりだ。…さて、皆に私から後退の旨を伝える。大尉も1度居住区の方を見てきて欲しいのだが、頼めるか」
「はい。行ってまいります」
 そういうと大尉は足早に立ち去った。彼の伝手が今回は役に立った。
 正直なところ独力で奇襲を抑えられなかった悔しさはあるが、これも敵の敵は味方というやつだ。今は使える戦力を惜しんでいる時ではない。
0406◆tyrQWQQxgU
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2019/09/19(木) 21:03:06.41ID:5nWjv+Bq0
 伝達も済ませ、艦を基地へと向けた。ガルダ級はどうにか航行出来るだけの能力が残っていたが、基地に収容後はしばらく戦線へ復帰できまい。
 これも戦争だ。皆が皆生還できる訳ではないし、少佐自身もいつ何があるかなど分かるはずもない。とはいえ、大黒柱を失ったこの艦の傷が癒えるまでには相当な時間を必要とするだろう。
 しばらくしてベトナム基地が見えてきた。行き場のない悲しみと疲弊がこの艦を包み込んでいた。

46話 行き場のない悲しみと疲弊
0407通常の名無しさんの3倍
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2019/09/20(金) 05:06:11.72ID:6mzjxd7a0
地球のジオン残党はエゥーゴの協力者として登場させたか
あとはアクシズ軍がどんな登場するかに期待

更にZガンダム本編では終盤にティターンズに脅迫(?)されて協力させられていたジオン共和国のムサイとかもいたんだがあれは詳しい経緯が不明なんだよな
実はジオン系はエゥーゴ、ティターンズ、アクシズ全ての勢力にいたという裏事情
まあジャミトフは地球至上主義を唱えながらアクシズと手を組もうとしたり本末転倒な事やってるんだけど
0408通常の名無しさんの3倍
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2019/09/20(金) 06:49:23.21ID:t9zRJr/y0
ジャミトフの目的はアースノイドを無理やり宇宙に上げることだから、手段はわりとどうでもよかったりする
0409通常の名無しさんの3倍
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2019/09/20(金) 08:01:32.19ID:6mzjxd7a0
>>408
そう考えると地球至上主義に共感して戦っていたティターンズ将兵とジャミトフとの間には決定的な確執があるんだよな
実際問題アクシズと組もうとしたりダカール演説で完全に否定されてジャミトフもバスクも死んだあと外様でスペースノイドのシロッコに付き従うなど残されたティターンズ将兵達はどんな信念でエゥーゴと戦ったのやら、、、
0410通常の名無しさんの3倍
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2019/09/20(金) 17:39:41.35ID:y3VJ8ekO0
>>409
もう信念とかそんなんじゃなくないかな?
狂気のまま勝ち抜いて地球の覇権を握りに行くか、冷静に戦い抜いて何処かへ逃げきるか
あまり理屈で考えすぎて壊れた奴までいたかもしれない
0411通常の名無しさんの3倍
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2019/09/20(金) 17:44:11.32ID:y3VJ8ekO0
そう考えると
末期のティターンズこそが、あの三竦みの中で一番「君は生き残ることが出来るか?」を地で行ってたのかもしれないね...
0412通常の名無しさんの3倍
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2019/09/20(金) 18:02:17.02ID:SIxd/87M0
ZZでは登場こそしなかったがアクシズ軍に亡命したティターンズ将兵もいたそうだしな
アクシズでもすんなり受け入れられるもんでも無いだろうに
本末転倒どころじゃ無いわな

ダカール防衛戦でアッシマーのパイロットやってたアジス・アジバ中尉はダカール演説を聞いて改心した後どうしたんだろうな?
俺の脳内では同僚仲間とカラバに行ったと保管した
エマみたいな事例も普通にあるしな
0413通常の名無しさんの3倍
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2019/09/20(金) 19:46:41.37ID:y3VJ8ekO0
将兵こそ出ちゃいないけど、ハイザックやマラサイを流用してる描写はあったね
ガスL/Rも純粋にアクシズ製だったかどうか
0414◆tyrQWQQxgU
垢版 |
2019/09/22(日) 16:14:23.02ID:/uldjwPh0
グリプス戦役は色んな勢力が複雑に絡むので色々考察が捗りますね!

ジャミトフの思想の行き着くところが結局のところブレックス達と近い部分もあったり、現場のティターンズ末端は実はジャミトフの考えと真逆のスタンスな部分もあったり…単純な残党狩り組織ではないっていうのがまた面白いですね。
エゥーゴも連邦組織の一部なのに反地球連邦組織を名乗ってますしね(戦役後はティターンズが反地球連邦って言われたりするのも面白いですが

結局はそれぞれの個人的な信条のぶつかり合いに終始するところが、宇宙世紀の広い世界観をより際立たせてるのかなとも感じます。
少しでも掘り下げていけたらと思うので、引き続きお楽しみください!
0415◆tyrQWQQxgU
垢版 |
2019/09/22(日) 16:16:41.91ID:/uldjwPh0
 傷付いたガルダ級が基地へ到着してしばらくした頃、エゥーゴがティターンズ主力を敗走させたとの知らせが入った。
 私はMSを整備しているドックでその報告を聞いた。十分な設備を備えた基地内へと機体を移し、本格的な整備を行っていた。
「ヴィジョンがいないとなるとなかなか捗らないな」
 サドウスキー大尉が額の汗を拭いながら言った。ベトナムの気候は宇宙生まれの私にとっても未だに慣れない。湿気と気温が体力を奪う。
「彼はしばらく安静にしておかないといけないからな。とはいえティターンズが一時撤退したとなれば、今はきちんとした整備が出来るいいチャンスだ」
「確かにな」
0416◆tyrQWQQxgU
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2019/09/22(日) 16:17:27.02ID:/uldjwPh0
 ティターンズとエゥーゴ・カラバのベトナム基地を巡る戦いはエゥーゴ・カラバの勝利で幕を下ろした。
 ジオン残党によるティターンズへの宣戦布告もあり、敵はこの地域での影響力を失ったといっていい。
 ニューギニア基地の喉元に位置するこの拠点を叩き損ねたこの戦い、ティターンズにとってかなり手痛い敗戦である。
 逆に我々は敵の援軍を阻む事に成功した訳だ。あとは本命であるニューギニア基地を抑えることさえ出来れば、この東南アジア戦線の勢力図は大きくエゥーゴ・カラバへと傾く。
 次こそ本当に負けられない戦いとなるだろう。

 それぞれの持ち場で作業が落ち着くと、皆ガルダ級の元へ集った。クルーが一通り揃ったところで棺が運ばれてくる。スギ艦長との最後の別れだった。
「大変な功績を残された方だ。彼の任務遂行により救われた命は数え切れない。皆もその温厚な人柄はよく知っているだろう」
 バッカス少佐がクルー達へ語りかけていた。クルーの殆どが私よりも艦長との付き合いは長かったはずだ。バッカス少佐やサドウスキー大尉に至っては一年戦争の時からの縁と聞いている。
0417◆tyrQWQQxgU
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2019/09/22(日) 16:18:02.10ID:/uldjwPh0
 順に献花し、涙を流す者もいれば静かに笑いかける者もいた。全員の挨拶が終わるまで待ってから、私とアトリエ中尉、そしてメアリーの3人で艦長の元へ行った。
 メアリーは何があったのかは理解しつつも、まだ実感が湧かない様だ。貰った飴玉の包装で手遊びしている。
「あなたには本当にお世話になった。艦はどうにか帰還できましたよ」
 私は安らかな艦長の表情を眺めながら語りかけた。
「…俺達、本当にここでエゥーゴに戻って良いんだろうか」
 アトリエ中尉がこぼした。私もそれを考えているところだった。
「掛け合ってみるよ。せめてニューギニア基地攻略まではこの部隊で戦いたいのが私の本心だ」
「そうだよな。こんな半端なとこで投げ出したくねぇよ俺も」
「あたしはどうなるのかな」
 メアリーが私達を見上げた。
「そうだな…ガンダムの強奪から研究所も不思議と大人しいが、まだ追手は来ると考えていい。どう思う?中尉」
「こいつの世話も大変だからな。他のやつに預けると何起こすかわかったもんじゃねぇよ」
「あたしが居ないと寂しいくせに」
「うるせえよ」
「…あたし、もうしばらく一緒に居たいわ。おじいちゃんの艦は皆で守ったもん。あたしだってこれからも力になるはずよ」
「一緒に相談してみる。メアリーの気持ちも尊重したい」
 挨拶を済ませ艦長の元から離れる。するとメアリーが思い出した様に再び艦長へ駆け寄った。
「これ、持っていってね。あたしこんなのしか作れないけど」
 飴玉の包装で作った赤い鳥の折り紙だった。
0418◆tyrQWQQxgU
垢版 |
2019/09/22(日) 16:18:33.22ID:/uldjwPh0
「長らく軍に所属され、戦いの日々でありました。今はただ、ゆっくりお眠りください」
 誰から始めるでもなく、自ずと皆敬礼した。広大な海へと棺が流れていく。この戦いの果てに我々は何処へ行くのだろうか。ぼんやりとした思考を巡らせながら棺を見送った。

 見送りが済むと、皆元の作業へと戻っていった。バッカス少佐が私に声をかける。
「上層部とはジオン残党の件はうまく話がついたよ。事情を知らん者達には他言無用だがね」
「ありがとうございます。おかげさまで。…私やアトリエ中尉、それからメアリーの今後ですが」
「ああ。それなら心配要らんよ。本人次第ってことになってる」
「それであれば、このまま残留させてはもらえんでしょうか。今回の件にきっちり決着をつけてからエゥーゴに戻りたいのです」
「そう言ってもらえると我々としてもありがたい。二人の戦力はあてにしてる。メアリーもまだここでは落ち着けないだろうしね。
 研究所の動向もわからんが、前話した通り恐らくまだ降ろすべきではない」
「ありがとうございます。…しかし、ガルダ級はこれからどうされるので?」
 少佐と2人で歩を進めながら、眼前のガルダ級を仰いだ。
0419◆tyrQWQQxgU
垢版 |
2019/09/22(日) 16:19:22.16ID:/uldjwPh0
「補修と併せて大規模な改修作業に入るそうだ。アウドムラの影武者的な仕事ももう終えたし、ここらで独自の仕様に変更するらしい」
「そうでしたか」
「それでこいつに正式な命名を行うことになったんだが、私に任されてね。しかしどうも名前をつけるのは苦手なんだ…こ恥ずかしい」
 少佐が頭を掻きながら笑った。
「ガルダ級の多くは、神話に関連する名を冠してきたと聞きます。あやかりましょう」
「詳しいんだな大尉」
「うんちくが好きなもので。…赤い鳥…朱雀なんてのはどうでしょう」
「なんだそれは」
「四獣という中国に伝わる幻獣の一角、南方を護る不死鳥です」
「不死鳥か…それもいいな」
 死して尚蘇る不死鳥…。傷つき、主を失っても戦い続けるこの艦に相応しいと思った。中国大陸を横断し、この東南アジアの地で生まれ変わるにはおあつらえ向きの名だった。

47話 赤い鳥
0420通常の名無しさんの3倍
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2019/09/22(日) 17:32:53.17ID:TJ0UeVg60
お疲れ様です!

おっ、ガルダの名前 決まりましたね!
朱雀ですか...百式があることですし、漢字名というのも味があります!
和のイメージがある折り紙、やはりアジアの伝説の鳥であるガルダとの兼ね合いもベストマァッチ!に思えますね。
今後ともよろしくお願いします
0421通常の名無しさんの3倍
垢版 |
2019/09/25(水) 16:05:19.66ID:bmKL+zwk0
とても読みやすいですね 状況がすごく思い浮かべ易いと感じます
あまり無理をせずに楽しんで更新していってください でも、時間はかかってもいいので完結まで是非とも読ませて欲しいです
0422通常の名無しさんの3倍
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2019/09/25(水) 16:24:19.78ID:n1L2Z2qF0
ハヤト・コバヤシとか富野キャラを登場させてるから今後も絡ませる感じかな?
個人的にはカイ・シデンを出して欲しいがルオ商会との繋がりや経緯が一切不明なのよね
0426◆tyrQWQQxgU
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2019/09/26(木) 21:22:44.34ID:qi6b4+Mv0
皆さんレスありがとうございます!!!

お待たせしましたが、ガルダ級にようやく命名出来ました。
初めから名前をあげても良かったんですが、何かしらストーリーを絡めたかったのでこのタイミングで。
メアリーの出自やそれまでの経緯も踏まえての由来にできたかと思います。
0427◆tyrQWQQxgU
垢版 |
2019/09/26(木) 21:28:06.52ID:qi6b4+Mv0
なるべく情景の描写を挟むようにしてますが、わかりにくい時はぜひぜひご指摘ください!

原作のキャラクターも少し挟み込んでいきたいと思ってます。
今のところハヤトと、ベトナム基地到着時にしれっとモニター越しのウォンさんも出してます…w

もうじき10万文字を超えそうですが、まだまだ続きます!
とりあえずこの章はニューギニア基地攻略が最終決戦のつもりで書き進めているので、決着までお付き合いいただければ。

反響があれば何かしらの形でまとめなおしたいですね!今はとにかく書き進めます!!
0428◆tyrQWQQxgU
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2019/09/26(木) 21:29:45.86ID:qi6b4+Mv0
 ベトナム基地を巡る戦いからしばしの時間が経った。私は一通りの整備を終えてドックに待機する朱雀を見上げていた。

 ガルダ級朱雀はその修復、改修を終えて正式に我々の母艦となった。
 前回の戦いの反省から、格納庫周辺の火力を増強してある。対空砲火は勿論、後方の敵を想定した主砲級の大型メガ粒子砲を4基搭載。
 ペイロードは多少犠牲になったが、元々広すぎたくらいだ。ペイロードから直接の整備が可能になった点も他の艦にはないメリットと言える。
 前面にも大型メガ粒子砲を増設し、側面の副砲なども備え総合的な火力が増強された。敵地に入り込んでも十分戦える火力といえるだろう。
 旧ジオンのドロス・ドロワを想起する、さながら移動要塞である。

 問題は人員で、スギ艦長に代わる人材が見つからない為当分はバッカス少佐が艦長代行に就任することとなった。
 大規模な作戦前に右も左もわからない人間を連れてくるより賢明だと判断したようだ。
0429◆tyrQWQQxgU
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2019/09/26(木) 21:31:03.54ID:qi6b4+Mv0
「あれからよく立ち直れたもんだ」
 後ろからアトリエ中尉が声をかけてくる。彼も腰に手を当てながら私の横で戦艦を見上げた。
「手酷くやられたからな。私もここまで早く復旧出来るとは思っていなかったが」
「整備班の連中、ぶっ倒れる寸前までやってたぜ。設備や人員のあるでかい基地とはいえ、流石にこの規模の改修は大変だったろうよ」
 そんな話をしながら艦内へと入る。格納されたモビルスーツが立ち並び、まばらに散った整備士達がゆるやかに作業をしていた。
 我々モビルスーツ隊の機体も本格的な改修を行ったので、パイロットである私達も改めて確認に来たのだった。

 私のマラサイはティターンズが量産体制に入ったこともあり、カラバでもようやく純正部品での修理が容易になった。
 腕部も元に戻り、私の戦闘スタイルに合わせて両肩をシールドに換装した。中距離の近接戦が多い私には、敵の射撃なども防御出来る面が多い方が助かる。

「私もそろそろ新しい機体が欲しいな」
 冗談混じりに中尉を小突いた。
「俺のは大破しちまったからしゃーなし!マラサイはいい機体だろ?文句いうなって」
「いやいや、ガンダムには敵わんよ」
 アトリエ中尉のガンダムは相変わらずパーツが手に入らない為、共通規格を適用出来るような各部改修を行っている。
 失ったビームサーベルなども他機体から流用が効くようになった様だ。インコムをはじめとするサイコミュ関連の仕様も解析が進み、研究を兼ねたコピーパーツの製造が行われている。
 いくらかアナハイムも噛んでいるようで、当初から比べると整備が数段楽になった。本人としてはインコムがあと数基ほしいそうだが、複雑なシステムと絡む機器はそう簡単に増設出来るものではないらしい。
0430◆tyrQWQQxgU
垢版 |
2019/09/26(木) 21:32:09.46ID:qi6b4+Mv0
「お2人も来られたんですね。サドウスキー大尉と2人で先に来てました」
 我々に気付いたシェクター少尉が駆け寄る。
「お、少尉!オモチャ取りあげられちゃったんだって?」
 アトリエ中尉が意地悪く笑う。
「アーガマで使うんですって。Gディフェンサーにとっては栄転ですよ!僕が乗るより旗艦のパイロットに使ってもらった方が良いってもんです。僕は僕でまた新しいやつ乗りますよ」
 少尉は若干不貞腐れている様子でそう言った。

 彼は新しい機体を受領する事になっていた。Gディフェンサーはテスト運用を終えてエゥーゴへと配備、宇宙のアーガマへと送り届けられる。
 我々の隊はサポート機だけでは戦力的にも心許ない為、違う機体があてがわれるとのことだった。
 シェクター少尉の後ろで作業中のサドウスキー大尉が目に入る。アトリエ中尉が傍へ行き、2人でなにやら話し始めた。私と少尉はサドウスキー大尉の改修中の機体を眺めた。

 彼は借り物のガンキャノン・ディテクターを返却し、再び元のリックディアスへと乗り換えた。
 しかしやはりキャノン砲が恋しかったようで、本人きっての要望でテスト中のリックディアス2に採用予定のバックパックを搭載するなど、細部の修繕パーツを2のものにすることでリックディアス1.5とでもいうような機体になった。
 射撃による支援も行いつつ肉弾戦を好む大尉にはうってつけの改修になるはずだ。
0431◆tyrQWQQxgU
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2019/09/26(木) 21:32:43.82ID:qi6b4+Mv0
「揃ったか!さーて、シェクター少尉の新しい機体のお披露目だぜー?」
 我々パイロット達の前にヴィジョンがやってきた。
「もう怪我は大丈夫かよ?」
 アトリエ中尉が気遣うが、ヴィジョンは全く気に留めない。
「大したことはねえ!大げさな連中が寝かしつけてくるからありがたく食っちゃ寝してただけだ」
 そうは言いつつも体力的には万全ともいえない様で、表情はいつもより険しい。
「全くタフなおっさんだぜ。そんで少尉の機体ってのは?」
 サドウスキー大尉が腕を組みながら目を輝かせている。
「お前こそタフなおっさんだろうが。皆こっちにきてみろ」
 ヴィジョンに連れられてペイロードを進む。何やら青緑の機体が見えた。
0432◆tyrQWQQxgU
垢版 |
2019/09/26(木) 21:33:35.20ID:qi6b4+Mv0
「こいつだ!この職場は面白い試作機ばっかりくるからやめられねぇよ!…機体名はメタス改。遂にうちにも可変機が来たわけだな。いじり甲斐がありそうだ」
 納入されたメタス改はあちこちにテープで留められたカバーなどが散見され、まさに新品といった様相だ。大きな背負いものが目を引く。
「これが僕の機体なんですね!凄い…!」
 シェクター少尉がはしゃいでいる。サドウスキー大尉も感心しながら機体を眺めていた。
「可変機ってことはこれ変形するんだな。いまいちイメージ沸かねぇ」
 アトリエ中尉が首を捻っている。確かに航空機の様な形状の部位は見当たらない。

「ちゃんと変形するぜ?お前らアナハイムのZ計画って知ってるか」
 頷く中尉をよそにピンときていない私を見て、ヴィジョンが得意げに続ける。
「Z計画の機体はリックディアスが1番有名だろうな。元々ガンマの名を冠した機体だが、同じ様にギリシャ文字をあてがった機体が後にも続く。そうやって今も開発中の機体群の総称だ」
「これもその内の1つってことですか」
 私も口を挟む。
「そうだ…まあ派生ってとこだがな。Zガンダムを作る過程で作られた変形試験機メタスの改修機体だ。
 それこそこないだまでサドウスキー大尉が借りてたガンキャノン・ディテクターの従兄弟みてぇなもんだ」
 そういいながらヴィジョンはシェクター少尉に資料を渡す。
「これ読んどけ少尉。結構勝手が違うから勉強しとくんだな」
 ヴィジョンは我々の元から離れると再び機体を弄り始めた。少尉は資料をめくりながらふむふむと口元に手をあてている。サドウスキー大尉もそれを覗き込む。
0433◆tyrQWQQxgU
垢版 |
2019/09/26(木) 21:34:18.71ID:qi6b4+Mv0
「なんつーか…」
 アトリエ中尉が艦内を見渡しながら口元を綻ばせていた。
「どうかしたか」
「いや。色々あったけど、次の作戦がこれまでの総決算になるんだなと思うと…何かワクワクしてきてよ」
「ふふ。わからんでもないな」
 私も中尉と共に艦内を見回した。2人でここに来ていくらか時間が経った。本当に色んな事があったが、全てはニューギニア基地攻略でケリがつく。
 失ったものと得たもの。どちらが多い少ないなどそういう事ではないが、そうやって自分の中で新陳代謝を繰り返しながら行き着く先に何があるのか。
 私も中尉の言うように、何かが変わっていく実感と予感を強く感じているのは事実だった。

48話 失ったものと得たもの
0434◆tyrQWQQxgU
垢版 |
2019/09/26(木) 21:56:43.64ID:qi6b4+Mv0
遅くなりましたがpixivも追いつきました!
遡って読む分にはこちらのほうが便利だったりするので是非読んでみてください。

https://www.pixiv.net/novel/series/1155468

どうも既に10万字超えてたみたいですね…w
0435◆tyrQWQQxgU
垢版 |
2019/09/26(木) 23:22:19.77ID:qi6b4+Mv0
 惨敗。アイバニーズ少佐とその部下達は、大きく敵地を迂回してニューギニア基地へと向かう母艦の中、ブリーフィングルームの重苦しい空気と共に待機していた。
 ストランドバーグ中尉と僚機を失い、残った面子も機体は中破した。まともに使えそうなのはギャプランくらいで、他の機体は廃棄せざるを得ない程の損傷だった。
 奇襲そのものは成功したものの、敵の予測を大きく裏切る事が出来なかった。
 迎撃を許し、どうにか押し込んでいたところでジオン残党の増援である。脱出出来たのが不幸中の幸いと言っていいだろう。
 一時的に勢いがついた前線はジオンの宣戦布告もあり再び押し返され、結局敗走した。もう少し撤収が遅ければアイバニーズ少佐達の回収も出来なかったと思われる。その位ギリギリの戦いだった。
0436◆tyrQWQQxgU
垢版 |
2019/09/26(木) 23:22:43.92ID:qi6b4+Mv0
「次の手はどうされますか」
 スペクター大尉が口を開いた。ビー少尉は眠るように固く瞼を閉じ、腕組みをして俯いている。
「相手に立て直す暇を与えたくはないが、こちらの方がダメージは深刻だ。恐らく敵の方が先に動くだろうな」
「先手を許すのですか」
「後手の先手というやつだ。こないだカラバ・エゥーゴの連中がしたようにな」
 少佐がそういうと、スペクター大尉は唇を噛んで黙った。
「今度はムラサメ研究所にも援軍を出させる。奴らの不手際もあったからな…断れまいよ。オーガスタ研究所からも補給があるそうだ」
 そこまで言って、少佐はその場を後にした。
0437◆tyrQWQQxgU
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2019/09/26(木) 23:23:18.71ID:qi6b4+Mv0
 執務室へ入ると、大量の呼出履歴に目をやる。フェンダー少将からだった。これだけの敗戦ともなれば無理もあるまい。少佐は仕方なくフェンダー少将へ通信を試みた。
『やっと繋がったか。何をやっていた』
 案の定直ぐに通信が繋がる。不快感を露わにしたフェンダー少将は、明らかに冷静さを欠いているようだった。
「申し訳ありません。現場も現場で事後処理がありますので」
『わかっているとも。言いたいのはそういう事ではない』
「と、言いますと?」
『戯れるな!貴様らは何をやっていたのかと言っているのだよ!奇襲を読まれていたのだろう!他にやりようは無かったのか!』
 フェンダー少将はモニター越しに机を拳で叩いていた。
「最善は尽くしましたが…あの戦力差では如何ともし難く」
『まあ、ジオン残党も介入してきたようだしな…。奴らはこのニューギニア基地を叩きに来るだろう。ここを抜かれれば次は無いぞ、私もお前も』
「私は引き続き独自で動きます。邪魔が入らぬ様手配していただけますか」
『わかった。戦力増強の上で必要なことは何でも言え。ある程度の権限は持たせてやる。どうせお前ほど機敏に動ける人間は他におらん』
「ありがとうございます」
 少佐が頭を下げると、少将の溜息と共に通信が切れた。
0438◆tyrQWQQxgU
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2019/09/26(木) 23:23:41.10ID:qi6b4+Mv0
「ふん。私はあなたの様に座して死ぬつもりはない」
 少佐は1人呟いた。
「…コックピットでも少佐はお立ちになるので?」
 後ろからスペクター大尉の声がした。
「ノックくらいしろ」
「すみません、急ぎだったもので」
 大尉が改めて敬礼する。流石に彼も特務部隊の人間だ。悟られずにこの部屋に入るなど容易いだろう。しかし何故…。
「…それに私は暖かいベッドで死ぬつもりだ。コックピットで死ぬなど御免被る」
「いやはや、失礼致しました」
「用件は?」
「敵の先遣隊が動き始めたとの事です。こちらも防衛ラインは構築済です」
「やつらも動くのが早いな…。わかった、各自持ち場で待機するよう伝えろ。詳細を確認したら追って指示を出す」
「かしこまりました」
 そういって大尉は踵を返す。また部屋は少佐独りになった。
0439◆tyrQWQQxgU
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2019/09/26(木) 23:24:13.05ID:qi6b4+Mv0
 エゥーゴ・カラバも補給が済んだと見える。ジオン残党の牽制もあり、援軍らしい援軍は見込めない戦いになりそうだった。
 乗機のジムクゥエルも今回の作戦で使用できるか怪しいところだ。ロングレンジライフルの直撃を受けた上半身は特に損傷が深刻だった。
改修してきたとはいえ、発展目覚ましいMSの機種変換の流れに置いていかれていた感も否めない。
 少佐自身はどうだろうか。この時代に取り残されまいと、もがいているだけではないのか。

 その答えはこの戦いで明らかになる筈だ。不穏な感覚を振り払い、執務室の照明を落とし扉を閉めた。

49話 暖かいベッド
0440通常の名無しさんの3倍
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2019/09/27(金) 10:03:35.46ID:ITmsAPzH0
水中戦が見たいけど
ジオン残党はズゴックとかあるだろうけどティターンズはマリンハイザックくらいしか無いんだよな
連邦軍にアクアジムとか潜水艦とかで協力させるくらいかな
0441通常の名無しさんの3倍
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2019/09/27(金) 15:31:44.72ID:Fd1FKRt+0
一応、>>254-256で水中戦はやってますよ
ティターンズ側も改造ザクマリナーとか持っているようです
メタスマリナー出したら時系列が狂いますね...w
0442通常の名無しさんの3倍
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2019/09/27(金) 16:48:38.87ID:lD2SjP8g0
ズゴックやザクマリナーをティターンズ側で運用する展開にしたのか
主人公は元ジオンの人間だよな?

0083のジオン残党のゲイリーみたいに母国のザクを鹵獲運用されていることを嘆く台詞回しでも欲しかった
0444通常の名無しさんの3倍
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2019/09/28(土) 01:44:46.86ID:JBe9IeU60
マラサイってギレンの野望とかGジェネでは水中適性×だった様な?、、、ゲーム設定だからどうでもいいけど
0445◆tyrQWQQxgU
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2019/09/28(土) 09:58:35.13ID:lIBTn0in0
意外なところで反響が…!水中戦ですか!
ジェリドの乗ってた機体がジャブロー降下してましたし、準備さえしておけば水中でも戦えるかなぁと(水深はさておき、アマゾンに行くのに水中戦を全く想定してないとは考え辛い)。

ティターンズ側の水中戦力ですが、連邦ってあまり頓着がないイメージですw
多分鹵獲機使い回すだろうなーと。
確かにワーウィック大尉は何かしらのリアクションさせた方が良かったですね…まとめ直す時にでも加筆すると思います!
0446◆tyrQWQQxgU
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2019/09/28(土) 10:02:54.74ID:lIBTn0in0
文字数の話ですが、何かでみた持ち込み原稿の最低文字数が12万文字だったんですよね。
多分このペースだと15万文字くらいはいく気がしてます。
長過ぎるのも良くないので、いい塩梅で締めれたらと思ってます!
0447◆tyrQWQQxgU
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2019/09/28(土) 10:06:41.43ID:lIBTn0in0
 ワン中尉は慌ただしい出港準備を終え、メアリーと共に居住区で待機していた。
 補給・改修を終えたガルダ級朱雀は、受領したMSや補給物資を載せて出港した。前線で戦う別部隊の補給を行いつつ戦線を押し上げるのが朱雀とその所属部隊の任務だ。今回は正面からのぶつかり合いになる。これまでで最も苛烈な戦いとなるだろう。

「やること何か無いかしらね」
 メアリーが暇そうに言う。スギ艦長がいなくなってから、彼女はよく働く様になった。
 掃除や洗い物、ちょっとした頼まれ事など、子供ながらもクルーの1人として一生懸命動いている。
「もう出港したし、あらかたやる事済んじゃったもんね」
 そういいながらワン中尉はメアリーの座るソファに腰掛けた。
0448◆tyrQWQQxgU
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2019/09/28(土) 10:07:10.70ID:lIBTn0in0
「…ところでさ」
 何やらニヤニヤしながらワン中尉の顔を覗き込むメアリー。
「どうかした?」
「メイってさあ…ベイトとスティレットのどっちが好きなの?」
 ワン中尉は思わず赤面した。そんな風に見られていた恥ずかしさと、聞かれてあながち間違っていないと感じた2択に自分の心が少し揺れるのを感じたからだ。
「何よそれ!」
「そのまんまよ。焦っちゃって!かわいいんだから」
「大人をからかうもんじゃないわよ」
 ワン中尉はついついはぐらかす。どっちが子供なんだかと我ながらおかしかった。
「ベイトもああ見えてしっかり者だし、スティレットは優しいしイケメンよねー」
「そんな事より仕事よ仕事!」
 ワン中尉は思わず席を立った。
「あらかた終わったって今言ったじゃない」
「む…」
「で、どっちが良いのよ」
 相変わらずメアリーはニヤついている。何だかアトリエ中尉に似てきた気がする…。
「私は…」
 そこまで言ったものの、やはり言葉は出てこなかった。それがまたこ恥ずかしくなって、ワン中尉は耳が熱くなった。再びソファへ乱暴に腰を落とす。
0449◆tyrQWQQxgU
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2019/09/28(土) 10:07:55.88ID:lIBTn0in0
「まあ良いけどさー」
 そういいながらメアリーは足をバタつかせた。
「…おじいちゃん居なくなって、あんな事すればよかったとか、あんな事言えばよかったとか、いっぱい出てきた」
 ソファの上で体操座りしながら、メアリーがスギ艦長の話を始める。
「あたし途中から乗せてもらったからそんなに沢山遊んでもらった訳じゃないけど、もっと助けてあげたら良かったなって。
 今からじゃ遅いけどここは今だっておじいちゃんの艦だから、あたしもできる事から始めたの」
「とても偉いわ。ほんとに」
 メアリーが頑張っているのはワン中尉以外のクルーもよく知るところだ。
「だからね、メイも今できることをすべきよ」
「言うとおりね」
「正直に、ちゃんと伝えなきゃ」
「…誰に?」
「あたしは知らないわ。教えてくれないんだもん」
 そういってメアリーは笑った。ワン中尉も釣られて笑う。
「そうね、進展あったらメアリーに最初に言うわ」
「約束よ?」
「もちろん」
 その後も2人で取り留めもない話を続けた。小さい頃の話、好きなモノや好きなこと…。メアリーは色んなことを話してくれた。
 ワン中尉を育ててくれた姉も、きっとこんな風に話を聴いていたのだろう。そう思うと懐かしい心地がした。
0450◆tyrQWQQxgU
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2019/09/28(土) 10:09:07.25ID:lIBTn0in0
 程なくして、艦内に放送が響いた。
『総員、第2戦闘配備。程なく敵基地空域に入る。それぞれの持ち場で待機せよ』
「行ってくるんでしょ?気をつけてね」
 メアリーが小さく手を振る。ワン中尉もウィンクで返した。
「またいっぱい話しましょうね。ブリッジに居るから、何かあればいつでも呼ぶのよ」
「わかった。多分呼ぶと思うわ」
 メアリーは何か感じているようで、少し大人しくなった。ニュータイプは第六感を働かせるというが、メアリーにもそれがある様だった。
「私にはメアリーみたいな感は働かないから、頼りにしてるわ」
「どうぞ頼って」
 そういってメアリーは笑った。この笑顔の為にも戦おう。ワン中尉の頭をまた姉の姿がよぎったが、振り払おうとは自然と思わなかった。

50話 姉の姿
0451◆tyrQWQQxgU
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2019/09/28(土) 10:16:19.60ID:lIBTn0in0
 戦闘配備の指示を受けて、私達パイロットはコックピット内で待機していた。今回は敵の迎撃を抑えるのは別の隊の仕事だ。
 我々は直接基地を叩ける距離まで待機し、基地近くで降下してから接近、破壊活動を行う。
 既に敵の防衛線に入り込み、カラバ・エゥーゴの各部隊が交戦状態に入った。朱雀も拠点として前線にいた。
『今まで暴れてただけに、待たされるとソワソワするな』
 サドウスキー大尉がモニター越しに笑っている。
『あんまり突出しないでくださいね隊長ー』
 アトリエ中尉が茶化す。艦長代理に就任したバッカス少佐に代わり、MS隊の隊長にはサドウスキー大尉が任命されたのだった。
『お前らちゃんと俺に付いてこいよ!少尉、機体の調子はどうか?』
 シェクター少尉のメタス改はMA形態で準備している。
『万全です。実戦に出さないとどんなものかわからない部分もありますが、上手くやりますよ』
『それでいい。お前ならやれるさ』
「大尉の方も調子は良さそうだな」
『完璧だよ。後はぶっ放すだけさ』
 全員コンディションは良好とみえる。
0452◆tyrQWQQxgU
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2019/09/28(土) 10:16:57.16ID:lIBTn0in0
 程なくしてバッカス少佐から通信が入る。
『そろそろだね。私が居なくても連携して動け。ここのところ個人プレーで回してる部分もあったが、今回は違う』
『ママが居ないと寂しいです!』
 中尉が相変わらずの調子で冗談を飛ばす。
『パパがいるだろうが』
 サドウスキー大尉まで乗っかる。思わずバッカス少佐も笑った。
『…一人も欠けずに全員で帰ってこい』
『『了解!』』

 前回のダメージもあってか、ティターンズの防衛線は完璧とは言い難い布陣に見えた。所々綻びが出来ており、先行した部隊が上手くやってくれている様だ。
 勝ちの勢いに乗ったカラバ・エゥーゴは士気も高く、基地に取り付くのは時間の問題だった。
 後部ハッチからの出撃。戦火飛び交う前線真っ只中だが、前線の部隊はよく敵を抑えていた。
 サドウスキー大尉のリックディアスを筆頭に、私のマラサイと中尉のガンダム、少尉のメタス改が続く。
『ガンダムとメタスで敵を引きつけろ!少尉がまずランチャーで血路を拓け。俺と大尉は先行して基地を目指すぞ』
『わかりました!…撃ちます。』
0453◆tyrQWQQxgU
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2019/09/28(土) 10:18:26.49ID:lIBTn0in0
 シェクター少尉のメタス改がハイメガキャノンで正面の敵を薙ぎ払う。数機まとめて撃破し、散った敵の合間をガンダムが縫う様に飛ぶ。
『ガンダム様のお通りだぜ!付いてこいよ雑魚共!』
 中尉が1機、また1機とライフルで撃ち抜きながら敵の注意を引く。敵にも情報が渡っているのだろう。先程までと動きが変わり、散っていた敵が隊列を整え中尉を追い始めた。
 サドウスキー大尉が支援砲火しつつ私はその側を固めた。戦況を見定めながら引き続き大尉が指揮を取る。
『よし、俺達は先に行くぞ。中尉達も適当なところでこっちに合流しろ!いけるか大尉』
「いつでも。二人も無茶をするなよ?」
『そっちこそ頼むぜお二人さん!』
 中尉のガンダムは我々の背後を護る様にライフルを構え直した。少尉のメタス改も敵を撒きながらそれを援護する。
0454◆tyrQWQQxgU
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2019/09/28(土) 10:18:52.18ID:lIBTn0in0
 私とサドウスキー大尉は前線の穴を抜け、目前に広がる敵拠点を捉えていた。高低差のある複雑な地形にかなりの数のトーチカや各種設備など、ティターンズがこれまでこの地を重要視してきたことが垣間見える。
 とはいえMSで接近するのはそれ程難しくなかった。殺気や覇気といったものが感じられない、ある種不穏な空気があるだけだ。
「抵抗が弱過ぎる気がする…」
 基地へ迫りながらサドウスキー大尉に疑問を投げた。いくら敵も連戦で疲弊しているとはいえ、近づくのが簡単過ぎる。
『…ジャブローのことでも思い出したか?流石にここで核みたいな大量破壊兵器を使うメリットは小さいと思うぞ』
「確かにな。だが、容易く上陸を許すからには何かある筈だ」
『それを確かめるのも俺達の仕事さ。何かあるとしても俺達が未然に防げれば本隊に影響を出さずに済む』
「…大尉の言うとおりだ。とにかく今は中尉達のお迎えの準備だな」
『そういうことだぜ』
0455◆tyrQWQQxgU
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2019/09/28(土) 10:19:53.80ID:lIBTn0in0
 流石に敵もそのまま上陸させる気は無い様で、防衛するMS達が視認出来た。ガンタンク2が複数、それに樹林の陰に潜むスナイパータイプのハイザック…。
 この分だといくらか掃除が必要そうだ。
「確認出来たか?」
『ああ。炙り出す!』
 リックディアスのキャノンが樹林に放たれた。転がるようにハイザックが出てくる。それを支援する様にガンタンクからの集中砲火が始まる。
『旧式共が張り切ってんなあ!』
 砲弾の雨をかいくぐりながら撃ち返すサドウスキー大尉。しかしまだこちらの射程距離とはいえず、若干精度に欠く。
 私も両肩のシールドで砲撃をいなしながらも、まだ攻めあぐねていた。
「近接格闘仕様だとこういう時辛いな」
『それでも距離を詰めちまうんだろう?』
「プレッシャーだな」
 それを聞いて笑う大尉の声を聞きながら確実に距離を縮めていく。敵がリックディアスの砲撃射程距離に入った辺りで、私はSFSのブースターを全開にした。
 察した大尉が敵の射線を砲撃で乱す。隙間を縫い、SFSをガンタンクの1機に突っ込ませ爆散させる。そのまま自機のバーニアで体勢を整えると、遂に私は敵地の土を踏んだ。
 近くに見えた別のガンタンクに向け、分割したナギナタの上部を下手で投げる。縦に回転しながら飛んだナギナタは、敵を頭から胸にかけて両断した。
0456◆tyrQWQQxgU
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2019/09/28(土) 10:20:21.96ID:lIBTn0in0
『一番乗りか!羨ましいな!』
 そう言いながら、私の背後に回った別のガンタンクをサーベルで切り払った大尉のリックディアスも搭乗したSFSごと着地する。
『あんたはSFSを捨て過ぎだ。帰りの事も考えろよ全く』
 呆れ気味に大尉が笑った。
「帰りは朱雀が拾ってくれるさ」
『そうならなきゃいけねぇのはごもっともで』
 先程炙りだされたハイザックがビームサーベルでリックディアスに振りかぶってきた。大尉は振り向きざまに敵の肘目掛けてアッパーを決める。
 関節から火花を散らしながら思わずサーベルを手放すハイザック。そのコックピットへ、リックディアスは追撃の正拳突きを繰り出した。
 強い衝撃でパイロットが失神でもしたのか、倒れた敵機はそのまま動かなくなった。
0457◆tyrQWQQxgU
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2019/09/28(土) 10:21:00.77ID:lIBTn0in0
『…敵が来るぞ』
 大尉の言うとおり、レーダーには複数の熱源反応。加えて、上空から確認したトーチカも可能な限り破壊しなければならない。
「中尉達はまだ来ないな」
『ぼちぼち来るさ。あんまり離れ過ぎると少佐に怒られるからな』
 ちらほらと上陸する部隊が現れ始めたが、まだ上空でも敵の抵抗は続いていた。朱雀がメガ粒子砲を放つのがここからでも見える。
『…尉!…が…!…』
 不意に通信が入った。距離が開いている上にミノフスキー濃度も濃くなってきたせいか確実な傍受が出来ないが、アトリエ中尉らしき声だった。
「どうした。何があった」
『…駄目だな、俺も聴き取れない』
 サドウスキー大尉も受信出来ていない様だ。

 程なくして、レーダーに現れた反応で私は事態を把握することとなった。

51話 血路を拓け
0458通常の名無しさんの3倍
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2019/09/28(土) 14:38:47.67ID:UyZB4/LJ0
>>445
ジオン出身のキャラクターやジオン残党を登場させるのであれば
ジオンの機体を敵国である地球連邦で運用されていたのを目の当りにしたら
やはりそれなりの反動行動や台詞があって当然よね

そのあたりを疎かにしなかったから0083は評価されている
0459◆tyrQWQQxgU
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2019/09/28(土) 16:17:55.77ID:BO3mEoVO0
>>458
確かに0083は特にジオン寄りの描写も多いのでその辺は気を遣ってる印象です

ワーウィック大尉の立ち位置はなかなか難しいんですよね、あくまでもエゥーゴ所属でありながらジオンでの体験ベースになってる部分もあって…ロベルトやアポリーとかと同じ感じです
彼らの場合後付込み込みでジオン出身って感じですが、ワーウィック大尉の場合は初めから設定が固まってるのでもう少し活かしたいですね!
0460通常の名無しさんの3倍
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2019/09/28(土) 21:38:02.25ID:MgoQRU9S0
>>445 , >>458
ジオンのトレードマークたるザクには皆思い入れがあるでしょうけど
水泳部なんて殆どオデッサ以降まで地球に残ってた連中しか見てないでしょうし
なんかこんなのも輸送したかな?くらいの曖昧な認識でも変ではないと思います
0461通常の名無しさんの3倍
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2019/09/29(日) 08:55:48.94ID:3mGpCw8a0
>>460
しかしザクマリナーもいたという
まあハイザックとか鹵獲ザクとか運用目的がジオン残党への恫喝とか挑発とか言われてるからな
アクトザクというのもあったな
0462◆tyrQWQQxgU
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2019/09/30(月) 17:07:40.48ID:b3n4q81Y0
>>460
>>461
特別な反応がなくても特に不自然とまでは思いませんが、反応があった方が物語に深みは増しますね!
細かな部分まで拾っていきたいと思っているので、そういった描写は注視して然るべきかもです
わかった上でスルーするのも選択肢ですけど、今回は見落としてた感ありますw
0463◆tyrQWQQxgU
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2019/09/30(月) 18:02:54.90ID:b3n4q81Y0
 敵の注意を引きながら初搭乗の可変機を扱うのは容易ではない。それでもシェクター少尉はうまく順応しながら機体を操っていた。
 メタス改は背負った大火力のハイメガキャノンを主軸に、両腕のビームガンやサーベルなどの充実した兵装で戦えるTMSである。
 アトリエ中尉のガンダムにも十分追従出来る機動力があり、これまでのGディフェンサーの様に支援へ徹することは勿論、更に幅広い連携が取れるようになっている。
「大尉達は無事に取り付けましたかね?」
『多分な。俺らもそろそろ合流したいところだが…』
 敵に追わせつつ、突出した機体から順に徹底して叩く。アトリエ中尉は手堅く確実に敵の数を減らしていた。ガンダム本体とインコムの連携、そこに少尉の援護も加わっている。
 敵はなかなか追いつけないでいたが、それでも2人は絶えず敵の砲撃に晒されていた。まだ数機のジム2が追いすがってくる。
0464◆tyrQWQQxgU
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2019/09/30(月) 18:03:59.57ID:b3n4q81Y0
『しつっこいんだよ!落ちろ!』
 痺れを切らした中尉が突如反転、敵の真ん中を駆け抜けた。ガンダムは虚を突かれた敵の正面から急接近し、1機を袈裟に斬り上げていく。
 迎撃しようとする別機を少尉が横から牽制する。乱戦になりかけたところで上手く切り抜けた中尉は、離脱間際にインコムでまた1機背後からコックピットを撃ち抜いた。見ていて胸がすく程の手並みだ。
「やっぱ上手いな中尉…。でもさあ…お前らそんなに好きかよ!ガンダムが!」
 尚も追う敵にメタスで距離を詰める。振り向かれるよりも早くMS形態へと可変すると、敵の腹を突く形でサーベルを差し込んだ。
 そのまま横へ切り払うと、MS形態のままキャノンを展開して放つ。1機は直撃し大破、残る1機も射線に接触して半身が溶解した。
『やるじゃねえか!やっぱお前を支援機に乗せとくのは勿体なかったな』
 そういいながら中破した敵をライフルで的確に撃ち抜いてとどめを刺すアトリエ中尉。どうにか敵の動きが沈静化してきていた。
0465◆tyrQWQQxgU
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2019/09/30(月) 18:04:21.08ID:b3n4q81Y0
『ぐ…!!』
 不意にアトリエ中尉が唸る。ほぼ同時に少尉も軽い目眩がした。以前にも感じたことのある不快感だった。
「中尉…!」
『お前もわかるみたいだな…。メアリーとガンダムMk-Wの影響かもしれねぇが、今回のは…』
「まさか」
 少尉が言い終わるよりも早く、基地の方向から機影が見えた。黒く巨大なそれには、もはや言うまでもない因縁があった。
「…サイコガンダム…!」
『追ってこないと思ったら、今度はお出迎えかよ…』
0466◆tyrQWQQxgU
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2019/09/30(月) 18:04:44.55ID:b3n4q81Y0
 ワン中尉からの情報共有で概要は把握していたが、いざ再び面前に現れると首を冷や汗が伝った。
「…エドワード。お前が帰ってくるわけじゃないのはわかってる…!」
 少尉は小さく呟いた。初めてサイコガンダムと接触した時、親友であり戦友だったエドワード・イーエスの命を奪われた。その事は今の今までずっと少尉に重くのしかかっていた。
『…あの時は済まなかった』
 静かに中尉が言った。
「中尉は何も悪くありませんよ。でも、やっぱりあの機体だけは」
『あいつを落とさなきゃお前の肩の重荷は下りないってか?』
「巡り合わせなんです。ここにやつが現れたのも」
『そうかもしれねぇな。…行くか』
 サイコガンダムはモビルフォートレス形態のまま前進を続けていた。このままだと朱雀と接触する。横槍を入れるような形で、2人はサイコガンダムへと迫った。
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2019/09/30(月) 18:05:22.73ID:b3n4q81Y0
『サドウスキー大尉!サイコガンダムが現れた!先にそっちを叩く!…くそ、繋がらねぇ!ミノフスキー粒子のせいか?』
 サドウスキー大尉達はもう上陸したのだろう。通信が困難になっていた。
「こりゃママに怒られますね」
『人間、怒られながら1人前になるんだぜ?…まあ、このまま基地目指すって訳にもいかねえさ』
 サイコガンダムは朱雀側でも確認出来た様で、主砲による迎撃が始まっていた。Iフィールドを展開している様だが、流石に直撃は避けたいのか、上手く躱している。
『残念ながら俺達の兵装はまたまたビーム主体だ。お前ならどうする?』
「僕なら…」
 通信中に突如、少尉達に気付いた敵機が攻撃してきた。少尉は敵の砲撃を躱すと、バズーカを構えるジム2の腕を切り落とした。
 中尉がすかさず武装を拾い上げ、うろたえる敵機をそのまま回し蹴りで蹴落とした。更にその僚機もインコムでカメラを潰すと、今度は少尉が武装をもぎ取る様にしてこれも海面へ叩きつけた。
0468◆tyrQWQQxgU
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2019/09/30(月) 18:06:07.76ID:b3n4q81Y0
「…こうするのが正解でしょうね。僕は不用意に斬りかかったりしたくない」
 奪ったバズーカを中尉へ手渡す。ビームライフルを腰へ装着し、2丁のハイパーバズーカを担いだガンダムはまたサイコガンダムの方を向き直した。
『うん、一理あるな』
「左様で」
『「ふふ」』
 2人は同じ様に鼻で少し笑った。

52話 言うまでもない
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2019/10/02(水) 18:15:49.42ID:78CJ4RI60
「くそ、駄目だな」
 朱雀の迎撃を躱しながら依然止まる気配をみせないサイコガンダムに、バッカス少佐が舌打ちしている。その傍らに立つワン中尉は、立案補佐としてブリッジにいた。
「ワン中尉。あの機体、確かに無人なんだな?」
 バッカス少佐は椅子から身を乗り出してサイコガンダムを注視している。
「はい。強化人間が外部から操作する形を取っていた筈です」
「今回はメアリー目当てなのか、ティターンズに駆り出されたのか…あるいはその両方か」
「この艦が狙われてるのは確かですね」
 最新とは言えないが、ワン中尉がこれまでに知り得た情報は共有していた。
 このサイコガンダムはニューホンコンに現れたものとは仕様が違う。
 本来コックピットを搭載する頭部には大型のサイコミュを搭載しており、予め登録された者の脳波を外部から受信する機能が強化されている。
 また、その頭部を守るために口とも言える場所に拡散メガ粒子砲を装備しているのも特徴だった。
0470◆tyrQWQQxgU
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2019/10/02(水) 18:16:14.31ID:78CJ4RI60
『待ってろ!今から強襲を掛ける!』
 アトリエ中尉のガンダムだった。シェクター少尉のメタス改も随伴している。
「中尉か!…待て、大尉達はどうした?」
 バッカス少佐が彼らの単独行動に気付いた。
『もう上陸してますよ』
「全く…!個人プレーはやめろとあれほど」
『あんなの見えたら朱雀を放っておけないでしょうが!お説教は帰ってから聞きますよ!』
 そういって通信は切れた。少佐が呆れた様に溜息をつく。
「…ワン中尉、すまんがあの二人は帰ってきたら修正だ」
「何で私にそれを言うんです」
 少佐がこっちを見てウィンクした。もう勘弁してほしい。
0471◆tyrQWQQxgU
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2019/10/02(水) 18:16:56.72ID:78CJ4RI60
 サイコガンダムの背後をとった中尉達が攻撃を始める。メタス改のハイメガキャノンが直撃するも、Iフィールドに阻まれた。
 しかしそれで注意が逸れたのか、方向転換したサイコガンダムは彼らの方へ砲撃を始めた。正面の拡散メガ粒子砲から雨の様にビームが降り注ぎ、取り付こうとする中尉達を阻んでいる。
 ガンダムもバズーカで応戦する。機体上部に数発命中するも、装甲を抜くまでは至らない。アトリエ中尉から通信が入る。
『ワン中尉は居るか!?』
「いるわよ」
 オペレーターと代わり、椅子に座るとモニター越しの中尉を確認した。
『あの機体のIフィールド発生装置は何処だ?』
「流石にそこまではわからないわね…」
『適当に撃ってても落とせねえぞこいつは…うおっ』
 サイコガンダムの砲撃を躱しながら反撃するだけでも骨が折れる様だ。このままでは埒が明かない。
「…!あの機体、ミノフスキークラフトを利用して浮遊してるけど、あの巨体だから補助翼がないと制御は難しい筈だわ」
『…なるほど。羽だな!それだけ判れば上等だ』
 アトリエ中尉が乱暴に通信を切る。流石の彼でもあまり余裕がないらしい。メタス改が注意を引きつけつつ、ガンダムで補助翼を攻撃し始めた。
 小回りがきかないサイコガンダムだが、ここまで大きいと取り付く側もかなり動き回らねばならない。高機動な2機が揃っていてようやくといったところだ。
0472◆tyrQWQQxgU
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2019/10/02(水) 18:17:20.85ID:78CJ4RI60
 ガンダムは1枚の補助翼を集中して攻撃している。側面を取るのは容易ではなく、メタス改が上手く敵を誘導しつつ狙う。徐々にだが、敵の飛行が不安定になってきている様だ。
「よし、こちらからも引き続き主砲で援護しろ。Iフィールド装備とはいえ直撃すれば無事では済まん」
 バッカス少佐が砲撃指示を出す。今の朱雀なら通常のMS隊くらい容易く落とせる火力がある。アトリエ中尉達が敵の足を止めてさえくれれば一矢報いることが出来るはずだ。
「ワン中尉!居住区から呼び出しが来ていますが…」
 オペレーターの1人が知らせてくれた。恐らくメアリーだろう。サイコガンダムの襲来を考えると、何かあってもおかしくない。
「行ってこい。ここは大丈夫だ」
 バッカス少佐が親指で後ろを指しながら言った。
「ありがとうございます。何かあればすぐに伝えます」
「頼むよ」
 現場に伝えられることは伝えた。踵を返すと、ワン中尉は居住区へ走った。
0473◆tyrQWQQxgU
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2019/10/02(水) 18:17:43.16ID:78CJ4RI60
「メアリー!」
 居住区の通路でうずくまるメアリーを発見した。手で頭を抑えながら、息も少し荒い。ワン中尉は側に行って肩を抱いた。
「お医者さん呼ぼうか」
「大丈夫よ。黒いのが来てるってわかって、それでちょっと頭が痛いだけ」
「でも…」
 遮るように立ち上がったメアリーは、心配するワン中尉の手を引いて歩き始めた。
「どこ行くの?」
「メイって、ロボット乗れる?」
「MSの操縦は最低限なら出来るけど…ってまさか格納庫行く気?ああ、だめだめ…」
 ワン中尉は足を止めメアリーを引き留めた。しかしメアリーは尚もワン中尉の手を強く引っ張る。
「今行かなきゃいけないのよ」
「危ないわ。ここに居て。お願いだから」
「皆が危険よ。黒いやつ、あたしを呼んでる」
「だからこそメアリーを守ってるんじゃない。その為に皆戦ってる」
 ワン中尉はメアリーに目線を合わせるように屈み込んだ。
「そんなのおかしいわ!あたしだって出来る事があるの!メイが来ないならあたしだけでも行く!」
 そういって手を振り払うと、メアリーは格納庫へと駆け出した。
0474◆tyrQWQQxgU
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2019/10/02(水) 18:18:24.43ID:78CJ4RI60
「もう!少佐に言いつけるわよ!…ほんとにもう!命令違反するとこまでアトリエ中尉に似てきたわね全く…」
 呆れつつも立ち上がり、急いでメアリーを追う。これまで敵襲はあったが、これほど彼女が焦っているのは初めて見た。
 ニュータイプ能力というものに何処まで信憑性があるのかは不明だが、少なくともメアリーは好き勝手に我儘を言う娘ではない。
 本当に何かあるのかもしれない。ワン中尉はとにかくメアリーを追いかけた。

53話 襲来
0475◆tyrQWQQxgU
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2019/10/02(水) 18:21:51.97ID:78CJ4RI60
 声が聞こえていた。メアリーは力の限り走りながら、その声の主を思い出していた。母である。メアリーはふと、朱雀に乗船するまでの事を振り返っていた。

 担当の研究員という立場であることもわかっていたが、メアリーは彼女が自分の母親であると知っていた。それを気付かせたのは顔立ちや距離感だったかもしれないし、日頃の何気ない仕草だったのかもしれない。
 彼女が母であると名乗ってくれることは無かったが、共に過ごした時間は忘れない。被験体8号としてそこに居続けることは幼いメアリーにとって辛いものだった。
 気をひこうと問題を起こしても、叱られるでもなくただ同じ毎日の繰り返し。
 そんな折、何の気なしに母が教えてくれた物語があった。上手くいっていなかった家族が、とある不思議な教育係によって変わっていく物語だ。
 メアリーは、その教育係から名前を貰って名乗ることにした。彼女の様に、不思議な魔法でこの生活を変えてみたかった。そして何より、母に名前で呼んでほしかったのだ。
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2019/10/02(水) 18:22:26.55ID:78CJ4RI60
 ある日、母はメアリーを連れて外へ出た。まだ日が昇りきらない明け方。いつもは越えることが許されなかった壁の向こうへと連れ出してくれた。
 限りのない空、遠くから近くから聞こえる様々な音。ハッとする緑と何処へ続くかもわからない道。そのどれを取っても、メアリーが自分の目で見たことのないまさしく架空の存在だった。
 駆け回り、寝そべり、空気を吸って匂いを嗅いだ。はしゃぐメアリーを見つめる母は穏やかで、そして何処か悲しげだった。その母は言う。
「あなたは自由なのよ。今日が特別なんじゃなくて、これがあるべき本来の日常なの」
「じゃあ、いつでも連れてきてくれるの?」
 メアリーの目は輝いた。
「違うわ。あなたは外の世界を知るべき。これからは施設ではなく、この外の世界で生きていくの」
 そう言われると不意に不安になった。確かに退屈はしていたが、いざとなるとまるで出て行けと言われているような気分だった。独りで何も知らないところへ行くのはいくらメアリーでも怖い。
「大丈夫よ。ちゃんと人に案内もさせるし、待ち合わせ場所をこのマップデバイスに入れておいたわ。私は…」
 そこまで言って母は言葉を濁した。メアリーはそれが意味する所を何となく察した。きっと一緒には来てくれないのだろう。
0477◆tyrQWQQxgU
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2019/10/02(水) 18:22:59.25ID:78CJ4RI60
「そこで何やってる!?」
 遠くにいる軍人と思しき男達がメアリー達に怒鳴った。母の目の色が変わる。母はメアリーに合わせてさっと屈み込むと目をしっかり見つめた
「行きなさい」
「でも…」
「行きなさい!メアリー!」
 初めてメアリーは叱られた。名前を呼ばれた。涙が溢れ出す。ぐっと背中を押され、メアリーはよたよたと走り出した。
 一瞬振り返り見た母の姿は何処か寂しげで、もう会えないような気がしたメアリーも悲しくなった。
「またね…ママ…」
 聞こえたかはわからない。だが、母の頬を伝った一筋の涙だけははっきりとメアリーの目に写った。
「ウェイブス研究員!こんなとこで何をやっているのだ」
 後ろで男の声がする。メアリーは走りながらもう振り返らなかった。何処ともわからないままとにかく走った。
 すっかり朝になり人通りのある街に出てきた時には、もう施設は随分遠いところの様に感じていた。
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2019/10/02(水) 18:23:28.89ID:78CJ4RI60
「あれ?」
 落ち着いた頃、母に言われたデバイスを取り出そうとしたが見当たらない。道中落としてしまった様だ。
 途方に暮れていた時、エレカーに乗った見知らぬ男性に声を掛けられた。
「君、1人かい?お母さんは?」
 パーマがかかった茶髪、落ち着いた雰囲気の男。今まで感じたことのない親近感の様なものを纏っていた。
「ひとりよ。地図無くしちゃって」
「そうか、俺も同じだ」
 車を降りた男は、メアリーの側に来ると微笑みかけた。
「大丈夫だ。君なら上手くやっていけるさ」
「?」
 不思議な人だった。メアリーのことを知っている様な物言いをする。しかし何か、暖かさの様なものを感じる男だ。
「行くところが無いなら案内しようか。知らない人について行っちゃ駄目かもしれないが」
「あたしが知ってる人は何処にもいないわ。あたしを知ってる人も」
 それを聞いて何かを悟ったのか、男は悲しそうな顔をした。
「誰しも帰れる場所があるんだ。今はそうじゃなくても必ずね」
 そういってメアリーの頭を優しく撫でた。理由はわからないが、この人になら付いていっても良いかもしれないと思った。
「連れてって」
0479◆tyrQWQQxgU
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2019/10/02(水) 18:24:13.66ID:78CJ4RI60
 彼のエレカーに同乗させてもらった。
「何処に行くの?」
「俺もこの辺りの土地勘がある訳じゃなくてね。立ち寄ってこの街に来てるだけなんだ。地球連邦の基地に向かう」
「あなた軍人さん?」
「意外かな?」
「何ていうか、優しそうだもの。細っこいし」
「軍人というには頼りない男さ」
 彼は自嘲気味になりながら車を走らせた。
「君、名前は?」
「メアリー!あなたは?」
「名乗る程のもんじゃない」
「何よ、自分は聞いといて」
 男は笑った。それからあまり時間は掛からずに目的地に着いたようだ。男が手続きを済ませ、車を場内に入れる。
 見知らぬ子供に訝しがる門番達も彼の一声ですんなり通した。それなりの発言力があるのだろう。
「今から会わないといけないやつがいるんだ。ついてくるかい?」
「うーん」
 メアリーは、見慣れない機材やそこで働く人達に目を輝かせていた。
「珍しいんだな、こういう光景は」
「こんなところ来たことないもの」
「そうかい。案内してやりたいが、先に用事を済ませないと」

 2人で一際大きな建物に入ると、男の目的の部屋に向かう。肩で挟んだ端末と話しながら書類を抱える忙しそうな女性、飲み物の自販機の側で談笑する男達、ただすれ違っただけの人達すらメアリーの五感を刺激した。
「退屈しなさそうだろ」
「眺めてるだけでも楽しいわ」
0480◆tyrQWQQxgU
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2019/10/02(水) 18:24:35.53ID:78CJ4RI60
 目的の扉をノックする。恰幅のいい男が出迎えた。
「やあ、遅かったな。…その子は?」
「待たせて済まない。この子はメアリーだ。道中で知り合った」
「そうか、その話も詳しく聞きたいな。わざわざ連れてきたくらいだからワケアリなんだろ?ニュータイプ」
「よせよハヤト。…メアリー。ちょっと話してくるから、そのあたりに掛けて待っててくれないか」
「あなたニュータイプなの?」
「どうかな。君はそうだろ」
 彼は笑って扉の向こうに消えた。
0481◆tyrQWQQxgU
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2019/10/02(水) 18:25:26.14ID:78CJ4RI60
 彼を待っている間、メアリーは窓の外を眺めていた。MSやSFS、輸送機など様々なものが並んでいる。その中でも目を惹いたのは、とてつもなく大きな赤い輸送艦だった。
 興味をそそられたメアリーは、なかなか戻らない彼を待ちくたびれて立ち上がった。
「ちょっとって言ったのに。あたしはせっかちなの」

 建物を出て、先程の輸送艦の方へひとり歩いた。資材の搬入などを行っているようで、巨大な格納庫へと様々な物資が運び込まれている。
 集積所の様な場所に忍び込んで遊んでいると、突如足元ごと貨物が浮いた。リフトか何かに乗っていた様だ。
 もしかするとそのまま艦に乗り込めるのではと考えたメアリーは、息を殺して物資の箱の隙間に入り込んでみた。

 運良く検品が済んだ貨物だったようで、そのままリフトごと艦まで運び込まれていく。不意に暗くなった周囲の様子で、メアリーは艦内に入り込めた事に気付いた。
 その後は近くを物色したりしながら隠れて遊んでいたが、様々な気配の中に紛れて気になる感覚を持った人達がいた。それがワーウィック大尉やアトリエ中尉だったのだ。
 メアリーが思うより早く気付かれてしまったが、特にアトリエ中尉とは感応するものがあった。基地に連れてきてくれた男とはまた違ったが、近いものを感じ取っていた。
0482◆tyrQWQQxgU
垢版 |
2019/10/02(水) 18:26:16.83ID:78CJ4RI60
 それからの事は思い返すまでもない。気付けばもう朱雀のクルーの一員だ。その朱雀に今、危機が迫っている。
 あの黒い巨大なものは、初めて追ってきた時こそただ無機質で不可解な思念を発していたが、今回は違う。何より、メアリーを呼ぶ母の声が聞こえる。
 それは助けを求めているようにも思えたし、ただメアリーを慈しむ声のようにも思えた。

 母の声を聞いているにも関わらず危機感を覚えるのは、その思念を覆うように黒いものを感じるからだ。色んな思いを束縛し、塗りつぶす様な黒。
 怯えさえ抱くようなその黒は、危険だとしか思えなかった。母の声がするならば、メアリーの声も同じ様に届くかもしれない。メアリーは自分にできることをするなら今しか無いと思った。
 ワン中尉が手伝ってくれなくともどうにかしなければ。そんな思いでひた走った。

54話 ニュータイプ
0483通常の名無しさんの3倍
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2019/10/02(水) 19:42:09.11ID:LmHrbX6w0
乙です!

15年目......じゃなくて、つい先日の亡霊って感じですね。
フォウが無人サイコの扱いに苦しんでたことからも、メアリーの力はかなりの......それこそ、終盤でオカルト腸捻転を起こす代物では?(笑)

あとC.V.古谷徹のあのキャラって、子供の前じゃ一人称「僕」じゃないかな、と思わなくもありません。
この口調で一人称「俺」だと春日くんだな、というのが僕の直感ですw
0484◆tyrQWQQxgU
垢版 |
2019/10/02(水) 20:38:52.02ID:78CJ4RI60
>>483
早速読んでいただけて嬉しいです!

コックピット1つ潰すくらいのサイコミュを搭載してるので、無人で動かすことに特化したサイコガンダムって感じです。
メアリーもニュータイプ的な感応に長けているので、そこが結びついている感じですね。

彼の一人称めちゃめちゃ悩んだんです!
昔以上にグリプス戦役の頃の彼は割と荒んでるというか、生意気ながきんちょと口論しちゃう位には大人気ないんですよね。
それに、比較的近しい相手にはフランクな口調になる印象なので、ニュータイプ的に波長が合うなら、子供相手でもあんな感じなんじゃないかと。

あと、個人的にも俺口調の彼の方が頼もしくて好きですw
0485通常の名無しさんの3倍
垢版 |
2019/10/03(木) 07:14:53.76ID:RIJV7DDf0
ふと思ったのですが、メタス改の場合はビームガンでなくアームバルカンでは?
(どのみち決定打にはならないでも)仕様変更でサイコ戦に使える実弾装備が減ったのだとしたら、シェクター少尉ドンマイです...w

あと改がどうなってるかは知りませんが、メタスのサーベルは設定上トマホーク状に形成できるはずです。
シェクター少尉はレコアやファより格闘適性が効くようなので、機会があったら見てみたいです
0486◆tyrQWQQxgU
垢版 |
2019/10/03(木) 17:00:47.65ID:k+rBCNt60
>>485
おっと!おっしゃる通りですね!!
サイコガンダム戦はまともに想定していなかったのと、本来なら補給時に手持ちの武装を換装したりすればいいんでしょうがその暇もなく…w
どうでもいいんですが、メタス改は何故かハイメガキャノンもメガバズーカランチャーって書きそうになって何度か訂正したりしてましたw

彼は割とオールマイティにこなす方です!アトリエ中尉ほどではありませんが、中尉の影に隠れてるだけで腕は立ちますよ。近接戦闘は描写しやすいので機会をあげたいところです!
0487◆tyrQWQQxgU
垢版 |
2019/10/03(木) 17:02:06.17ID:k+rBCNt60
しかしご意見頂けると自分だと見落としてる部分も気付けていいですね…
引き続きお楽しみください!
0488◆tyrQWQQxgU
垢版 |
2019/10/08(火) 11:22:37.18ID:TWQjmDH00
 駆け出したメアリーはびっくりするくらい速かった。ワン中尉はどうにか追いつく。
「格納庫いって、MS乗って、それからどうするつもりなの!?」
「あの黒いのを説得するの。やめてって」
「話が通じる相手じゃないわ!無人機なのよ?」
「人が乗ってなくても、動かしてるのは人よ」
「それは…」
「出来ることをやらなきゃ」
 そうこう言っている間に格納庫へ到着した。殆どの機体は出払っているが、補給に戻った隊の機体や予備機が待機している。
0489◆tyrQWQQxgU
垢版 |
2019/10/08(火) 11:23:20.72ID:TWQjmDH00
「どうしたお嬢さん達」
 ヴィジョンが出迎える。
「おいちゃん!MSを1機出してほしいの!」
 突然の頼みにヴィジョンも苦笑いして頭を掻いている。
「おいおい、遠足の駄菓子か何かじゃねぇんだからよ…」
「ヴィジョン、私からもお願い。急を要するの」
 観念したワン中尉も口添えした。危険は百も承知だが、やってみる価値はある。
 そもそもメアリーの所在が朱雀にあると敵が掴んでいるのにも訳がある筈だ。メアリーの言うように感応し合っているのだとすれば、何かしら反応があるだろう。
 中尉達がいつまでも釘付けにされているのも作戦上好ましくない。
「…わかってて言ってるんだな?戦線真っ只中に女子供だけで飛び出すのがどんなにイカれてるか」
「今時男だの女だの言ってると痛い目見るわよ」
 怖い怖いといった手振りでヴィジョンが両手を上げる。
「またハッチぶち壊されちゃ堪んねぇ。艦長には報告するぞ、いいな?」
「ええ。私が責任を持つわ」
「やれやれ…。余ってるジム2しかねえが、SFSだけで行くよりはまだマシだな。くれぐれも気をつけろよ?」
 そういってヴィジョンが手早く支度を始める。
「…ありがと」
 メアリーがワン中尉の袖を引っ張った。
「あなたの事は私が守る。でも、危険になったらすぐ引き返すからね」
 メアリーは小さく頷いた。
0490◆tyrQWQQxgU
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2019/10/08(火) 11:23:51.01ID:TWQjmDH00
 出撃準備を済ませたジム2に乗り込む。すぐヴィジョンからの通信がモニターに映る。
『いいか、まともに戦闘はやるなよ。Gも考慮してカタパルトは使わねえ』
「ありがとう、無理言ってごめんなさいね」
『全く。無事に帰ってきたらそれでいい。護衛を付けるから無理はするな』
 呆れた様子のヴィジョンが親指を立てた。続けて別の通信が入る。
『我々はカラバの別小隊です。補給に寄ったところでしたが、これから再度出ます。近くまで誘導しますから』
「とてもありがたいです。お願いします」
 彼らの申し出をありがたく受け入れ、共に出撃した。
0491◆tyrQWQQxgU
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2019/10/08(火) 11:24:35.74ID:TWQjmDH00
 朱雀を後にすると、そこは既に戦場だと改めて実感した。空はまだ明るいというのに、あちこちで光が見えた。
『行きますよ。付いてきて』
「了解」
 カラバの部隊に囲まれながら朱雀の前方へ急ぎ回り込む。
「アトリエ中尉!戦況は?」
 通信が通じる距離まで近づくことが出来た。
『ワン中尉か!?何でこんなとこに出てきた!』
「ベイト!手伝いに来たわ!」
 メアリーがモニターに割り込む。
『お前…!自分が何やってんのかわかってるのか!?危ねえから早く戻れ!』
「やることがあるの。早く戦況を」
 ワン中尉は落ち着いて返答した。
『くそ…話は後だな。サイコガンダムとは依然交戦中。お前の見込みは当たりだぜ。羽一枚もいだらだいぶ高度が落ちた』
「接触するなら今ね」
『正気か…絶対正面には立つなよ』
「わかったわ」
0492◆tyrQWQQxgU
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2019/10/08(火) 11:25:12.13ID:TWQjmDH00
 サイコガンダムをはっきり目視出来た。片翼を失い、煙を吹き出しながらも浮遊している。
『これ以上近づくのは危険です』
 カラバ兵の通信が入る。
「ありがとう。でももう大丈夫です。アトリエ中尉達も居ますから」
『しかし…』
「あなた達も任務があるでしょう。これ以上迷惑は掛けられない」
『わかりました。…御武運を。きっとご無事で』
 そういってカラバの部隊が離れていく。入れ替わる様にシェクター少尉のメタス改が随行してきた。
『メイ!今詳しくは聞かないけど…』
「スティレット。今からメアリーが意思疎通を図るわ。こちらの脳波に反応があるかみてみる」
『援護する。危険があればすぐ戻るんだ』
「頼むわね」
 ワン中尉達のジム2は恐る恐るサイコガンダムとの距離を詰めた。
「やってみる…」
 そういってメアリーは目を閉じた。
0493◆tyrQWQQxgU
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2019/10/08(火) 11:25:45.17ID:TWQjmDH00
 メアリーが目を閉じてしばらくすると、ガンダムMk-Wと交戦していたサイコガンダムの動きが突如鈍った。砲撃をやめ、静かに佇んでいた。
『驚いた…まるで魔法だな』
 シェクター少尉がこぼす。先程までと打って変わり、サイコガンダムは緩やかに地上へと降りていく。
『追うぞ少尉!』
 アトリエ中尉とシェクター少尉がサイコガンダムに合わせて高度を落とし始めた。ワン中尉も少尉の傍から離れない様に飛んだ。
「ママが…」
 メアリーが口を開いた。ワン中尉は彼女の言葉を待った。
「ママがね、あたしに会いたかったって。あたしは大丈夫だよって言ったら、ママも大丈夫だって。そしたら、黒いのが少しずつ晴れたの。一緒にママの声もしなくなった」
 話すメアリーの表情は明るかったが、その頬には涙が伝っていた。ワン中尉は思わず抱きしめた。
 地表に降り立つと、サイコガンダムはMS形態になった。接近するワン中尉達に、膝をついて頭を垂れている。
『まじか』
 着陸したアトリエ中尉が呆気に取られている。少尉も同様だ。
「…この子は悪い子じゃないわ。私の妹みたいなものだもんね」
 サイコガンダムを見つめながらメアリーが言った。
「お姉さんは、妹と一緒に居るものよね」
 そう言うワン中尉に笑顔を向けるメアリー。
0494◆tyrQWQQxgU
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2019/10/08(火) 11:26:11.23ID:TWQjmDH00
『一難去ってまた一難だぜ…!』
 アトリエ中尉の言うとおり、周囲には熱源反応。敵の基地に上陸したのだから当然だ。
『今から朱雀に戻るのは難しいな…』
 シェクター少尉がジム2を守る様に正面で構える。ワン中尉もジム2の装備を確認した。
「皆…大丈夫よ」
 メアリーの声に呼応する様に、サイコガンダムが立ち上がる。敵機が我々を取り囲む様に姿を現した瞬間、それらはまたたく間に撃破された。両手の指先に装備されたメガ粒子砲は的確に敵を撃ち抜いた。
0495◆tyrQWQQxgU
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2019/10/08(火) 11:27:11.28ID:TWQjmDH00
「どうなってるのこれ…」
 思わずワン中尉は声に出して驚いた。
『メアリー、やるじゃねえかよ』
 アトリエ中尉が冷や汗を流しながら苦笑いする。メアリーが動かしているというのか。
「ベイトは判るわよね。スティレットは?」
 さも当然の様にメアリーが言う。
『いや…感じが変わったのはわかるけど…』
 困惑する少尉。何を言っているのかすらワン中尉にはわからなかったが。
「こういうの、ニュータイプっていうのよきっと」
 メアリーが笑った。アトリエ中尉もそうなのだろうか。活躍は納得いくものばかりだが。
『俺がニュータイプってのは保証しかねるが、メアリーは本物だぜこりゃ』
『何はともあれ、こんなに心強い味方もそういませんよ』
 シェクター少尉のメタス改がサイコガンダムを見上げる。
「一理あるわね」
 メアリーが得意げに言った。しかし、メアリーの言うママというのは誰なんだろうか。ワン中尉は何となく、ウェイブス研究員の事を思い浮かべていた。

55話 まるで魔法
0496◆tyrQWQQxgU
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2019/10/09(水) 14:19:34.45ID:E2KM/Ibu0
 一体何が起きているのか、フェンダー少将は混乱していた。
 ニューギニア基地は引っ越しを済ませた時から比べてもかなり戦力も増強されている筈である。ニュータイプ研究所とも手を組み、麾下のアイバニーズ少佐にも再起のチャンスをやった。それが何故こうなる。
 最前線の防衛ラインは早い段階で崩れ、敵の上陸を許している。迎撃部隊が抑えているが、突破されるのも時間の問題だろう。そうなれば基地内部にも敵が入り込んでくる。
0497◆tyrQWQQxgU
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2019/10/09(水) 14:20:10.23ID:E2KM/Ibu0
 戦況の整理をある程度させたところでまた別の報告が入る。
「馬鹿な!サイコガンダムが寝返っただと!?」
 ムラサメ研究所から持ち出した機体だった。専属で連れて来た強化人間が裏切ったのではなく、機体のコントロールが奪われた様だ。
 無人機の普及に肯定的だったフェンダー少将としては余計に歯痒い。強化人間など所詮はまがい物ということか。
 しかし厄介なのは、機体がそのまま敵戦力になっているということだった。あちらにもニュータイプがいるという事になる。しかもコントロールを掠めとるなどという芸当が可能なレベルだ。
「…その強化人間は今どうしている?」
『遊ばせておくのも勿体ないですから、例の試作機で行かせます』
「やれるのか?」
『いやはや何とも…』
「やってみせろ」
『はっ…!』
0498◆tyrQWQQxgU
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2019/10/09(水) 14:20:35.83ID:E2KM/Ibu0
 混乱や恐怖の感情が、じわじわと怒りへ色を変え始めていた。何故こんな目に遭わなければならないのか。通信を終えると、今度はこちらからアイバニーズ少佐へ通信を試みる。
「少佐。調子はどうかね」
『少将の御支援の賜物です。万全を期しております』
 モニターの向こうには、いつもの仏頂面が映った。面白みの無い、表情の変化に乏しいいつもの顔だ。
「当然だな。そうでなくては困る」
『どうしてもと仰られるなら迎撃側と合流致しますが』
「いや、いい。手筈通り内部で迎え撃て。閉所のほうが勝手が良いのだ」
『サイコガンダムの件でしょうか』
「そういうことだ。して、お前達の機体の調子はどうだ」
『ビー少尉のギャプラン改、スペクター大尉の新型は予定通りに。私のクゥエルもどうにか改修が間に合いました』
「お前も欲しければ新型を寄越したというのに」
『いえ、私はこれで十分です』
「相変わらず頑なな男だ。まあいい、正直言って迎撃部隊はそう長くは持つまい。お前達に全ては掛かっている。心しておけ」
『承知致しました』
0499◆tyrQWQQxgU
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2019/10/09(水) 14:21:16.42ID:E2KM/Ibu0
 通信を終えると少将は再びニューギニア基地のマップへ目をやった。
 ジャブローを放棄し、安泰と思われたこの地も今や追い込まれている。ティターンズの話に乗ったのは果たして正解だったのだろうか。
 まさかエゥーゴやカラバがここまでやれるとは思ってもみなかった。ティターンズが正規軍のエリート部隊といっても、粋がる連中の専横でしかなかったのかもしれない。
 ゴップの様に日和る程度が世渡りには丁度良かったのだろうか。欲をかいてしまったとでも言うのか。淹れたコーヒーも飲む前に冷めてしまった。

 アイバニーズ少佐には気の毒だが、彼らの部隊が交戦に入る頃にはここも危険だろう。少将は内密に撤退の準備を始めようとしていた。

56話 まがい物
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垢版 |
2019/10/09(水) 14:21:58.86ID:E2KM/Ibu0
『いくら倒しても切りがねえ!』
 サドウスキー大尉が弱音を吐き始めた。彼の言うとおり、2人で相手をするにはいささか敵の数が多過ぎた。
 アトリエ中尉達も一向に合流する気配がなく、万一の不測の事態が頭をよぎる。通信が途切れた時、大きな熱源反応を感知していた。それと関係があるのかどうか。
「…何にせよ朱雀は健在だ。我々が持ちこたえなくてどうする」
『そうはいうけどよ…!』
 サドウスキー大尉の弾薬を節約する為白兵戦を繰り返していたが、機体の駆動系も悲鳴をあげ始めている。元より近接格闘を前提にチューンナップされた両機ですら、このままでは時間の問題だった。
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