「板垣恵介の格闘士列伝」より抜粋
『興行として長い歴史を持つプロレスは、勝ち負けのみを目的としていない。
凄味を見せることもその大きな目的になっている。勝つことだけを考えるなら、
相手の技など受けなかればいいのだ。相手の能力など何ら引き出す必要はないのだ。
その凄味を見せつけたところに、プロレスの魅力があり、崇高さがあると俺は
思っている。だから当然いただけないプロレスラーがいる。とくに格闘技路線を
名乗り、従来の興行としてのプロレスを否定しながら、その実、古式豊かな
プロレスを行っている人間だ。俺にとってUWFは擬似格闘技だった。』

『前田はこんな主旨のことを言っていた。「俺はみんなを食わせていかなきゃいけない。
そのためにはひと月に一度の興行がいる。そういうスケジュールで選手が壊れないよう
なルールを採らなきゃやっていけないじゃないか。」言っていることはまったく正しいよ。
でも仮にも、最強を名乗る格闘技を確立しようとして団体を旗揚げした人間が、
このような言葉を口にする事に俺は疑問を感じる。格闘技を名乗るなら、最強を名乗るなら、
勝利を得ることを第一に考えてくれよ。はじめに興行ありき、じゃなくて勝負ありき、にしてくれよ。』