さいきんすごいアタマ来たことがあってさ。藤原さん(藤原喜明)が著者名で載ってる、あるライターが共著で載ってる本があって。
藤原さんと対談したんだよね。対談してゲラ直しやったら、そいつがね、オレに「前田さん、こことここ変えましょう」と。「なんで?」と聞くと「事実と違います」と。
「事実と違うって、オレはゴッチさんから聞いた内容でしか書けないよ。それだったら(手を)引くよ」って。「それだったら載せます」と。
「でも自分は前田さんのファンなので前田さんが恥をかくと悪いと思って」。

オレはゴッチさんと会話して、そういうことかと思って、証拠となる本とか見せてもらってその経験で書いてるわけで、それが「事実と違う」って。
で、「お前、何を知ってるの?」と。そしたら娘さんからいろいろインタビューで聞いたと。
そのページ見たら“自分は父親のことを知っているのは10%くらいだ”と正直に言ってるのに。オレらは実際にゴッチさんからいろんな話を聞いてるわけ。

なんでゴッチさんを尊敬しているかと言ったら、プロレス界にありがちなホラが一個もないんですよ。
話もトレーニングも。当時アメリカで好かれるプロモーター嫌われるプロモーターいろいろいたんだけど、そういう中でもルー・テーズと7〜8回タイトルマッチやったすごい人。
でも、そのライターが書いてるゴッチ伝のところ読んだら、もうぐちゃぐちゃなんだよね。ゴッチなんてしょせん前座の人間だみたいな。

ゴッチさんが現役時代、何に対して闘っていたかというと、プロレスをまともなスポーツにするために闘っていた。
だからカール・ゴッチに感化されたアントニオ猪木でもオレたちでも、一度はプロレスを変えようとシャカリキになってやるわけ。
ようやくオレたちの時代で桜庭(桜庭和志)のような人間が出てきたけど、ゴッチさんそういうことどれくらい喜んでたか。そういうことも(そのライターらは)わかんないんだよね。