獄中歌人・十亀弘史 [無断転載禁止]©2ch.net
1986年に発生した「迎賓館ロケット弾事件」に関与したとして、
実刑判決が確定し収監されるも、
獄中から「朝日歌壇」に投稿を続ける十亀弘史の作品を紹介。 12月19日(月)朝日新聞朝刊「朝日歌壇」より
・独房に秋の蚊を打つほの白き壁に小さき血の痕残し (馬場あき子 選)
・一年に三時間だけ破目はずす運動会は獄中祭 (佐佐木幸綱 選) 腕出して腕だけの春鉄格子
獄中に不在者投票梅雨深し
獄庭へぎざぎざの冬降りて来る
二糎の隙間より見る遠桜
花びらを受けて静かや手錠の掌
軍事基地の桜・桜・桜・闇
自足する醜さに満ち花の宴
雲厚し枝垂桜のなまぬるし
生と死のあはひに満ちし桜かな
ひつそりと桜立たしめ死刑場
独房に動かぬ時間春の塵
独房に蛇口輝く夏初め
洗濯を水遊びとし独居房
独房にざくりと割りぬ青林檎
独房を梨噛む音で満たしけり
三角の冬晴を置く独居房
月光を二十四に分け鉄格子
独房に飛ぶ夢を見し良夜かな
独房をとびだすこころ銀河まで
独房の初夢河馬と空を飛ぶ
(俳人でもあり)十亀弘史