本問では、犯行日時を欠く起訴状について訴因の特定が
なされているかが問題となる。

訴因とは刑事訴訟における審判対象であるところ、
起訴状には訴因を記載しなければならない(256V)。
これは審判対象を画定し、これにより被告人の防御対象を
明らかにするためのものである(識別説)。
つまり、訴因とは@特定の構成要件該当事実を満たす事実
であって、A他の犯罪事実と識別が可能な事実をいう。
法が256Vで訴因の明示に際しては、「できる限り、日時、
場所、方法をもって罪となるべき事実を特定」しなければ
ならないと規定するのは上記Aを意味する。
したがって、犯罪識別機能を果たす上で必要不可欠な日時、
場所、方法であれば記載されねばならないが、そうでない
事実は「できる限り」記載されれば足りるということになる。
これを本問についてみると、(以下略)