前訴の訴訟物と後訴の訴訟物が同一先決矛盾関係にある場合のみ後訴に既判力が及ぶ
とすると、前訴判決の相殺の既判力(114条2項)が後訴に及ぶ場合をうまく説明できない。
相殺の既判力が生じている自働債権は前訴の訴訟物ではない。自働債権ではない前訴
の訴訟物と後訴の訴訟物の関係をみても前訴の既判力が後訴に及ぶか判断できない。

前訴判決と後訴訴訟物が同一先決矛盾の場合のみ前訴既判力が後訴に及ぶとするのであれば、
理由中の判断である自働債権の存否も前訴判決に含まれるとみて、既判力が後訴に及ぶ場面も
三類型で説明できるかもね。

相殺の既判力ではなく判決主文の既判力(114条1項)が後訴に及ぶ場面は、結論としては前訴と後訴の
訴訟物が同一先決矛盾関係にある場合しかない。
伝統的学説ではこう整理されるはず。

伝統的学説によらない見解も論理的かつ現行民訴法に整合的であれば評価されるはず。
ただ、その場合、まずは伝統的学説の理解を説明したうえでこれをは異なる見解によることを説明する必要があると思う。
にーやんさんが挙げている文献を読んでないが、ドイツ法の議論を日本法に持ち込めるかが問題となるし、
また伝統的な学説ではない。