「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと言えり。
 されば天より人を生ずるには、
 万人は万人みな同じ位にして、
 生まれながら貴賤(きせん)上下の差別なく、
 万物の霊たる身と心との働きをもって
 天地の間にあるよろずの物を資とり、
 もって衣食住の用を達し、
 自由自在、
 互いに人の妨げをなさずして
 おのおの安楽にこの世を渡らしめ給うの趣意なり。

 されども今、
 広くこの人間世界を見渡すに、
 かしこき人あり、おろかなる人あり、
 貧しきもあり、富めるもあり、
 貴人もあり、下人もありて、
 その有様(ありさま)、
 雲と泥(どろ)との相違あるに似たるはなんぞや。」