金銭を預かった者が自分名義で預金した場合、誰の預金か(預金者の認定)

@損害保険代理店は、顧客から月々の保険料を預かってそれを保険会社に渡す場合、
顧客からの預かり保険料専用口座(X保険株式会社代理店A名義の口座)に一時期入れておいた。
その後、代理店Aが破産した。

A「占有あるところ所有権あり」説から行くと、顧客が保険料をAに支払った時点でその金銭はAのもの
となり、預金された金銭の出損者はAであるから、その口座の預金者はAになりそうである。
他方、使途を特定して預けた金銭の所有権は委託者に残るのだとすると、出損者は顧客だということ
になり、顧客が預金者になりそうである。

B東京地裁昭和63年3月29日判決は、Xが預金者となるとしている(判時1306p121)。

*この判決は、本件預金の原資は保険契約者が支払った保険料であるから、保険会社が出損
したのと同視できる、という。保険料を受領することによって、契約上、保険契約者は保険料を支払った
ことになり、保険会社は保険事故が生じたときは保険金を支払わなくてはならないから、保険料は
保険会社に帰属しているのだという考慮だろう(道垣内)
そして、この両方を整合的に理解しようとすると、「出揖者」説とは、実質的な利益帰属主体を預金者
と認める説であるということになる。