【相手方・第三者による錯誤無効の主張】


表意者が錯誤による無効を主張しない場合に,相手方は無効を主張
しうるか。

錯誤による法律行為は無効(95条本文)であり,無効は誰からでも
主張しうるのが原則である。しかし,相手方は錯誤無効を主張しえな
いものと解する。けだし,錯誤無効は表意者保護の趣旨であり,
表意者が無効を主張しないのに,相手方の無効主張を認めるのは
この趣旨に反するからである。


では、表意者が錯誤につき重過失があり無効を主張しえない(95条但書)
場合に,相手方または第三者は無効を主張しうるか。
表意者保護の趣旨から、相手方や第三者が無効を主張しうるとすることは
許されないものと解する(最判昭40.6.4)

もっとも,以下のような場合には、表意者に対する不当な干渉になら
ないから、第三者も錯誤無効を主張することができると解する。

@第三者に表意者に対する自己の権利を保全する必要があり,かつ,
A表意者自ら意思表示に錯誤があることを認めている場合