共同相続と登記


 (Aの死亡により,B・Cが各2分の1の持分でA所有の不動産を相続したところ,
Cが勝手に単独所有の登記をして,その不動産全部をDに譲渡し登記も移転した場合)

遺産分割前にCが自己の持分を登記し,Dにその持分権を譲渡することは有効である。
898条の文言,及び909条但書が分割前の持分の譲渡が有効であることを前提としていることから、
相続財産の共有は物権編(249条以下)にいう「共有」と解されるからである。

とすれば,遺産分割前においてもCが自己の持分について登記をなし,Dにその持分権を譲渡
することは有効である。問題は,Bが自己の2分の1の持分について登記なくしてDに対 抗できるか
である。
Bは自己の2分の1の持分について登記なくしてDに対抗できる と解する。けだし,共同相続人の
一人が勝手に単独登記をしたとしても,その登記は名義人の持分を超える限りにおいて実体関係
を反 映しておらず,無権利の登記であること,しかも登記には公信力は 認められないことからである。

→もっとも,Dを表見代理,相続回復請求権の時効(884条)によって保護することは考えられる。