○渡辺咲子「判例講義刑事訴訟法」
刑事法判例の読み方。理屈を書いてすこしづつ進むという執筆なので、きわめて良心的。
特に、10章の公判前手続、11章の証拠法の原則、12章の伝聞証拠関連判例、の3つはよくできております。
◇ 長所 ◇
1)左巻きの学者さんが、わあっと飛びつく判例ではない、地味な地裁や高裁の裁判官がしっかり考えて書いた判例、これを取り
上げてあるのが特徴です。ここが一番いいところです。もちろん最高裁判例もありますが、原審に帰って検討してありますので、
現状での、日本の刑事裁判官が苦闘した事実とその解決法を、一掴みできるようにできております。
◇ 欠点 ◇
3)方法論的にあいまい。たとえば、「事実認定判例」というカテゴリーがあって、その判例の特殊事実的なところだけに通用する
裁判所の命題だと断定する書き方などは、できるだけ有罪にもっていく検察実務の思考法です。しかしその判例がなぜ当該事実だけ
に適用される命題を立てたのかについては、納得のいく説明はない。かなり天孫降臨的。限定する理由を注意して読むこと。
刑事訴訟法が判例法であることも常に意識すること。

○佐々木「捜査法演習」
制定法および最高裁判例をもっと真剣に考えろよお前ら、という意見には大賛成。ということで、次に15問の設例と解説があります。
この解説が、すこしわかりにくい。というか文章がへた。これで★ひとつ減点とします。
拾ってあるのは全部基本的な類型ですので、この程度は、自分ですぐ答案構成が書けないとダメです。もし書けないなら、
書けるようになるまでこの本で練習しましょう。司法試験はA答案になると思います。

◎「刑事公判法演習」
捜査はべつにあるので、公判維持についての主要な論点15の、その項目別に小さな文章を立てて慷慨を把握させ、
やや短めの問題を掲げ、その回答を与える形式で淡々と進んでいます。かつての令状基本問題XX講に匹敵する、
修習生レベルでは、マストの一冊といえます。メリハリのある事実のあてはめが書いてありますので、わかりやすいと思います。