神経難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性に対する嘱託殺人容疑で医師2人が逮捕された事件で、大久保愉一(よしかず)容疑者(42)=仙台市=が発信したとみられるツイッターに2013年以降、「ドクター・キリコになりたい」との内容を繰り返し投稿していたことが25日、分かった。ドクター・キリコは手塚治虫の医療漫画「ブラック・ジャック」の登場人物で患者を安楽死させる医師。京都府警は、投稿内容を分析するとともに事件との関連を調べている。


 ツイッター上で大久保容疑者のものとみられるアカウントから、ドクター・キリコに言及した投稿が少なくとも17件発信されていた。13年1月に「医学部を卒業する時から、老人医療のやるせなさは身にしみていたので、卒アル(卒業アルバム)に将来の夢『ドクター・キリコ』って書いた」と発信。同年4月には「世の中のニーズってそっち(ドクター・キリコ)なんじゃないのか。病院に行けば治療されちゃう」と記していた。

 中には、患者を死亡させる行為を医業として捉えるような内容も投稿。「俺が開業するなら、キリコしかない。立件されないだけの無駄な知恵はある」「ハコ(医療施設)を持たずにキリコ的に流浪の殺し屋をやるのが最適解。ただ、営業をどうやってやるのかが問題」と書き込んでいた。

 捜査関係者によると、山本直樹容疑者(43)の口座には事件直前の昨年11月20日ごろ、亡くなった京都市中京区のALS患者林優里(ゆり)さん=当時(51)=から2日に分けて50万円と80万円が振り込まれていた。府警は、両容疑者が計130万円を殺害の報酬として受け取ったとみるとともに、報酬を得て安楽死を請け負うドクター・キリコを描いた漫画が、大久保容疑者に与えた影響なども調べる。

 京都地裁は25日、大久保容疑者と山本容疑者について10日間の勾留を認める決定をした。期限は8月3日。

 逮捕容疑は共謀して、林さんから自身を殺害するよう頼まれて昨年11月30日、林さんの自宅マンションを訪れて致死量の薬物を投与し、急性薬物中毒で死亡させた疑い。

 ドクター・キリコを巡っては、1998年にインターネットの掲示板でドクター・キリコを名乗る元薬剤師の男が自殺を望む人たちに毒物を送り、自身も自殺した事件があった。