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 また、我が国の産業構造の変化をみると、1990 年代までは生産性の高い産業分野に人材
が集まり、産業構造の変化自体が我が国社会全体の生産性を高める方向に作用していたと言
える。しかし、2000 年代になると、この動きは逆転し、生産性の低い産業分野に労働力が
集中する傾向が生じ、生産性の向上を阻害しており、労働力配置の観点からみた産業構造の
高度化の動きは停滞していると言える。このような動きは、各産業分野における雇用の動向
によるものである。まず、製造業では、正規の従業員を中心に人員削減が進み、労働生産性
は上昇してはいるが、持続性を持った生産性の向上としては評価し難い。一方、卸売・小売
業、サービス業などでは、パートタイマーや派遣労働者を増加させ、賃金コストを抑制しな
がら人員の確保を行っている。本来は、多様な就業希望を実現するものとして期待された柔
軟な就業形態は、企業にとってコスト負担の低い就業形態として活用されているが、それは
コスト削減には有効であっても、労働者の職業能力の向上を通じた労働生産性の向上にはつ
ながりにくい。この結果、我が国の低生産部門は温存され、我が国全体の労働生産性の向上
にとって、マイナスの影響を及ぼすようになってきているのである。

tp://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/08/dl/04.pdf
平成20年版 労働経済の分析−働く人の意識と雇用管理の動向−