息が足りない。酸素補給マシンが欲しい。
というか、僕がリュカに酸素を吸われてる気がする。

僕はまず二人分の唾液を飲み込まなきゃいけないし、リュカがキスをする、
僕はキスをされるっていう立場が余裕の差になって、僕の酸素が必ず先になくなる。
その分だけゆとりあるリュカが先に息を整えて、準備のできてない僕の口をまた塞ぐ。
十分に呼吸ができてないから限界が浅くなり、回数を重ねるごとにキスが短くなる。
するとリュカは時間が短くなるのが不満なのか、更に強く吸い付いてくる。
僕はどんどん追い詰められて、結局この悪循環は僕がギブアップするまで続いた。

何度目か求められた時に、本当に死んじゃう気がして、顔を振ってそれを阻んだ。
声で静止するつもりだったけれど、息が足りなくて、変な音しか出なかった。
「あ、うん」とリュカが僕の上から離れて、密着していた部分がすぅっと涼しくなる。
ようやく思う存分息が吸えるチャンスができて、息を整える事だけに集中した。
なんとか体に酸素が行き渡った頃、キッチンに向かっていたリュカが戻ってきた。
「水、持ってきたよ」 その両手には水の注がれたコップがあった。

…確かに口の中はぐちゃぐちゃしてて、水を飲めたらありがたいけれど、
僕がリュカを止めたのは「息ができなかったから」ってちゃんと伝わってるのかな。
少し不安になったけど、さっきのキス攻めでわずかな呼吸すら貴重に思えたので、
直接聞くのはやめた。そもそもこの体制の僕にどう飲ませるつもりだろう。
体、起こしてくれるのかな。もう腕を解いてくれると嬉しいんだけど。

解放を願う僕の足元で、リュカは自分の分のコップを喉を鳴らして空にすると、
膝越しに僕の方を見て…何か面白い事を思いついたように口の端を少し上げた。

僕は今、ベッドに横のままで、足の裏でベッドを踏んで膝を合わせている。
さっき咄嗟に持ち上げてから、キス攻めされてる時にあちこち体をひねっていて、
最終的にこの形で落ち着いた、ってだけだったのだけれど。

「自分で足開いて、僕に全部見せて」
膝越しに僕の顔を見たリュカが言う。僕の体がこわばる。
―え、何?なんで?リュカ、僕に何させようとしてるの?
リュカの目は僕の顔をじっと見てる。僕がどう反応するか観察するような目。
固まった僕を見て、「できたらお水あげる」と続け、フフフって声も立てずに笑う。
どんな顔するのかなってワクワク期待してるような目。
また、体が熱くなってくる。リュカが今、僕に何を求めているのか想像する。

―あぁ、きっとリュカは僕の恥ずかしがる所を見たいんだ。

閉じた太ももによって、リュカの視線からは隠されている、僕の硬くなったアレ。
下半身に生じたゾクゾクに合わせて、ぴくりぴくりと小さく震えていた。