1番好きなパチの萌えキャラ [無断転載禁止]©2ch.net
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しいなの人荒ぶってんなw
パトランラン編お願いします○┐ 新人で無名とは言え、なんだかんだで日々多忙なアイドル稼業
そんな中での貴重なオフ
更にその中での、毎月一番初めのその日は、誰の呼び掛けともなく、"私達の日"と呼ばれる、じゃんピンガールズ親交の日となっていた
時に誰かの宅でパーティーに興じたり、時に小旅行に臨んだり、何かと乾燥がちになりがちな芸能活動、その中で淡白になりがちなユニットに対する帰属意識、連帯感を、今一度新鮮な物にする為、その一日はとても需要な意味と価値を持っていた
まぁ ざっくり言えば、たまには気の合う仲間達と羽を伸ばしたいのである
「ここが今、評判のかき氷屋さんなんですぅ!」
流行り物には誰より敏感な妹分、みいなが目を輝かせて小躍りする
「へぇ〜 かき氷屋さんね〜 冬はどうやって稼ぐんだろう…?」
金勘定には誰より敏感な姉御肌、れいなが腕を組んで小首を傾げる
「うふふ 美味しそうですね〜」
しいなはこの二人と何かを食する時、大抵この台詞を口にする
何が美味しいのでは無い
大好きなじゃんピンガールズの仲間と一緒に楽しむこの時間と雰囲気が、何よりのご馳走なのである ここは郊外の巨大ショッピングモール…
様々な店舗が所狭しと居並ぶその一角に、今、老若男女を問わずして話題の氷菓子屋があった
今回の"私達の日"は、このショッピングモールでのお買い物と、この氷菓子屋を始めとした食べ歩きが目的だったのだ
「みぃはオールド・トチオトメ・イン・ザ・サマーデイですぅ!」
海の家を模した店内、みいなはメニューも見ずに、凡そかき氷のそれとは思えぬオーダーを高らかに発した
「んじゃ、アタシは〜… マンゴースペシャル」
れいなは暫しメニュー表を睨んだ後、店長イチオシと言う一品を選んだ
「それじゃ私は〜…」
しいなはメニュー表を彩る、色鮮やかなサンプル写真に視線と心を踊らせる
仲間達よりほんの少し大人で落ち着いた印象の彼女も、一皮向けはただの可愛らしいティーンガールに過ぎないのだ
「……アルティメット・レモン… で!」
シンプルでオーソドックスではあるが、レモンシロップのかき氷は、彼女にとって幼い日の海水浴の思い出とも結びついており、そんなノスタルジーでディアーなあの刻を、大好きな仲間達と共にもう一度… という、彼女の願いも込められたオーダーだった 「「えっ!?」」
だが、オーダーを聞いたその仲間達の表情は、不満を帯びた驚きの色で染められていた 「ちょっとコレ見て! 」
アクセサリーショップのショーケースが、れいなの目を惹き付けた
「ねぇ 可愛くない?」
「可愛いですぅ!」
スワロフスキーの小熊、手にした向日葵がワンポイントのヘアピン
一目惚れのれいなは、みいなの"良く似合うですぅ"の声にも押されて、購入を決めた
「こっちはみいなのイメージにぴったりね」
ピンクのリボンがワンポイント、麦わら帽子のブローチ
「に、似合うですぅ?」
れいなの笑顔の頷きに、みいなも安くは無いそれを購入する
「しいなも何か買っちゃいなさいよ」
「記念ですぅ! 思い出ですぅ!」
当然、そういう流れになる
「そ、そうですか〜…」
良家に生まれたしいなにとっては、スワロフスキーもただのガラス細工に過ぎないが、確かにみんなと共に購入すれば思い出の一品、永遠の友情の証になる事だろう 「それじゃあ〜… ……これなんか……」
赤トンボを象ったペンダント
秋の日の透き通った夕焼け空、それを連想させる茜色に心を引かれたのだ
「……どうでしょう? 似合いますかね?」
少しはにかみながら、仲間達へと振り返る 「…………えっ…?」
「…………う、うん… ううん?」
たが、仲間達の表情とリアクションは、期待と裏腹に冴えない物であった 「……………………」
「……………………」
「……………………」
巨大迷路の様なショッピングモールの散策は、疲労と喧騒のせいか口数が極端に少なくなっていた
三人の間に流れる、少しピリピリと言うか、ちょっぴり不穏な空気も一因だろ
否、寧ろそれが主原因である
つい先刻までの、あんなに和気あいあいとし雰囲気…
それを取り戻したいのはしいなもやまやまであるが、如何に良家のお嬢とは言え人の子、怒りの琴線は細くとも確かに存在し、それを逆撫でされれば心もささくれ立つ…
詰まる所、気まず雰囲気の最大の原因は、しいなの苛立ちを含んだテンション下降にあるのだ
「うわぁ! 凄いですぅ!」 そんな湿った空気を吹き飛ばしたのは、やはりみいなの天真爛漫であった
ショッピングモールの中央、幾つかのエリアが連結する開けたスペース
そこは催事場ともなっており、今日この日は間近に迫った七夕祭りをテーマとしたイベントが催されていたのだ
みいなの歓声は、その吹き抜けのスペースに据えられた、巨大な七夕飾りに起因する物だった
「うわぁ〜…」
「素敵です…」
無数の色鮮やかな短冊を纏う、枝ぶりの良い大きな笹竹…
確かにそれは、みいなに限らず、見る物全ての心を震わす圧巻の光景だった
「……しいな」
「……はい」
一瞬にして蟠りは消し飛んだ
先走るみいなの背中を、れいなとしいなは追って行く 「みぃも! みぃもお願い書くですぅ!」
七夕飾りの周囲にはテーブルが幾つも設置され、そこに短冊とペンが用意されていた
その一つにみいなは飛び付き、少し遅れて二人も続く
「ねぇ どんなお願いする?」
橙色の一枚を取ったれいなが、両脇の二人に尋ねる
「みぃは、もっと背が高くなりたいですぅ! モデル体型になりたいんですぅ!」
紅色の一枚を抜きながら、みいなはオーバーアクションを交えて宣う
「……そうですね〜… 私は〜…」
素直になって、みんなと仲良くしたい…
短冊を経ずにして、既にそんな願いを叶えて貰えたしいなだったが、今一度その思いを胸に一筆を認める事にした
「みんなと… 皆さんと一緒に… いつまでも…… 」 短冊の束に手を伸ばし、永遠の友情とじゃんピンガールズのブレイクを願おうとしたその刹那…
「はいっ」
れいなが素早くしいなの前に、一枚の短冊を滑らす
「……………………」
しいなはピタリと動きを止め、そのとても鮮やかな翡翠色の紙切れを、冷めた瞳で見下ろした 「ちょっと待ちなさいよ、しいな!」
大股で先を行くしいなに、小走りに近い格好のれいなが追い縋る
「……しいな!」
漸くその肩を捉えて、れいなは彼女を無理矢理振り向かせる
「いったい何に怒ってるのよ? 朝からずっとおかしいよ、しいな!」
「おかしい? いったい私の何がおかしいんですか?」
珍しく食って掛かるしいな
それ程に腹ただしかったのだ
「おかしいじゃない!? いきなりレモン味注文したり…! さっきも赤トンボのアクセサリーなんて…!」
「そ、それの何がおかしいんですか!? おかしいのはお二人の方です!」
多分、ここまで負の感情を露にするのは初めてであろう
己の声を震えを感じて、それが更に声を震わせた 「わ、わ〜い! お待たせですぅ…!」
わさとらしくテンションを上げながら、みいなが二人の元に駆け寄る
しいなは視界の隅で、ただならぬ空気を察して縮こまる、遠方の彼女の姿を大分前から捉えていたが、今は感情の制御が効かず、それに意識を向ける余裕が無かったのだ
「こ、これ…! 今度はアイス… ですぅ」
その手には、有名アイスクリームチェーンのシングルコーンが三つ…
これでしいなを宥め様と、速攻で走ったのかも知れない
だがそれを一瞥したしいなは透かさず宣言する
「チョコレートミントは絶対に頂きませんからっ!!」
「「!!」」
ピシャリと言って退けた
この期に及んでの余りにあざとい手法に、先手を打って意思表示したのだ
「ちょっ!? それじゃチョコミントは誰が食べるのよ!?」
やっぱりそう言う事か!
れいなのリアクションに、しいなの怒りのボルテージは更に上昇する
ベリーストロベリーとオレンジソルベ、そしてチョコレートミント
いい加減にしろ! 「好きな物が食べたいんです! 好きな物を身に付けたいんです! 好きに選ばせて下さい!」
「だってしいな、青じゃない!」
「別に青じゃないです! 肌色です! 人間です! 仮に青だとして、どうして全てを青で統一しないといけないんですかっ!?」
「で、でも、昔から黄色い人はカレーが好きって決まってるんですぅ! だから青いしいなちゃんが青い物が好きなのは、頗る当然なんですぅ!」
「当然じゃないです! 青でもありません! たまたまコスチュームが青なだけです! そもそも黄色い人はカレー好きって、誰情報なんですかっ!?」
「アタシはオレンジとかマンゴーとか半熟卵とか好きよ!」
「みぃもイチゴとかリンゴとか鉄火巻きとか好きですぅ!」
「ず、ズルいです! 青、不利じゃないですか! 私もストロベリーが好物なんです! お寿司に至っては、いったい何を食べれば良いんですか!? 」
「今更そんなワガママ…!」
「ワガママって…! だったら私もピンクがやりたかったです! 」
「ピンクはみぃですぅ! みぃはピンクに生まれたんですぅ!」
「私は別に青に生まれてません! たまたま近くにあった衣装に手を伸ばしただけです! ズルいです! 皆さんズルいです!」 己のイメージカラーを尊重し、それをプライベートも当て嵌め、人生すら染め上げる…
そんなアイドルの矜持を否定するつもりは無いしいなだったが、どうしても賛同する事はできなかった
たまたま近くにあったコスチュームを手にしたせいで、好きでも無いチョコレートミントを舐めねばならぬとは…
爽やかなフレーバーが広がる筈のそのコーンアイスは、何故な微かに塩の味がして、これはこれでなかなかイケると思うしいななのだった
その後三人はスタミナ太郎で鋭気を養い、極楽湯で日々の疲れを流してから、十一時前には就寝したのだった ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています