「兆ったで!とうとうやったで!わいは兆ったんや!!!」
苦節38年、とうとう兆への道程は終了した。
最後の童貞が道程を終える時が来た。
お祝いにソープへ行こうと思う。
ここまで、やりたいことを我慢し精進してきた自分へのご褒美だ。
しかし、喜び勇んで高級ソープを貸し切り、好きなだけパコパコしようとしたが、緊張と高齢のせいで一回するのが精一杯であった。
「もっと若いときにパコパコしておくべきやった・・・」
後悔先に勃たず。
セックス自体が呆気ないものすぎて、体を持て余した若い時代に汗だくセックスをやっておくべきものだったと感じた。
取り戻せない時間のことを思うと激しい後悔に苛まれ、好き放題パコパコして子供を育ててた同世代に対しての劣等感に襲われた。
「くそっ、わいは兆ったんや!同世代の誰よりも優れているはずや!パコパコは誰にでもできるけども兆ることは誰にでもはできない偉業や!!!」
イライラして毎日ソープへ通った。
そして、一日一回パコパコを自分に課した。
けれども、風俗でパコパコしたところで子供はできない。
おじいちゃんの自分に若メコが興味を持ってくれるかはわからない。
金をちらつかせて、遺産目当てのメコをつかむのがやっとである。
そんなやつが自分の子供を産んでくれるかはわからない。
今はやりの托卵とかいうやつで別の男の子供を育てさせられるのではないかと思うと、イライラはピークに達し、トレードにも影響が出始めた。
「わいは、今まで何をやってきたんや!!!兆っても人生はなにも変わらないやないか!!!」
酒にも溺れるようになった。
気が付くと資産は兆を切り、同時にアイデンティが崩れ去っていく。
「兆のないわいになんの価値があるんや」
眠れなくなった。
資産はどんどん減っていき、3000億まで減った。
眠れない、トレードに自信が持てない、体が重いといった体調不良に陥り、病院に行くことにした。
「統合失兆症ですね」
「なんや?統合失調症ちゃうんけ?」
「この病気にかかるとあなたは永遠に兆れなくなります。正確には兆ってもすぐ兆から遠ざかり、必ず兆を失うのです。病気が進行すると全資産を失います」
「なんやて?先生、どうしたらわいはまた兆れるんや?」
「この病気は治療ができません。あなたはもう十分稼いだ。いなかに大きな家でも建てて可愛い奥さんでも見つけて静かに暮らしなさい」
失望で自殺するようなことはなかった。
むしろほっとした。
兆のプレッシャーから解放され、もう他人と自分を比べる必要がなくなった気がした。
今では、沖縄に大きな家を建てて、遺産目当て可愛い奥さんを娶り、子供と遊んで暮らしている。
「兆れなければつつましく暮らす。こう教育された」