“とがった学生”を求め始めて、はや5年。東京大学の推薦入試が変わろうとしている。
東大は3月、2021年度入試から推薦入試の要件を変更すると発表した。これまで
1高校から推薦できる人数を男女各1人ずつ、計2人までとしていたのを、計4人
(男女各最多で3人)と拡大。例年、100人の定員に対して合格者は70人前後と
「定員割れ」状態が続き、募集要件の緩和に踏み込んだ。

「推薦で入学する学生は協調性が高く、リーダーシップもとれることが多い。
各学部での評価も高いです。まだ掘り起こせていない、潜在的な学生に出会いたい
と思っています」

 そう話すのは、同大副学長の武田洋幸(ひろゆき)さんだ。枠を広げれば、
一般入試と同じ顔触れが並ぶ可能性もある。だが、各高校へのアンケートや
シミュレーションを経て、4人までなら“らしさ”を残せると確信した。

「入試では多様性が重要だと考えています。今年推薦合格者の内訳を見ても、
女子学生が過去最高の45%。地方出身者は約6割いるため、これまでの推薦の
基準は成功していると感じています」(武田さん)

 東大だけではない。アエラは、全国の全82国立大のAO・推薦入試を調査。
過去5年間で、約6割にあたる49大学がAO・推薦枠を拡大。人数比で14%増
えていることがわかった。

 かつては一般入試しかなかった東大や京都大に加え、大阪大304人、
東北大151人と難関国立大での増加分が際立つ。

 背景にあるのは、文部科学省が進める大学入試改革“三つ目の柱”と言わ
れる「主体性評価」の実現だ。「主体性」という指標がAO・推薦の意義
に沿うこともあり、国立大学協会は15年、AO・推薦などの入学定員に
占める割合を全国立大で21年度までに3割にするという目標を公表。
AO・推薦の募集枠がじわじわと広がり続けている。

 AO入試は、学校長の推薦がなくても出願できる。一方、推薦入試は学校長の推薦が必要で、大学から指定される指定校推薦と、付属校などから進学できる内部推薦、他に全国から出願できる公募推薦もある。ただし公募推薦の中には学校推薦が必要のない自己推薦もあり、これはほぼAOと同意だ。