「中学受験で子どもたちは疲弊している。心療内科に通院する子どももいるぐらいだから」

少年と出会ったのは先月。まだ幼い雰囲気を残す礼儀正しい13歳の少年。
ただ、どこかおびえているような印象を受けました。

少年が中学受験を決めたのは、小学3年生の時。
父親から「いい経験になるよ」と言われ、軽い気持ちで挑戦することにしたといいます。

しかし、なかなか成績は上がりませんでした。

少年はこう話します。

父親は時間を管理して、少年に勉強を強いるようになります。
平日は4時間、休日はその倍の8時間。食事はわずか30分。
リビングで遅くまで親子で勉強する毎日でしたが、会話はどんどん減っていきました。

父親の指導は、さらにエスカレートします。答えを間違えると、どなったり、たたいたり。少年は、父親が採点する時の“ペンの音”にさえおびえるようになったといいます。
「静かなリビングにお父さんのペンの音だけが鳴るんです。シュッ、シュッと2回なると『ああバツだ。怒られる』って怖くなって、体が固まるんです」
父親の怒りは、母親にも向かいました。

深夜、少年がベッドに入ると、父親が「成績があがらないのはお前のせいだ」と、母親をどなる声が聞こえたといいます。

小学5年生のある日、塾のテストで、ずっと苦手だった算数の計算問題がとけました。

「やっとお父さんにほめてもらえる」
そう思い喜び勇んで駆け寄った少年に、父親はこう言い放ったといいます。
「こんな問題、できて当たり前だ。他は間違えているじゃないか」

少年の中で、何かが壊れていきました。
身体がふらついたり、おなかが痛くなったり。
ある朝、学校に行く時間になっても、ベッドから起き上がれなくなりました。
寝室に入ってきた父親に、少年は精いっぱいの勇気を振り絞ってこう告げました。

「お父さん、僕もう無理だよ」
少年は、そのまま不登校になりました。小学5年生の秋でした。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190708/k10011986121000.html