ようやく実現した日帰りの現地調査だったが、年度末が近づき研究室の予算は枯渇寸前だった。
島への航空券代は何とか工面できたが、レンタカーとガソリンの代金は自腹になった。再調査に
訪れた同6〜7日は大学の規定で「休日」扱いとなり、宿泊費も自分で支払った。
 大学から教員に配られる年間約40万円はほぼ全て、研究室の光熱費や通信費、講義資料の
印刷代に消える。西さんらの訴えで、沈没事故の影響調査のためのワーキンググループが学内に
設けられ、大学側から約200万円の補助が出たが、「小さな離島の調査のために船を出したり、
住民への説明会を開いたりで瞬く間になくなり、不足分はやはり各自で工面した」という。

現場に行きたいが
 資金不足が響くのは非常時ばかりではない。同学部の宇野誠一准教授(49)=環境汚染学=は
「日ごろ、学生を環境調査に連れて行くこともできない。現場を踏んでこそ伝えられるノウハウが
あるのに」と嘆く。年に数回、途上国から舞い込む海洋汚染調査の要請にも、「この5年ほど全く
応えられていない」。
 今回、西さんらと油漂着の調査を始めるにあたり、企業などから化学物質の測定を請け負うなど
してためた「虎の子」の30万円のうち20万円を、長らく故障したままだった分析装置の修理費に
充てた。回収した貝や砂に付着した油を迅速に分析するには不可欠だったからだ。宇野さんは
「流行の分野でなければ、実験も調査も思うようにできないのか。真綿で首を絞められるようだ」
とため息をつく。

老朽化で屋根崩落
 「ドーン」。日曜早朝のキャンパスに大きな音が響いた。昨年12月、筑波大(茨城県つくば市)
の二つの建物の2階部分をつなぐ連絡通路で、長さ約18メートル、重さ約25トンの屋根が崩落した。
 東京・霞が関では、翌年度の政府予算案編成が大詰めを迎えていた。崩落からまもなく、文科省
文教施設企画部の長川武司・計画課長補佐は、筑波大から送られた資料を手に財務省に向かい、
施設整備予算の増額を求めた。しかし、財務省の担当者は現場写真に驚きつつもこう答えた。
「古くて困っているのは分かっている。でもお金がない」

https://mainichi.jp/articles/20180412/ddm/016/040/033000c#