『大丈夫だってば。これ折りたたみだから、最初から曲がる仕様だし』
「でもさ。風が吹くたびにそんなんなってたら、差してられないだろ。さっきより雨も強
くなってきてるしさ。濡れるぞ」
 そこで私は気が付いた。傘を差してないのにあまり体が濡れてない。ふと目線を上に向
けると、別府タカシが自分の傘を差しかけてくれていた。
『仕方ないでしょ。これしかないんだから。ていうか、アンタこそ自分が濡れてるんじゃ
ないの? 私なんて気にしなくていいのに』
「ああ。この傘、大きいから大丈夫。安いのだとすぐぶっ壊れるからさ。丈夫なやつ買お
うとしたら、大きいのしかなくて。こういう時はいいけど、雨降ってないときは結構邪魔
なんだよな」
 おどけたような口調で、別府タカシは苦笑する。場の空気を少しでもなごませようとし
たいのだろうか。続けて彼は、私がドキリとするようなことを口にした。
「どうせなら、いっそこのまま駅まで入っていけよ。片手で傘持ちながらスカートも押さ
えて帰るとか、大変だろ」
『へっ!?』


後編に続く
妄想は溢れているけど、なかなか書く時間が取れないというのは同意