「さ、作法だって重要だもん。知ってる? お清めする時の順番。最初に左手洗って、次
に右手洗って、その後は左手に溜めた水で口を清めて、もう一回その手を清めて、最後は
柄杓の柄に水が伝うように立ててから置くんだよ」
『最後のは知らないけどな。でも、他のはあそこに書いてあるし、お前の教えとか別にい
らないから』
「それだけじゃないんだよ。お水はね。最初に汲んだ一回だけで、全部のお清めをやらな
くちゃいけないの。足りなくなったからって継ぎ足しちゃいけないんだよ」
『へえ。そうなんだ。そりゃ、知らなかったな』
「えっへん。すごいでしょ。あとね、あそこのおばさんみたいに直接柄杓に口をつけると
か、論外だから。あんなことするとバチ当たるよ」
『ア、アホ。人を指差すなっての。気付かれたら怒られるだろが。つか、それも無作法だ。
神様関係なく』
「やっぱ、あーいうのってちゃんと注意した方がいいのかなあ? だってみんなが使うも
のだし、汚いよねえ」
『まあ、よくないのは確かだけどな。けど、神前でもめるってのもあんまりしたくねーしな』
「とにかく、私たちもやろっか。左手、右手、口、左手、柄杓の順番だよ。分かった?」
『わかってるよ。何度も言うな。調子乗りが』
「いや。私自身も確認ってゆーか…… ちょっとずつ使わないとすぐなくなっちゃうんだ
よね。んっ……クチュクチュ……ペッ。で、左手洗って……あれ。もう水ほとんどないや。
まあ、気持ちだけ立てて、と。はい。おしまい」
『何だよ。自慢げに言った割には適当だな』
「作法はちゃんと守ったもん。それに、作法を正確に守るのは大事だけど、それ以上に大
事なのは、神様に対する尊敬の念だから、それをちゃんと持っていれば多少失礼があって
も大丈夫だって」
『やっぱ、適当だ』
「ちゃんとした神社のホームページに書いてあったんだもん。だから大丈夫。さ、いこ」
『待った。口元。水、ついてるぞ』


続くのです