不満そうな別府を前に、あたしはちょっと返事に窮する。ダメな理由はちゃんとあるけ
ど、正直に言うのはためらわれた。しかし、他にごまかす理由もないので、仕方なく小さ
く口にする。
『その…… だって、記念にするほどじゃないし……あ、あとからその……見られるのは、
恥ずかしいかなって……』
 口にするのも恥ずかしくて、あたしは手を引っ込めるとうつむいた。しかし、別府はな
だめるように説得に掛かってくる。
「大丈夫だって。椎水だって出来上がったとき写真、撮ったんだろ? アスレチックはス
マホ持込禁止だしさ。こういうので記念にしたいんだよ。あと、絶対人に見せたりしないし」
 そう言われると、別府の気持ちも分からなくないではない。それに、写真に撮りたいっ
ていうほど気に入ってくれることが嬉しくもあったので、あたしは渋々といった体で許可した。
『……絶対、人に見せないでよね。もしやったら、二度と口利かないから』
「分かってるよ。約束するし」
 別府はスマホを構えて写真に収める。全体で1枚とタッパーごとに1枚ずつ。それを撮
り終えてから、スマホを脇に置いて割り箸を取った。
「さて。じゃあ食うぞ。椎水、一番のおすすめは何だ?」
『へ?』
 ちょっとボーッとしていたあたしは急な質問に驚いたが、すぐに気を取り直して箸で差す。
『そ、そうね。やっぱ、卵焼きかな? 苦労したもん。あと、一番美味しく出来たなーっ
て思うのはポテサラ、かも』
「じゃ、まずは卵焼きで。いただいて、いいか?」
『ど、どうぞ。一口目はちゃんと、ゆっくり味わって食べてよね? ガツガツ行かれたら、
せっかく作ったのにもったいないし……』
「了解。じゃ、一口ずつ、よくかんで味わうとするか」
 もちろん何回も練習して、毎朝食べたんだから不味いわけはない。ただ、味付けって人
によって好みが違うから、果たして別府の口に合うかどうか。それが心配であたしは、自
分はお弁当に箸も付けずに緊張して別府が食べるのを見守った。

つづく

>>320
タカシも山田も変態すなあwwwwGJ