『そんなことないでしょ? だって、ここまでの交通費も入場料も払ってもらっちゃって
さ。そっちから誘ったんならともかく、てかあたしが誘ったわけでもなくて、友子達に勝
手にそういう流れにさせられちゃったってだけなのに』
「それでも男からしてみりゃ十分美味しいシチュだってのに、この上手作り弁当まで貰っ
たらバチが当たりそうで……」
『なに言ってんのよ。そんな、別に期待するような大したもんじゃないし、半分は冷凍だっ
たりするし……それにあたし、一人分って上手に出来ないからさ。いつも量多めになっちゃ
うし、全然気にすることないってば』
「ホ、ホントにいいのかよ? そこまでして貰っちゃっても……」
 どうにも煮え切らない態度の別府に、だんだんとあたしは苛立ってきた。さっきからあ
りがたがっているような言葉も、実は迷惑の裏返しということなのだろうか?
『もう!! いるの? いらないの? いらないんだったら別にいいわよ。正直にいらな
いって言えば。別に別府なんかに食べてもらわなくたって、平気なんだから。自分で何か
買ってきて食べればいいじゃない』
「いや。そうじゃないって。てか、いらないわけないし!! もちろん!!」
『なら、素直に最初から喜べばいいじゃない。別にこんなので見返りとか求めてないわよ』
「わ、悪かった。ごめん。是非、食べさせてください。よろしくお願いします」
 あまりにかしこまって頭を下げるので、あたしはついおかしくなって笑みをこぼした。
『しょーがないわね。あっちいこ。テーブル席混んでるからさ。ちゃんと、シートも持っ
てきてんのよ』
 得意げにパン、とトートバッグを軽く叩いて示して見せると、別府は恐縮した顔で頭を下げた。
「いや。正直、ホント感謝してるよ。うん」
『そうそう。大いにありがたがりなさい。崇めよ、称えよ、なんてね』
 ちょっと大仰に冗談を言ってチョロっと舌を出してから、あたしは先に立ってレジャー
シートを広げる場所を探しに歩き出した。


まだまだ続きます