萩尾は、単純に「過去」に触れられたくない、というのではない。
それだけなら、もっと穏便なやり方もあった。
つまり、萩尾の今回のやり方の本質とは、結局のところ「二人に傷つけられ、ずっと苦しめられたから、
その同じ苦しみを二人にも味わわせてやりたい」ということでしかなのではないか。
もしかすると、萩尾にその自覚はないのかも知れない。
しかし、それでは、自分の本当の感情に、あまりに鈍感すぎやしないか。
結局のところ、萩尾望都という「人」は、自分自身の弱さは許せても「他人の弱さは許せない」人なのだ。