さようなら。

人生で初めて泥酔してる人を目の当たりにした、小学3年生。

昔話に出てくる妖怪みたいでとにかく恐ろしく、
訳の分からない言葉を叫ぶ。
お酒が抜けると一転して優しくなり「おい、坊主1局教えてやろう」と、教えていただきました。

あれから23年。ひたすら叱られ続けた23年。そして、心配ばかりかけた23年。

入段してから五段になるまで、ほとんどの碁を棋譜で郵送して見ていただのですが、
その中で褒められた事は2回ぐらいでしょうか。

研究会や合宿でも、特に厳しく叱られました。飛行機の中、あるいは競馬場にも棋譜を持って行き

「まだそんな事も分からないのか!おれは、パドック(馬の下見所)行ってくるから、その間にしっかり考えろ!」

だいたいこんな感じです。先生から最も教えを受けた棋士は、おそらく僕でしょうね。

その割には、なかなか結果を出す事が出来なかったのですが、5年前、第60期本因坊戦で思いもよらず挑戦者に。
まだほとんど実績の無かった僕は”七番勝負で1勝も出来ないんじゃないか・・”
と不安で一杯でしたが、先生は「大丈夫だ、きっと勝つよ。心配しなくていい」

結果は、4勝1敗で初めてのビックタイトル。
勝ったあと、真っ先に先生へ報告。ようやく、褒めていただけるかと・・・
「なに勝ち碁をグズグズしてんだ。ずいぶんハラハラしたぞ!」と、やはり怒られましたが・・・

最後まで心配ばかりかけてました。
先日の十段戦で負けた直後、ばつの悪い顔でお見舞いへ。
先生は、ただただにっこり笑っていました。

怖くて、厳しくて、時に優しくて、見てないようで、いつも見守っていただいた先生。

素晴らしい師匠、藤沢秀行先生に出会えて本当に幸せでした。

23年間、ありがとうございました。

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