「走り出してから考える」というイーロン・マスクの非常識
失敗繰り返しながら前進する手法は、テスラを率いるイーロン・マスク氏の持ち味でもある。

氏が経営する宇宙開発企業のスペースXに関しては一時期、同社のロケットが自動着陸に失敗する映像が繰り返し報道されていた。一方、そのたびに同社は修正を加え、着々と技術力を高めた。失敗と批判を恐れない姿勢を強みとし、いまでは民間宇宙企業として一定の評価を築き上げている。

しかし問題は、失敗が即座に人命に関わるクルマ市場という戦場で、同じ手法が通用するかどうかだ。5人死傷した中国での事故がもしも車両不具合によるものであれば、「次はきっと成功する」といった弁明は通用しないだろう。

こうした安全性の問題を筆頭として、24ブランド中19位に甘んじている信頼度スコアや需要減退への対処など、課題は山積している。

幾度となく危うさが指摘されてきたテスラの経営は、ここへ来て大きな曲がり角に差し掛かったといえよう。マスク氏お得意の「まずは走らせてから問題に対応する」という見切り発車の手法が、大きなしわ寄せを生んでいる形だ。「走り出してから考える」で突進してきたテスラだが、ブレーキの利かなくなった暴走車両は、テスラの未来に警告を与えているかのようだ。