先ほど確認した通り、租税は政府(統合政府)にとって資金調達手段ではなく、通貨を流通させるための措置に過ぎません。
だとすると、国債とは何なのでしょうか。何のために存在するのでしょうか。
端的に言えば、国債というのはほとんど時代の遺物でしかありません。国債は、通貨発行が金属貨幣で行われたり、金本位制などを通じて、金属資源に制約されていた時に、通貨の追加発行をせずに財政支出を行うため、事実上の苦肉の策として機能していたと言えます。
現在は通貨発行にそのような自縄自縛の制約はありませんから、本来は全く存在する必然性はありません。(少なくとも、資金調達手段として存在する必要性はありません) 

そうした中で国債は、短期金利操作の手段として(のみ)利用されています。
短期金利操作はそもそもどのように行われているのかということを整理しましょう。
まず中央銀行が誘導する政策金利を決めます……例えば2%としましょう。短期金利はコールレートともいって、コール市場、つまり金融機関の間でベースマネーを融通する市場の金利のことです。その金利を2%に誘導する方法、即ち銀行が2%以下でコール市場への資金融通を行わなくなるようにする方法は、端的に言えば、銀行に2%の有利子資産を適宜供給するというものになります。要するに、中央銀行は利回り2%の短期国債を売り出すことによって、コール市場金利が2%を下回らないようにしています。これは逆も然りで、中央銀行は短期国債利回りが2%より高くならないように買いオペすることで、ベースマネーが国債市場に逃げてコールレートが上昇してしまうのを防いでいます。
まとめれば、中央銀行は、短期国債利回り、すなわち短期国債価格の操作による裁定取引を通じてコールレートをコントロールしている、と整理できます。 (参考:『ビル・ミッチェル「準備預金の積み上げはインフレ促進的ではない」(2009年12月14日)』、『ビル・ミッチェル「中央銀行のオペレーションを理解する」(2010年4月27日)』)(推奨拙note:『中央銀行の存在意義と機能限界』)
このメカニズムが頭に入っていれば、ある日突然国債が暴落するというストーリーが全く可笑しいということがすぐさま分かるでしょう。