添削してみた

「おはよう」
 俺はAに声をかけた。見ればテーブルの上に朝食が並んでいる。
「うわ、すげーうまそう」
 特に卵焼きの黄色が目をひいた。おいしそうな焼き色をみせて白い皿の上で湯気を立てている。甘い香ばしい匂いが鼻をくすぐった。
「今日は、どこか行くのか? 」
 俺はイスに座りながらたずねた。
「そうだよね。これからどうしようか」
 金色の卵焼きをつくってくれたAは、やさしい笑顔のまま首をかしげている。
「いただきます」
 俺はハシを卵焼きへと伸ばした。柔らかいのに弾力のある感触が箸を通して伝わってくる。醤油を少したらすと、そのまま口に含んだ。
「熱っ」
 できたての熱々だった。舌の上で卵のまろやかさ、そしてダシを含んだ優しい味が広がる。
「どう? あんまり卵焼きとか得意じゃないんだけど」
 Aがはにかんだような表情を浮かべた。
「でもBは卵焼き好きだったよね」
 Aは急須を手にすると湯のみへお茶を注いだ。
「覚えていてくれたんだ」
 俺は驚いて顔をあげた。Aから差しだされた白い陶製の湯のみ。爽やかな緑色の日本茶で満たされ甘く涼しい香りが芳しい。
「もちろんだよ」
 Aが白い花のように笑う。俺はその言葉を耳にして少し頬を赤らめた。もうじゅうぶんだと思った。どうして顔が赤くなってしまうのか自分でもうまく説明できなかった。