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【北斗の拳】南斗のエヴァンゲリオン【北斗サーガ】
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0924マロン名無しさん
垢版 |
2021/12/30(木) 03:58:56.83ID:???
「北斗の拳 オウガイ伝」

南斗鳳凰拳は北斗神拳と同じ一子相伝の拳法であり、
伝承者は新しい伝承者に倒されていくことで、次代に拳を伝承していくという掟が存在する。

実力より実態、そんな世界で、承継の手続きを省き、生命を賭した伝承が行われるのも、
それが阻止されるのも、珍な事ではない。
元より、伝承を賭けた戦いは、生氏を撲っ賭けた戦い。

サウザーが満15歳の誕生日を迎え、彼の人生の分岐点となる運命の日の一つを生き抜く、
その約2週間前にサウザーは姉弟子を喪っていた。

姉弟子のミズキは夜更けの修練場で瞑想中のオウガイを強襲、
一般枠の門弟らはミズキに騙され人払い中であり、この挙を止められるのは、
狙われたオウガイ本人しか居なかった。

オウガイに接敵したミズキはまさかの指穿―――1秒間に20発の指穿――で、
早くも勝負を決したかに見えたが、オウガイは咄嗟にミズキの咽喉を手刀で薙ぎ、
否、薙ごうとした手刀はミズキの神速の踏み込みのよって間合いを外され、
その手はミズキの下あごに接触した。
0925マロン名無しさん
垢版 |
2021/12/30(木) 04:00:26.77ID:59jrbojT
間合いが外され鈍らになったとはいえ、オウガイの手刀。
ミズキは下あごの感覚が瞬間、「墓地を航空写真で見たかのような感触」としか言い難い、
独特なものに占められる。
彼女は終ぞ、下あごへの打撃を他の言い回しで表現する事なく、その生涯を終える事になる。

ミズキの体の右側を擦り抜けて行くオウガイ。
本来であればミズキの首の左側をその手刀は薙ぎ、更に逆の手がミズキの右腕を飛ばし、
オウガイがミズキの背面の向こうへと駆け抜ける筈だった。
不完全な十字型の瞬き。

ミズキが指穿を打つ指先が、空中で描く放物線、その頂点の連峰を縫うように、
オウガイが駆け抜ける。
南斗108派の内の29派を傘下に持つ南斗鳳凰拳、
その下位流派の一つをオウガイが想起する。他流の拳を仕入れたか、ミズキ。見事。
しかし、しかしなのだ。再び相対する師弟。

南斗獄屠拳!!
両者の相対速度は、比喩でなく鳥類の最高速度に比肩する。勝負は一刹那で付いた。
腕と脚が両方とも離断し、修練場の硬く平坦な床面に突っ伏すミズキ。
0926マロン名無しさん
垢版 |
2021/12/30(木) 04:01:05.61ID:59jrbojT
伝承者争いに敗れた者の末路。ましてや、ミズキは……若く美しい女なのだ。
四肢はもう無いが。
倒れたミズキをオウガイの脚(ルビ:きゃく)が蹴り抜ける。

割れ物でしかないからという理由で電灯も扇風機も、天井板も何も付いてない、
修練場の天井へ、ミズキを形成していた物たちが飛沫となって、付着した。
汚い飛翔だった。
星々が瞬き、山の向こうの都市の電気の光が紫紺の空を夜通し照らし、
欠けた月が薄い雲を受け流す、そんな蒼天へと還る事なく、今、
破れた糞袋と4本の医療ごみを遺して、地上を去った女弟子にオウガイはしかし、
落涙せず、また一つ、この腐敗した世界と戦う理由が増えた。

実のところ、ミズキはオウガイの秘孔を突く事に成功していた。

側副血行路(血管が詰まったことで自然形成される、血管の迂回路)。
次にオウガイの肉体が侵襲を受けたら、その箇所を中心に急激な、
側副血行路の形成が起きる。その反動で仮氏状態に陥る。

ミズキが実力的にも心情的にもオウガイを切れないのは、誰の目にも明らかだ。
だから、本来は氣を練る為の修行法であり、
蘇生に失敗したり修行中の事故で亡くなる例が多く、禁じ手となった、
他派に伝わる秘孔術を、ミズキは目的外で用いた。
0927マロン名無しさん
垢版 |
2021/12/30(木) 04:02:44.01ID:59jrbojT
あとはオウガイが秒速20回ペースの指穿に適応する前に、
オウガイの前腕でも膝でもどこでも、手刀か脚で浅く切り付ければ、それで良かったのだ。

仮氏状態のオウガイを引き続き指穿で攻撃、数十か所を穿孔、滅多刺しにして頃す。
その後に、没後のオウガイを南斗鳳凰拳で大きく切断し、オウガイを斬る。

これがミズキの目論見だった。それは途中まで成功していた。
何故って、オウガイは秘孔を極(き)められた事に全く気付かず、
本来はとてもハイ・リスクである筈の選択をして、一刹那でミズキを撃破したのだから。

前進する拳の宿命か。
或いは、これが光翼を纏い、荒野に降り立つ南斗の拳の命題なのか………。

それから月日が流れ、崩落する聖帝十字陵から降り注ぐ瓦礫の中、
トキにより蘇生が成功したオウガイは亡き弟子を抱きかかえ、
唯一の脱出ルートである上方へと、瓦礫を脚(ルビ:きゃく)で砕き、飛翔していた。

傍らで「遅かったか…!」と呟き、忸怩たる想いに暮れ、オウガイの拓いた血路を上昇するトキ。
光の差す方へ跳び続けるトキがオウガイに遅れて到達した、雨上がりの夕刻の空は、
ダージリンの紅茶のように紅(ルビ:あか)かった。
空が紫紺の蒼天に変わるのを待たず、オウガイは亡き弟子を横たえ、トキと共に、何処へかと去った。

(了)
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