日々のアルコールが祟って大掛かりな手術をし記憶を失ってしまった男
自分の名前も、大好きだったハイボールも全て忘れてしまった
そんな彼も今日で退院だ、やっとこの無味乾燥な場所から抜け出せる
男は無意識のうちに歩を進める、知らない、見たことない、そんな街の中をただひたすらに
実際男はただ足に任せていただけだった
そんな中、ふと足が歩みを止めた
随分と年季の入った居酒屋の前だ
男は見たことも無いはずのその店に何故か懐かしさを覚えた
店の奥からは野太い声が聞こえる、男はその声に誘われるかのように入店した
男は席につき「店長、ハイボール出来るだけ濃いめ」と口走っていた、男は自分の口から出た言葉
に驚いていた
そんな男を他所に大将は待ってましたと言わんばかりに何も言わずに厨房に戻って行った
数分の後運ばれてきたのは、ほんとに割ったのか?と思うほどの色をしたハイボールだった
男はそれを豪快に飲み干した
カラカラカラカラ………
おいしい…かも…
男は全てを思い出した、自分が誰なのかを、このハイボールの味を