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トヨタが期待するNTTならではの強みとは

 もっとも大きな疑問は「なぜNTTと資本提携するのか」だと思います。

 トヨタは「スマートシティを作るにあたりNTTの技術に期待している」ようです。当然ながら「KDDIじゃだめなのか?」ということになります。同じような通信技術を持っていますから。

 実際、同じくらいの技術力だと考えていいでしょう。けれど決定的な違いもあります。

 KDDIは純粋な民間企業で、政治力という点で弱く、かたやNTTは日本電信電話公社という国策企業からスタートしています。
社会インフラや政治力という点で圧倒的な強さを持ち、実際、日本中に張り巡らされている電話線はNTTが管理しています。

 トヨタがスマートシティで実現したいのは、既存の街に張り巡らされているようなインフラ。KDDIも技術を持っている電波じゃなく、電線を使ったシステムだって必要になってきます。

 そういったときのためのノウハウは圧倒的にNTTなのでしょう。そしてスマートシティを他の地域で作ろうとするときも、NTTの政治力などが重要になってくると思います。

 ふたつ目の狙いは、自動車業界だと普通におこなわれているコストを含む技術競争です。一般的な「見積もり」や「入札」は価格が優先されます。ただし、技術的に横並びだということが前提です。

 けれど自動車業界は、価格と同じくらい技術も重要。価格と性能で総合評価する、といった見極めを日常的におこなっています。

 ここまで読んで「ウチの業界も同じ」と思うかもしれません。確かにほかの業界だって価格と性能の総合評価はおこなっているでしょう。
けれど、金額の規模と、決定時における忖度の低さ、そして決定作業の頻度という点で圧倒的に違います。

 この3つが揃っている業界を私は知りません。

 トヨタがKDDIとNTTに望むのは、安くて素晴らしい技術の競争だと考えます。両社とも、業績に直結するため、持ち味を存分に出してくれるのではないでしょうか。