ツール・ド・北海道事故 「危険な区間、何がなんでも車両規制すべきだった」 大会運営側に批判の声
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8日に自転車ロードレース「ツール・ド・北海道2023」で発生した選手と乗用車の衝突事故は、長い距離のロードレースの全行程で安全を確保することの難しさを浮き彫りにした。
「安全対策は事前から準備を進め適正だった。本件については重く受け止めている」。9日、北海道新聞の取材に応じたツール・ド・北海道協会の大竹雄二企画部長はこう話した。
大会は選手約100人が3日間で4市17町を駆け抜けるレースで、走行距離は計532キロ。規模が大きく「生活に困る地元住民もいる」と、全区間通行止めにはせず、片側1車線通行を原則としてきた。このため、大会本部は競技要項や大会前日の監督会議を通じて、車線をはみ出さないよう周知してきたという。さらに今回の事故現場を含め、走行に注意が必要な区間は主催者側が自主的に対向車線も通行規制するなど、対策を念入りにしていたとする。
だが、競技関係者は運営側の不備を指摘する。元自転車プロロードレーサーで2019年のツール・ド・北海道で同じコースを走行した札幌市内の小橋勇利さん(28)は、今回の事故について「大会運営側に問題があった」と話す。事故現場はカーブに差し掛かる下り坂で、「スピードが出て見通しも悪い。(万一対向車が来れば)非常に危険な区間というのは、誰もが分かっていたはずだ」と指摘。事故を防ぐために、「運営側はその区間に何がなんでも一般車両を入れないように規制すべきではなかったか」と話した。
9日に亡くなった五十嵐洸太さん(21)は、対向車線にはみ出して乗用車と衝突したとみられている。
今大会に出場した選手の一人は、片側1車線通行が原則のコースは「やりにくさがある」と話す。下り坂で速度を保つためには道路幅を「広く使いたくなるもの」だからという。
国内のロードレース大会はツール・ド・北海道のように、スタートとゴールが別の場所にある「ラインレース」は少なく、同じコースを何度も巡る「周回レース」が大半。周回レースはラインレースよりも規制区間が狭いため、通行止めを行いやすい。ロードレースの本場、欧州では大会の多くで全面通行止めを実施しているという。(高津戸璃歩、成川謙、花城潤)