ある自転車の組織の主催で有名な人の講演会が開かれた時、質疑応答でこういう質問が出ました。

「小系のリムは箱根などの下りでものすごく熱くなり、触れないくらいになるのですが、
ブレーキを専用の冷却効率のよいものを開発する計画はないのですか?」

その有名な人の回答は、
「小系のホイールは速く回転している、より速くリムは空気で冷却されているので、まったく問題はない。
もしリムが熱くなるというのなら、それは700Cでもまったく同じだ。ハイ、次の人。」
これは科学的におかしい。
リムサイドに印をつけ、観察すれば、同じブレーキング・スポットは、リムの周長の短い
小系では、より頻繁にブレーキシューのところへ戻ってきます。つまり冷えるヒマがない。
また速く回転しているのはハブのほうで、リムの回転速度は700Cであろうが16インチだろうが
時速60kmの時の地面に対する「対地速度は同じ」です。

私は質疑応答の後、このことを誇張したケンブリッジ英語のアクセントで説明し、ケンブリッジ大学の有名な哲学者
バートランド・ラッセルの口癖「貴方は本当にそう考えているんですか?信じられない。」と言ったのでした。
その人は一瞬ギョッとした表情を見せ、二ヤッと笑うと、
「Well done!よくわかったな。」
そう言って私の肩を叩いて歩き去ったのでした。質問者の着眼点は正しかった。

また、「同じブレーキング・スポットがより頻繁に同じところに戻って来る」のと同じ理論で、上で引っ張られて下で圧縮
されることが単位距離あたりより多く繰り返されるので、小系ではスポークの寿命も短い。