>>82
単に希美はみぞれに対して常にイニシアチブを取る立場でいたかっただけ
希美は進路の件でみぞれの方が自分より音楽の才能があると自覚して
張り合うのはやめた。自分がリズでみぞれが青い鳥だと認めた
しかしそれでも自分の思い描くようにみぞれが音楽学校に向かうよう導こうとした

そしたらあの演奏でその傲慢を粉砕された
自分の思惑だのなんだのみみっちい作為策謀とは無関係に、
みぞれはその才能で進むべき道に行ける人間だと認めざるを得なかった
それであの「みぞれのオーボエが好き」のセリフに繋がる

あれは希美にとって挫折であると同時にコンプレックスからの解放であり、
みぞれを自分の支配から解放するということでもあり、
本当の意味でみぞれと対等になるということでもあった
そして同時に、みぞれが自分望むものを与えてくれるのかを試した
つまりみぞれからも「希美のフルートが好き」といってもらえるのかどうかを試した

答えはNO。みぞれにとって希美のフルートは無価値だった
だが希美にとってもみぞれが列挙した自分の好きな部分というのは無価値だった
つまりふたりの互いに対する執着心と好意は全くズレていて、全くずじ違い、噛み合ってない

それがわかったから希美は笑った。あれは自嘲に近い
自分のこれまでの執着がみぞれにとってまるで意味のないものだったこと、またみぞれの
自分への執着が希美にとってはまるで価値の無いものだったことを悟った。だから笑った
それで「ありがとう、ありがとう、ありがとう」になる。その意味は「もういい。ノーサンキュー」でしかない