『リズと青い鳥』山田尚子×武田綾乃 対談
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山田 原作者である武田さんの前で言って違ったら怖いんですけど……

映画のラストで希美がみぞれに伝えた感情は、本当は彼女が一番言いたくなかったことなのかなと、今でも思っています。


山田 自分自身の置かれた状況やのぞみとの関係性など、いろいろなものを認めてしまわないとあの言葉は言えないんだけど、
でも言わざるをえない。その決断を導き出せるかが、この映画の難しいところでした。

たぶん、観てくださった人が100人いたら、全員が異なる感想を抱くような映画になったのではないでしょうか。

??たしかに繰り返し観ることで、1回目とは違う感想になりそうですね。

山田 ただ、私自身ハッピーエンドは大事だと思っているので、そこは意識したつもりです。一方で、
「もしかしたらそうじゃないかも?」という雰囲気を漂わせることも、この作品には必要だったんです。

ハッピーエンドのような観え方を残しつつ、どこかにいびつさを感じさせる??そのためのカット割りには相当気を使いました。


??武田先生としては、映画を観てハッピーエンドだと思いましたか?

武田 穏やかできれいでまとまっているんですけど、薄皮一枚剥がしたらじりじりしているというか……そんな絶妙さを感じました(笑)。

山田 そう言っていただけるとうれしいです。私自身は2人に「添い遂げてほしい」派なんですよ。

だけど原作を読んでいると、つくり手としての自分が2人の関係性をいじってしまうことが一番不幸なことだと思ったんです。

小説で描かれていたことを自分の解釈でねじまげないことが、監督である私の責任だと思いました。