宇多丸、『君の名は。』を語る!
https://www.tbsradio.jp/79324


お互いの情報をやり取りするうちに3年差があれば、「あれっ?」って当然出てくるでしょう?
「えっ、SMAP解散すんの!?」みたいな(笑)。で、それについてはそれぞれ記憶をすぐ忘れちゃう。
記憶が曖昧になりがちっていう、まあタイムパラドックス的な説明が一応つけられなくもない
(フォロー的な設定があることにはある)。
要は、2人が接触して事態が解決に近づくたびにこの絆の存在の安定性も揺らぐ(ので記憶も曖昧になる)
っていうタイムパラドックス的な説明ができなくもない。でもやっぱり苦しいは苦しい設定。
「忘れちゃう」っていうことで、なんとなく濁されている感はどうしても否めないし。

第一、瀧くんの方が事後にヒロイン三葉の行方を追っていって、事態を後から「ええっ?」とか知るんだけど。
3年前にそんな大きな災害があったその場所のことを忘れているって。
瀧くんだけじゃないですよね。みんな、友達とああやって行って近づいていって。
「でもお前、ここってさ……」って周りも全員気づかないのはおかしい。
しかも、ピンポイントであの町が災害にあっているんだから、名前を覚えているでしょう?とかね。

あと、ネットを介したやり取りはできているのに、「じゃあ電話して話そう」とか、「直接会おう」とか、
具体的な解決に向けて力を合わせようっていう方向に話が全然行かないのも
非常に不自然だなという風に思ったりしました。

で、その全てを包括的に説明するために、全部が……特にあのヒロイン三葉の血統、血筋っていうのを中心に
運命づけられたこと的な暗示もされてはいるんだけど、それこそがザ・セカイ系的な、
全てが都合よく主人公たちの物語、センチメンタリズムに奉仕するためだけに存在するような
いびつさそのものであって、正直、「えっ、それでいいのか?」っていう感じはやっぱり僕はしてしまいます。