一和の戦争の動機は、突き詰めれば「人事に対する不満」で、これは大義じゃない。
大義のない戦争は必ず負ける。だから一和は負けたんだ。
一度盃を受けたからには、借金まみれになろうが、抗争でグダグダにされようが、歯食いしばって生きていく。
恐らく今のヤクザで経済状況のいい組はほんの一握りで、ほとんどの組は苦しいはずだ。
けど、極道には極道の筋、掟ってもんがあるから皆、歯食いしばって頑張ってるんだ。
極道の世界じゃ、いったん親子の盃を受けたからには、その親分に一生忠誠を尽くすというのが最低限の掟だ。
ヤクザは政治家みたいに親分をコロコロ変えられないんだよ。
さらに言えば、いったん盃を飲んで懐深く納めたからには、盃を取る相手が、昨日の敵であろうと、一生忠誠を尽くさなきゃいけないんだ。

後藤忠政著 憚りながら より